「渋谷実のおかしな世界 The Bizarre Warld of Minoru Shibuya」
「二人だけの砦」1963年 松竹 監督:渋谷実
ヤクザから足を洗い、妻・光子と団地近くで薬局を開いた正一だったが・・・。商売敵の妨害や組との腐れ縁で商売はうまくいかず、団地の住人は胡散臭い奴ばかり。しまいに生まれたばかりの赤ん坊にとんでもない悲劇が!?狂った正一が暴走する後半の展開がブラックすぎる大怪作。カルト映画好き必見。
いやぁ、びっくりした。渋谷実ってこんな映画撮る人だったんだ。ちっとも知らなかった。
今回の特集、シネマヴェーラのチラシによると「人間の醜さの強調、ブラックすぎて笑えない展開、中盤から破綻していく物語、予定調和を断固として拒否するラストなど、失敗作と見紛うシュールでアヴァンギャルドな作品こそ渋谷の真骨頂。」とある。そんな真骨頂があるのなら、これはちょっと追っかけたくなるじゃないですか。
中でも本作はカルト的迷作なんだろうけれど。それにしても、だ・・・。
シートで笑いこけた、というよりシートからズリ落ちそうになった事が幾度あったことか。
舞台となるのっが当時新進の団地であるというのも良い。ロケ地は何処でしょう。横浜水道局の車が出てくるから横浜の団地なのかしら。
コメディとして団地風景のギャグが悉く、こちらのツボを突いてくる。
トイレットペーパー売りのギャグ、消防車と水道局の車が矛盾したことを宣伝しながら鉢合うギャグ。
私の好きな「の・ようなもの」(森田芳光)の原点を見たように思う。
ヤクザから足を洗って真面目にコツコツ働こうとするがうまくいかない若い夫婦の奮闘ぶり。そもそも、元ヤクザの夫と薬剤師の妻ってところから駄洒落ギャグなんでは?と思ってしまう。
大事な妹をヤクザものと一緒にさせるわけには行かないという三国連太郎。兄が堅気になるという二人をシブシブ認める件、
商売に行き詰まった夫婦が亭主の実家に戻り父親(笠置衆)に遺産の前借に行く。親不孝を詰られ取りつく島もない笠置衆だったが、孫のためと大金を渡す。
この実家のシーンから物語は妙な方向へ走りだす。
アイ・ジョージならではのその低音の魅力でさえも本作ではギャグとして放たれる。
一度は、商売がうまくいかず、酔っ払って周囲に暴言を吐きまくった正一(アイ・ジョージ)だが、妻の光子(岡田茉莉子)が言うように「私たち一生懸命やっている。」
暴れん坊の正一が団地内を走り回るシーンがある。この姿がとてもカッコ良いとは言えない滑稽さがあり、キャラクターの生真面目さが現われてくるのが驚きなのだ。
ゲラゲラ笑いながらもいつの間にか団地住人と一緒に彼らを応援したくなってくる不思議さ。
赤ん坊誕生の夜の宴会騒ぎにも人柄が溢れる。しかもアイ・ジョージだから宴会芸もラテン色濃いのが良い。
今回、いきなり激しいラブ・シーンで登場の岡田茉莉子。
1963年作品なので顔が少しふくよかになり、その後の熟女女優への階段を早くも上り始めている感じ。やはりこの女優さんは1958年限定の美しさ。限定されるだけに、そこにこそ価値があるんですね。勿論、美人には違いないんですけれど。
岡田さんの貫禄の反面、兄の三国連太郎、敵方ヤクザの丹波哲郎の若さが目を引く。
後半のトンデモ展開は口アングリ。しかし、三国連太郎の決着のつき方は見事としか言いようがない。
新生児のいる家庭では猫を飼うのは禁物ですね。うちにも猫が居ましたが、大往生を見送ってから子供ができました。
岡田茉莉子が猫の首根っこをつまみ上げる持ち方をする。当時は猫の持ち方として定番でしたね。愛護精神の欠片もないつまみ方が懐かしくも面白い。
とんでもカルトでありながら、岡田茉莉子が憎っき黒猫にミルクをやって外へつまみ出し(夫から逃がす)た後、息子の死に泣き崩れる。岡田茉莉子と寄り添うアイ・ジョージのラストは泣かされこそしないものの妙に温かい感動を憶える。
まさに自分の嗜好に合った作品で今年上半期の最後に旧作ベスト1に巡り合えた幸福感・・・。
