「過激で、キュートな、ユートピア。 沖島勲監督の全七作品、七周に渡り、一挙公開!!」
「出張」1989年 URBAN21 監督:沖島勲
中年のサラリーマン熊井は東北地方に出張に出掛けた。ところが落石事故に遭い、鉄道はストップ、一夜温泉での休息を得る。近所の飲み屋で二人のお姐ちゃんと良い目にあった熊井だが・・・・次の日なんと、山岳ゲリラに誘拐され女房と会社は身代金を要求されてしまう。さて、両者のその反応は・・・?
「ニュー・ジャック・アンド・ヴェティ」が超面白かった沖島監督の全監督作、たった7本の上映。
面白いんかなと、ちょっと疑心暗鬼で観賞。石橋蓮司が主役なら、そうそうはずさないだろうとの予測。
時代はバブルまっただ中の1989年。サラリーマンの悲哀って奴ですか、ブラックなユーモアを含めつつ、かなり楽しめました。
映画のテンポは実にゆっくりと流れる前半部。落石事故で足留めを食った熊井が温泉地のスナックでベロベロに酔う。こういうサラリーマンの酔っ払いは確実に居ました。今の残っているのでしょうか。
サラリーマンの悲哀を描くのに欠かせないのは彼らの勝負服であるユニフォーム、スーツにネクタイ。徹底的にこれに拘ってるのが良い。熊井は一風呂浴びて、飲み屋に行くにもワイシャツにネクタイ。ゲリラに身柄を確保されても朝にはワイシャツにネクタイ。熊井の身代金を届けに来る同僚も、山奥遠い道のり(煙草売りの百姓・常田富士夫が言ってました。)の山奥にネクタイ、スーツ。
サラリーマンとしての矜持ですよね。最近はカジュアルだとかクールビズだとか、たるんどる。サラリーマンはあのワイシャツにネクタイ・スーツというカッコ悪い装いでなかえればいけません。
ひょんな事でゲリラ戦を観戦していたら山岳ゲリラに身柄を拘束される不条理展開は筒井作品のように面白い。
「15年間何も面白い事なんかない」とゲリラにグチる熊井だが、昨晩、すごい面白い事してんのに忘れちゃってんのかな。ゲリラに会う前夜、スナック共同経営の女2人(亜子・松井千佳)とのエピソードはかなり重要。こっれてピンク映画の部類?松井千佳の太眉が時代を象徴。
身代金要求に芳しくない返答の妻や会社。見捨てられ、自分が今まで頑張って来た事は何だったのかと号泣する熊井。
「奥さんは貴方に保険金をかけていて死んでくれる事を願っている節があるので事故には気を付けるように」なんて吹聴され、家に戻ってみると・・・(彼に帰る場所なんてあるのでしょうか。)
妻の玲子(松尾嘉代)は「あら、案外早かったのね」と実に素っ気ない。しかし倦怠期の悪妻かと見ていたが、ヒステリックになる玲子の言い分を聴くと実に尤もなんです。「亭主の命なんかどうなったていい」という発言も陽動作戦のうち。倦怠期には違いないけれど案外良い女房なんです。部長との一夜で関係を持ったというのも熊井の思いこみかもしれません。
寝室で隣のベッドの女房にモーションをかけると、これは一睡もしていない妻から拒否られる。ここで熟年夫婦のおセックスになるのを期待したんだけれど、松尾嘉代のツンデレに期待したんだけど、あくまでサラリーマンの悲哀ですから。最近のハートウォーミングなピンク映画ではありませんので残念ながらそういう展開にはなりません。
ブラック・コメディで、かなり笑える映画ですけど、台詞一つ一つが妙にリアルなのが怖いですね。
石橋連司と松尾嘉代の演技をふんだんに楽しめたし、亜子の退屈そうでいて淫乱なヌードも楽しめて満足です。
車窓から乗り出しゲリラ隊にエールを送る熊井の姿にちょっとジンと来ちゃいました。
1本目、「ニュー・ジャック・アンド・ヴェティ」は既観賞なのでパスしたんだけど、ちょっと後悔。忘れてる部分も多いので再観賞するべきだったかと思わせる沖島監督20年後の傑作でした。この特集はちょっと通ってみる価値あり。
ラピュタ阿佐ヶ谷
「出張」1989年 URBAN21 監督:沖島勲
中年のサラリーマン熊井は東北地方に出張に出掛けた。ところが落石事故に遭い、鉄道はストップ、一夜温泉での休息を得る。近所の飲み屋で二人のお姐ちゃんと良い目にあった熊井だが・・・・次の日なんと、山岳ゲリラに誘拐され女房と会社は身代金を要求されてしまう。さて、両者のその反応は・・・?
