「加藤彰 たゆたう愛」
「OL日記 牝猫の情事」1972年 日活 監督:加藤彰
丸菱商事営業部のO・L桐野しのぶは、上役の織部の紹介で見合いをさせられた後、欠勤がつづいた。織部はしのぶのマンションを訪れ、しのぶは心よく織部を部屋に入れたが、意外なことを告白した。小さい頃、心臓を患っていて二十歳までもつまい、と言われた体なのである。そして、毒入り紅茶で織部と無理心中しようとするが・・・
日活ロマンポルノ初期作品で中川梨絵の狂気の演技に尽きるのは間違いない。
狂乱の本領発揮は、アパートに上司綾部次長さんが訪れてからという事になるのも間違いない。
突然泣きだす臭い演技、南京錠の鍵を高層アパートの窓から放り投げる、私を抱いてと足元にすがりつく、毒入り紅茶で心中を図る、紅茶を水槽に入れて微笑む・・・
ただ、このどうかしている狂乱ぶりの兆候が見合いのデート場面からチラチラと窺える処がとても好き。
クールな感じでの楠見とのデート中、少年の自転車を借りて乗る。この自転車がまた、少年が乗るには当時でも大層オシャレな感じなんです。手放し運転などで運動神経の良いところを見せつける。「高校の時、一通りの事はやりましたは」と平然と言ってのけています。心臓病と整合しませんがこの際良いでしょう。自分のマンションから飛び降り自殺を偶然目撃してしまう。少しは動揺を見せるが「地面まで何秒くらいかしら」なんて言って平然。
そして、その狂乱ぶりに翻弄されていくのが超真面目な上司である綾部次長。
この山田克朗がとても良いのです。設定はいいたって真面目で会社でも家庭でも良い人で、勿論、若くて美貌の部下からの上げ膳にも食い付きません。もっとも、あの中川絵梨の狂乱では誰でもドン引きしますか。
エロっぽい妻(絵沢萌子)との情事も子作りを要求され、なんだか味気ないなと思いつつ励んでおります。女房の方はなんでもかんでも快楽を貪ってる感じの虚無感。
このあたりの描写が後半の悪夢とも幻想とも付かないシュールな展開に効いてくるのも良いですね。
幻想妄想シーンではしのぶの母親(葵三津子)との面会での淫らなシーンが秀逸でした。
葵三津子さんは脇で良い活躍をされています。今まで印象は薄かったのですがなかなかの美人です。
ついには真面目男綾部次長もしのぶの手に落ち快楽の世界へ、ついに上げ膳食っちゃうわけですけど、あれは、若いOLの魅力に屈するというよりも、鍵が発見されて解放される事が自明となる安堵感から、ついでにやっちゃえって感じですよね。解る解る・・・
見合いの席に立ち合う夫婦。着物姿の絵沢萌子さんはほとんど後姿なのですが、なんだか絵沢萌子と解っていても、ちょっと顔の雰囲気が違うように見えました。初期作品ならではでしょうか。
さらに言えば、後にロマンポルノの女神ともで言われる宮下順子様。この頃は心なしか顔付きがシャープで冷たいイメージ。
中川梨絵と対象的な日陰の女を好演。
しのぶの見合い相手、楠見の愛人として私鉄沿線の安アパート住まい。
情事の最中、駅からのアナウンスや特急電車のチャイム音、通貨電車の光が差し込んでくるロケーションで情感を高める手法。ロマンポルノの醍醐味ですかね。
そして、宮下順子、絵沢萌子の腋毛の翳りが堪能できるのも時代を感じさせます。
最後に、加藤彰監督ってよほど浅川マキがお気に入りだったようで、本作で流れるのは「こんな風に過ぎて行くのなら」「さかみち」
これは使い方の妙味も去る事ながら、浅川マキの楽曲自体の魅力が際立ち、とっても良いです。
加藤彰作品ではありませんが前作「OL日記 牝猫の匂い」もロマンポルノ初期作品探訪として見ておきたいところ。
