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Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
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「火宅の人」

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「華麗なるダメ男たち 〜色男、金と力はなかりけり〜」

「火宅の人」1986年 東映 監督:深作欣二

作家・桂一雄(緒形拳)は、最初の妻に死なれ、後妻・ヨリ子(いしだあゆみ)と再婚。ヨリ子は一郎(利根川龍二)、次郎、弥太、フミ子、サト子と5人の子どもを育ててきた。昭和31年夏、一雄は、同じ九州出身の新劇女優・矢島恵子(原田美枝子)と事をおこしてしまう。それより前、次郎が日本脳炎にかかって言葉も手足も麻痺してしまい、ヨリ子は怪しげな宗教にすがるようになり、あげくの果ては家を出ていってしまう。
 
原作は大昔に読みました。5年前に沢木耕太郎の「檀」を読みました。そして今回、映画です。
それぞれ、もうちょっと間隔を空けずに読んだり見たりしておけば、もっと楽しめたろうに。ま、それは仕方がない。

「火宅:燃え盛る家のように危うさと苦悩に包まれつつも、少しも気づかずに遊びにのめりこんでいる状態を指す。」
・・・良い言葉だな、これ。
しかし、檀一雄は手足が麻痺した次男を始め幼い子がありながら、よくぞここまで徹底しました。これには一種の憧憬の念を禁じえない。
羨ましいというよりも、何もそこまでしなくても。というか、本能のままに生きる事を少し我慢した方が余程、楽だと思いますでしょ、普通。

本人としては、解っちゃいるけど止められないんでしょうね。また、それを浮気小説にしてしまうんだから、自分の置かれている、そのような状況を楽しんでいるようにも思えます。
「恵さんと事を起こしましたから」という言い回しが良いですね。

映画の方は、これはキャストがとても良い。
緒形拳の桂一雄はともかく、三女優が光りますね。

若い新劇女優の原田美枝子。桂との喧嘩のシーン・・・、
喧嘩のシーンと言えば、中原中也(真田裕之:ちゃんと例の帽子を被って登場)と太宰治(岡田裕介)とで居酒屋で口論からの喧嘩場面や桂が運転手にボコられる場面に監督が深作欣二である事を思い出させます。

松坂恵子。この人は臭い演技があってこそのオーラが輝きますね。
大柄で迫力もあるし、旅の道連れで結局、華僑に嫁ぐため桂と別れる葉子に合ってます。
ジーンズの太腿にエロさを感じます。

本妻のいしだあゆみの細さ、薄幸さは、肉感的な原田美枝子や松坂恵子とまったくタイプが違うので、一層哀れに感じます。
それでも、嵐の夜に、一生次郎と子供たちのために生きる覚悟を決めたと家に戻り、雷に怯える幼子を庇う。超スピードで桂の口舌筆記をする。と言った本妻としての強さ。気丈さに女のたくましさが見えます。

檀一雄の火宅は、これでも決して妻子を愛していないわけでないという所が恐れ入ります。

女優と言えばもう一人、忘れちゃならない。
冒頭の回想シーンで神経衰弱の夫と子供たちを捨て、駆け落ちする桂の母親、檀ふみ。
映画の中での実際のふみちゃん(檀ふみじゃなくて子役さんね。ややこしい)はチチに庭に向かっておしっこさせてもらっていましたが・・・

もう一度、原作を読んでみたくなりました。

神保町シアター

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