シネマヴェーラ渋谷
「二人だけの砦」1963年 松竹 監督:渋谷実
ヤクザから足を洗い、妻・光子と団地近くで薬局を開いた正一だったが・・・。商売敵の妨害や組との腐れ縁で商売はうまくいかず、団地の住人は胡散臭い奴ばかり。しまいに生まれたばかりの赤ん坊にとんでもない悲劇が!?狂った正一が暴走する後半の展開がブラックすぎる大怪作。カルト映画好き必見。
いやぁ、びっくりした。渋谷実ってこんな映画撮る人だったんだ。ちっとも知らなかった。
今回の特集、シネマヴェーラのチラシによると「人間の醜さの強調、ブラックすぎて笑えない展開、中盤から破綻していく物語、予定調和を断固として拒否するラストなど、失敗作と見紛うシュールでアヴァンギャルドな作品こそ渋谷の真骨頂。」とある。そんな真骨頂があるのなら、これはちょっと追っかけたくなるじゃないですか。
中でも本作はカルト的迷作なんだろうけれど。それにしても、だ・・・。
シートで笑いこけた、というよりシートからズリ落ちそうになった事が幾度あったことか。
舞台となるのっが当時新進の団地であるというのも良い。ロケ地は何処でしょう。横浜水道局の車が出てくるから横浜の団地なのかしら。
コメディとして団地風景のギャグが悉く、こちらのツボを突いてくる。
トイレットペーパー売りのギャグ、消防車と水道局の車が矛盾したことを宣伝しながら鉢合うギャグ。
私の好きな「の・ようなもの」(森田芳光)の原点を見たように思う。
ヤクザから足を洗って真面目にコツコツ働こうとするがうまくいかない若い夫婦の奮闘ぶり。そもそも、元ヤクザの夫と薬剤師の妻ってところから駄洒落ギャグなんでは?と思ってしまう。
大事な妹をヤクザものと一緒にさせるわけには行かないという三国連太郎。兄が堅気になるという二人をシブシブ認める件、
商売に行き詰まった夫婦が亭主の実家に戻り父親(笠置衆)に遺産の前借に行く。親不孝を詰られ取りつく島もない笠置衆だったが、孫のためと大金を渡す。
この実家のシーンから物語は妙な方向へ走りだす。
アイ・ジョージならではのその低音の魅力でさえも本作ではギャグとして放たれる。
一度は、商売がうまくいかず、酔っ払って周囲に暴言を吐きまくった正一(アイ・ジョージ)だが、妻の光子(岡田茉莉子)が言うように「私たち一生懸命やっている。」
暴れん坊の正一が団地内を走り回るシーンがある。この姿がとてもカッコ良いとは言えない滑稽さがあり、キャラクターの生真面目さが現われてくるのが驚きなのだ。
ゲラゲラ笑いながらもいつの間にか団地住人と一緒に彼らを応援したくなってくる不思議さ。
赤ん坊誕生の夜の宴会騒ぎにも人柄が溢れる。しかもアイ・ジョージだから宴会芸もラテン色濃いのが良い。
今回、いきなり激しいラブ・シーンで登場の岡田茉莉子。
1963年作品なので顔が少しふくよかになり、その後の熟女女優への階段を早くも上り始めている感じ。やはりこの女優さんは1958年限定の美しさ。限定されるだけに、そこにこそ価値があるんですね。勿論、美人には違いないんですけれど。
岡田さんの貫禄の反面、兄の三国連太郎、敵方ヤクザの丹波哲郎の若さが目を引く。
後半のトンデモ展開は口アングリ。しかし、三国連太郎の決着のつき方は見事としか言いようがない。
新生児のいる家庭では猫を飼うのは禁物ですね。うちにも猫が居ましたが、大往生を見送ってから子供ができました。
岡田茉莉子が猫の首根っこをつまみ上げる持ち方をする。当時は猫の持ち方として定番でしたね。愛護精神の欠片もないつまみ方が懐かしくも面白い。
とんでもカルトでありながら、岡田茉莉子が憎っき黒猫にミルクをやって外へつまみ出し(夫から逃がす)た後、息子の死に泣き崩れる。岡田茉莉子と寄り添うアイ・ジョージのラストは泣かされこそしないものの妙に温かい感動を憶える。
まさに自分の嗜好に合った作品で今年上半期の最後に旧作ベスト1に巡り合えた幸福感・・・。
シネマヴェーラ渋谷