「見逃した映画特集2015」
「野火」2014年 海獣シアター 監督:塚本晋也
日本軍の敗戦が濃厚になってきた、第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。一等兵の田村は、結核を発症したために部隊を追われて野戦病院へと送られてしまう。だが、病院は無数の負傷兵を抱えている上に食料も足りない状況で、そこからも追い出されてしまう羽目に。今さら部隊に戻ることもできなくなった田村は、行くあてもなく島をさまよう。照りつける太陽、そして空腹と孤独によって精神と肉体を衰弱させていく田村だったが……。
戦後70周年に公開された本作は是非観ておくべき作品という認識はあったのだが、まずその前に市川昆版の「野火」を観たかったし、大昔から読みたいと思いつつ置き去りにされっ放しの大岡昇平原作からという思いもあり、まごまごしているうちに見逃した。
実を言うと塚本晋也作品も意外な事に何一つ見ていない。以前から興味はあり、物の本等で調査研究はしていたのですっかり何かしら観た心算になっていたが、これは拙い。
今年は少なくとも必須作品の「鉄男」くらいは観よう。今更感が強くて案外敬遠され続けていたのだ。
「野火」の前に塚本作品を何かしらという気持ちも見逃させた要因。
市川昆特集が1月下旬からあるが、背に腹は変えられず。泣く泣く市川昆作品をDVD鑑賞に置き換えての塚本版劇場(曲がりなりにもUPLINKなら劇場)鑑賞。
なんだか、いろいろと言い訳がましいですが、当ブログにコメントをいただける希少なブロガーさんであるとらねこさんが製作に関わっていて、「2015年本作を見て欲しかった。」なんて言われちゃいましたから・・・
どうだ!観たぞ!文句あっか!・・・・ありがとう、観て良かったよ。
映画と原作は印象が違うらしいので、本作のストーリー構成はかなり市川版を踏襲しているようです。
ただ、ラストの結末や解釈に関しては塚本版の方が好ましいと思います。
低予算で監督自ら私財を投げ打っての製作。
始まった当初はちょっと悪い予感がしたのです。デジタル映像独特の質感。役者さんたちの中には決してお上手とは言えない方も含まれ(主演の塚本監督はバッチリ好演でした)・・・
ヘルメットで兵士たちが防空壕を掘る奥行きの無い嘘ぽさ。これはちょっとどうなのかな?・・・・
しかし、何者かが迫り来る足音かと思えた音がスピード感を増して機銃掃射と判明する途端に顔面が破壊する演出によって、すっかり戦場の世界観に入れました。あの一撃だけでもこの映画を劇場で観た価値があるとも言えましょう。
その後は低予算を逆手にとって、見えない敵。ぶれる画面。そしてカラーだからこその森のグリーンと空、雲の美しさ。幻想的な音楽。それらにより、まさにここは果たして戦場なのか?それ以上の地獄絵図か?幻惑の楽園なのか?この世界観が実に見事でありました。血しぶきの赤が闇の中で鮮やかに美しい。
リアリズムの欠如が映像作品として良い方向に行っているのではないでしょうか。
従って本作を戦後70年に公開された反戦映画、戦争映画として捉えるべき種類の物では無いように思えます。
人肉食に関しては極限状態のため生食い描写ですから、美味しそうじゃない。当たり前ですね。
主な登場人物のキャスティング、役者さんは知らない方が多いですが健闘しています。皆さん本来の顔とは相当違った風貌。
リリー・フランキーなんか後半まで気付かなかった。
しかし、最後にはいかにもリリー・フランキーらしい安田が光りましたね。
青年兵、永松とのやりとり。
塚本作品を1本も見ていない者が言うのはちゃんちゃらおかしいのですが、今まで調査研究していた印象から言って、極めて塚本晋也らしい作品。塚本晋也ならではの作品なんだと思います。
遅ればせながら劇場で観れたのは良かったです。
