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Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
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「すべてが狂ってる」

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「日活青春グラフィティ 泣いて、笑って、突っ走れ!」

「すべてが狂ってる」1960年 日活 監督:鈴木清順

不良グループとたむろし、荒れた生活をおくるナイーブな高校生男子が、破滅に向ってまっすぐに突き進んでいく──。ファンキーなジャズ、躍動的な手持ちカメラ、無秩序なストーリー展開。ヌーベルバーグ・ブームの中、鈴木清順が放った異色の青春映画。

鈴木清順の異色青春映画ということで期待したが(どんなもの期待したんだ)これはかなりまともに撮られたヌーベルバーグ風日本青春映画。
編集、カット割りのカッコ良さはそこそこに味わえましたけど・・・。

川地民男の杉田次郎は高校生でコールマン・ホーキンスのポスターを欲しがるという渋い趣味を持っている(ジャズ全盛の当時としては平凡だったのかもしれないけど)ものの、爪を噛む癖にみるようにどうにも考えが甘ちゃんで脱落暴走する姿に今ひとつ共感はできない。
母一人子一人で母親は南原(芦田伸介)という男の世話を受けていた。この南原が父親を死に追いやった戦争の軍需企業の役員である事もあってどうしても許せない。
荒んだ生活をして、母親と自分の事を理解してもらえない次郎に対し、南原は正直に事情を打明け、和解を図ろうとする。
この男の言い分もまた、戦争という時代背景を加味しても、やっぱり共感し兼ねる。
戦中派の戦後派若者への思いという点からの説得力も山田風太郎の戦争小説には到底適わず・・・。
結局、次郎の駆る盗品スポーツカーを発見して後部シートにワープした(突っ込みどころです)南原は次郎にスパナで殴られ重傷を負う。殺してしまったと思った次郎はスポーツカーで暴走、ハンドルを誤り、おっ死んじゃう・・・儚いねぇ。
救急車で搬送される南原が「いつか時が経てば、解ってくれる」・・・
時が経てば・・・、まったくその通りで時が経てばなのである。あの段階で強引な説得は結果として間違ってましたね。救いのない結末。

さて、この映画の魅力は・・・。
川地民男の突っ走りぶりも悪くは無いけれど、彼を慕う、不良少女・敏美の禰津良子。
初めて知る女優さんだけれど、モデル出身だそうで、ルックスがとても麗しくよろしい。
次郎に着いて歩きながら自分の生い立ちを語る街中のシーンが秀逸。
シーンとしては禰津良子と中川姿子(同棲相手の子を身ごもっている女子大生)の交差点での俯瞰ショットもナイスでしたよ。

もう、一人女優さん、母親の奈良岡朋子。奈良岡さんが若いのです。調べたら当時31歳。高校生の母親としては若いです。地味な未亡人の一人の女としての魅力に溢れています。芦田伸介の膝元に「他に女の人が居てもいい、私を捨てないで」とヨヨと泣き崩れる姿が最高に素晴らしかったです。
母親のあの姿を見てしまっては、次郎ちゃんの怒り、その後の母親に取った態度。これは納得できますね。

若いと言えばついでにもう一人。次郎たちが屯するバーのママ、宮城千賀子。

結局はいつも通り、素敵な女優さんたちを発見して涎垂らして、終わってしまいました。
吉永小百合が端役で登場しますが、この当時ではまだまだ可愛いお嬢さんというだけで・・・、禰津良子さんや大先輩の奈良岡朋子さんの足元にも及びません。

ラピュタ阿佐ヶ谷

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