ラピュタ阿佐ヶ谷
「OL日記 牝猫の情事」1972年 日活 監督:加藤彰
丸菱商事営業部のO・L桐野しのぶは、上役の織部の紹介で見合いをさせられた後、欠勤がつづいた。織部はしのぶのマンションを訪れ、しのぶは心よく織部を部屋に入れたが、意外なことを告白した。小さい頃、心臓を患っていて二十歳までもつまい、と言われた体なのである。そして、毒入り紅茶で織部と無理心中しようとするが・・・
日活ロマンポルノ初期作品で中川梨絵の狂気の演技に尽きるのは間違いない。
狂乱の本領発揮は、アパートに上司綾部次長さんが訪れてからという事になるのも間違いない。
突然泣きだす臭い演技、南京錠の鍵を高層アパートの窓から放り投げる、私を抱いてと足元にすがりつく、毒入り紅茶で心中を図る、紅茶を水槽に入れて微笑む・・・
ただ、このどうかしている狂乱ぶりの兆候が見合いのデート場面からチラチラと窺える処がとても好き。
クールな感じでの楠見とのデート中、少年の自転車を借りて乗る。この自転車がまた、少年が乗るには当時でも大層オシャレな感じなんです。手放し運転などで運動神経の良いところを見せつける。「高校の時、一通りの事はやりましたは」と平然と言ってのけています。心臓病と整合しませんがこの際良いでしょう。自分のマンションから飛び降り自殺を偶然目撃してしまう。少しは動揺を見せるが「地面まで何秒くらいかしら」なんて言って平然。
そして、その狂乱ぶりに翻弄されていくのが超真面目な上司である綾部次長。
この山田克朗がとても良いのです。設定はいいたって真面目で会社でも家庭でも良い人で、勿論、若くて美貌の部下からの上げ膳にも食い付きません。もっとも、あの中川絵梨の狂乱では誰でもドン引きしますか。
エロっぽい妻(絵沢萌子)との情事も子作りを要求され、なんだか味気ないなと思いつつ励んでおります。女房の方はなんでもかんでも快楽を貪ってる感じの虚無感。
このあたりの描写が後半の悪夢とも幻想とも付かないシュールな展開に効いてくるのも良いですね。
幻想妄想シーンではしのぶの母親(葵三津子)との面会での淫らなシーンが秀逸でした。
葵三津子さんは脇で良い活躍をされています。今まで印象は薄かったのですがなかなかの美人です。
ついには真面目男綾部次長もしのぶの手に落ち快楽の世界へ、ついに上げ膳食っちゃうわけですけど、あれは、若いOLの魅力に屈するというよりも、鍵が発見されて解放される事が自明となる安堵感から、ついでにやっちゃえって感じですよね。解る解る・・・
見合いの席に立ち合う夫婦。着物姿の絵沢萌子さんはほとんど後姿なのですが、なんだか絵沢萌子と解っていても、ちょっと顔の雰囲気が違うように見えました。初期作品ならではでしょうか。
さらに言えば、後にロマンポルノの女神ともで言われる宮下順子様。この頃は心なしか顔付きがシャープで冷たいイメージ。
中川梨絵と対象的な日陰の女を好演。
しのぶの見合い相手、楠見の愛人として私鉄沿線の安アパート住まい。
情事の最中、駅からのアナウンスや特急電車のチャイム音、通貨電車の光が差し込んでくるロケーションで情感を高める手法。ロマンポルノの醍醐味ですかね。
そして、宮下順子、絵沢萌子の腋毛の翳りが堪能できるのも時代を感じさせます。
最後に、加藤彰監督ってよほど浅川マキがお気に入りだったようで、本作で流れるのは「こんな風に過ぎて行くのなら」「さかみち」
これは使い方の妙味も去る事ながら、浅川マキの楽曲自体の魅力が際立ち、とっても良いです。
加藤彰作品ではありませんが前作「OL日記 牝猫の匂い」もロマンポルノ初期作品探訪として見ておきたいところ。
ラピュタ阿佐ヶ谷