Quantcast
Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4203

「もず」

$
0
0
「渋谷実のおかしな世界 The Bizarre Warld of Minoru Shibuya」

「もず」1961年 松竹 監督:渋谷実 35mm

東京の小料理屋で住み込み女中をしている母を20年ぶりに尋ねてきた娘は、パトロンと逢う母の姿を目撃して・・・。因業女将の山田五十鈴、女中の乙羽信子を始め、母親の周囲のオバサン役で手練れの女優陣が勢ぞろい。原作・脚本の水木洋子のシニカルな視線が際立つ傑作。

シネマヴェーラの紹介文にある通り、母親すが子(淡島千景)の周囲のオバサン達の手練れ感はホントに凄い。
桜むつ子や、これはオバサンというには実際はチョット若いが既に充分にオバサンの乙羽信子らホステス仲間。桜むつ子の叔母にあたる?おせっかいをして皆から総攻撃をくらい不貞腐れる高橋トヨの滑稽さ。
すが子が移ったアパートの隣人、阿部ツネの清川虹子の有閑マダムっぷり。100円温泉。
すが子と折り合い悪い、因業女将・山田五十鈴のおっかない顔。

しかし、個人的に本作ではすが子の淡島千景の魅力的な演技にまいってしまった。大柄の和装での身のこなし一挙手一投足の見事な事ったら・・・これぞ、宝塚出身。

母親として娘を思いながらも、我儘で衝突をする事仕切り、次第に心身を病んでいく・・・
台詞にもあったが、非常にドライなところが取り柄でありながら、時折ウィットになり反省したりしている。
物語自体も前半の楽しいドライ感覚から後半の涙を誘う(ぜんぜん泣けるものではありませんけど)ウィット展開にちょっと面喰いうけれど・・・
どうやら渋谷実作品、前後半で趣がガラっと変わるのは特徴のようですね。

いや、そうそう淡島千景ですよ。2012年に亡くなった時点で5作品しか観てないではないの。
出演作品からの傾向で、苦手って事はないけれど微妙な範囲にあるように思えますが、今後は淡島千景の名を見つけたらチェックの上なるべく観るようにしようっと・・・

娘の有馬稲子の方ですが、この方もオバちゃんになってからの印象しかなく、好感度は低くかったから気に留めておらず、あまり若い頃の作品を見た事がありませんでした。案外、ふくよかな方なんですね。本作では田舎から結婚に失敗して上京してくる役で、わずかな訛りとぶっきらぼうな台詞回しが新鮮に感じられ。若尾文子なんかに代表されるように古い日本映画における若い女性の言葉の美しさって魅力があるだけに・・・

この親子、当初は杉村春子と岡田茉莉子って案があったってのを何処かで見たけれど、それでは随分イメージが違うだろうな。
淡島千景(当時37歳)、有馬稲子(当時29歳)の親子配役の「もず」がよろしい。
しかし、どうにも後半のお涙頂戴展開が・・・



シネマヴェーラ渋谷

にほんブログ村 映画ブログへ blogram投票ボタン



Viewing all articles
Browse latest Browse all 4203

Trending Articles