「ニュー・ジャック・アンド・ヴェティ」が超面白かった沖島監督の全監督作、たった7本の上映。
面白いんかなと、ちょっと疑心暗鬼で観賞。石橋蓮司が主役なら、そうそうはずさないだろうとの予測。
時代はバブルまっただ中の1989年。サラリーマンの悲哀って奴ですか、ブラックなユーモアを含めつつ、かなり楽しめました。
映画のテンポは実にゆっくりと流れる前半部。落石事故で足留めを食った熊井が温泉地のスナックでベロベロに酔う。こういうサラリーマンの酔っ払いは確実に居ました。今の残っているのでしょうか。
サラリーマンの悲哀を描くのに欠かせないのは彼らの勝負服であるユニフォーム、スーツにネクタイ。徹底的にこれに拘ってるのが良い。熊井は一風呂浴びて、飲み屋に行くにもワイシャツにネクタイ。ゲリラに身柄を確保されても朝にはワイシャツにネクタイ。熊井の身代金を届けに来る同僚も、山奥遠い道のり(煙草売りの百姓・常田富士夫が言ってました。)の山奥にネクタイ、スーツ。
サラリーマンとしての矜持ですよね。最近はカジュアルだとかクールビズだとか、たるんどる。サラリーマンはあのワイシャツにネクタイ・スーツというカッコ悪い装いでなかえればいけません。
ひょんな事でゲリラ戦を観戦していたら山岳ゲリラに身柄を拘束される不条理展開は筒井作品のように面白い。
「15年間何も面白い事なんかない」とゲリラにグチる熊井だが、昨晩、すごい面白い事してんのに忘れちゃってんのかな。ゲリラに会う前夜、スナック共同経営の女2人(亜子・松井千佳)とのエピソードはかなり重要。こっれてピンク映画の部類?松井千佳の太眉が時代を象徴。
身代金要求に芳しくない返答の妻や会社。見捨てられ、自分が今まで頑張って来た事は何だったのかと号泣する熊井。
「奥さんは貴方に保険金をかけていて死んでくれる事を願っている節があるので事故には気を付けるように」なんて吹聴され、家に戻ってみると・・・(彼に帰る場所なんてあるのでしょうか。)
妻の玲子(松尾嘉代)は「あら、案外早かったのね」と実に素っ気ない。しかし倦怠期の悪妻かと見ていたが、ヒステリックになる玲子の言い分を聴くと実に尤もなんです。「亭主の命なんかどうなったていい」という発言も陽動作戦のうち。倦怠期には違いないけれど案外良い女房なんです。部長との一夜で関係を持ったというのも熊井の思いこみかもしれません。
寝室で隣のベッドの女房にモーションをかけると、これは一睡もしていない妻から拒否られる。ここで熟年夫婦のおセックスになるのを期待したんだけれど、松尾嘉代のツンデレに期待したんだけど、あくまでサラリーマンの悲哀ですから。最近のハートウォーミングなピンク映画ではありませんので残念ながらそういう展開にはなりません。
ブラック・コメディで、かなり笑える映画ですけど、台詞一つ一つが妙にリアルなのが怖いですね。
石橋連司と松尾嘉代の演技をふんだんに楽しめたし、亜子の退屈そうでいて淫乱なヌードも楽しめて満足です。
車窓から乗り出しゲリラ隊にエールを送る熊井の姿にちょっとジンと来ちゃいました。
1本目、「ニュー・ジャック・アンド・ヴェティ」は既観賞なのでパスしたんだけど、ちょっと後悔。忘れてる部分も多いので再観賞するべきだったかと思わせる沖島監督20年後の傑作でした。この特集はちょっと通ってみる価値あり。
ラピュタ阿佐ヶ谷