次はDVDで観てしまった市川昆作品を劇場で鑑賞する予定。あちらはあちらでまた違った良さがあります。
渋谷 UPLINK
「野火」2014年 海獣シアター 監督:塚本晋也
日本軍の敗戦が濃厚になってきた、第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。一等兵の田村は、結核を発症したために部隊を追われて野戦病院へと送られてしまう。だが、病院は無数の負傷兵を抱えている上に食料も足りない状況で、そこからも追い出されてしまう羽目に。今さら部隊に戻ることもできなくなった田村は、行くあてもなく島をさまよう。照りつける太陽、そして空腹と孤独によって精神と肉体を衰弱させていく田村だったが……。
戦後70周年に公開された本作は是非観ておくべき作品という認識はあったのだが、まずその前に市川昆版の「野火」を観たかったし、大昔から読みたいと思いつつ置き去りにされっ放しの大岡昇平原作からという思いもあり、まごまごしているうちに見逃した。
実を言うと塚本晋也作品も意外な事に何一つ見ていない。以前から興味はあり、物の本等で調査研究はしていたのですっかり何かしら観た心算になっていたが、これは拙い。
今年は少なくとも必須作品の「鉄男」くらいは観よう。今更感が強くて案外敬遠され続けていたのだ。
「野火」の前に塚本作品を何かしらという気持ちも見逃させた要因。
市川昆特集が1月下旬からあるが、背に腹は変えられず。泣く泣く市川昆作品をDVD鑑賞に置き換えての塚本版劇場(曲がりなりにもUPLINKなら劇場)鑑賞。
なんだか、いろいろと言い訳がましいですが、当ブログにコメントをいただける希少なブロガーさんであるとらねこさんが製作に関わっていて、「2015年本作を見て欲しかった。」なんて言われちゃいましたから・・・
どうだ!観たぞ!文句あっか!・・・・ありがとう、観て良かったよ。
映画と原作は印象が違うらしいので、本作のストーリー構成はかなり市川版を踏襲しているようです。
ただ、ラストの結末や解釈に関しては塚本版の方が好ましいと思います。
低予算で監督自ら私財を投げ打っての製作。
始まった当初はちょっと悪い予感がしたのです。デジタル映像独特の質感。役者さんたちの中には決してお上手とは言えない方も含まれ(主演の塚本監督はバッチリ好演でした)・・・
ヘルメットで兵士たちが防空壕を掘る奥行きの無い嘘ぽさ。これはちょっとどうなのかな?・・・・
しかし、何者かが迫り来る足音かと思えた音がスピード感を増して機銃掃射と判明する途端に顔面が破壊する演出によって、すっかり戦場の世界観に入れました。あの一撃だけでもこの映画を劇場で観た価値があるとも言えましょう。
その後は低予算を逆手にとって、見えない敵。ぶれる画面。そしてカラーだからこその森のグリーンと空、雲の美しさ。幻想的な音楽。それらにより、まさにここは果たして戦場なのか?それ以上の地獄絵図か?幻惑の楽園なのか?この世界観が実に見事でありました。血しぶきの赤が闇の中で鮮やかに美しい。
リアリズムの欠如が映像作品として良い方向に行っているのではないでしょうか。
従って本作を戦後70年に公開された反戦映画、戦争映画として捉えるべき種類の物では無いように思えます。
人肉食に関しては極限状態のため生食い描写ですから、美味しそうじゃない。当たり前ですね。
主な登場人物のキャスティング、役者さんは知らない方が多いですが健闘しています。皆さん本来の顔とは相当違った風貌。
リリー・フランキーなんか後半まで気付かなかった。
しかし、最後にはいかにもリリー・フランキーらしい安田が光りましたね。
青年兵、永松とのやりとり。
塚本作品を1本も見ていない者が言うのはちゃんちゃらおかしいのですが、今まで調査研究していた印象から言って、極めて塚本晋也らしい作品。塚本晋也ならではの作品なんだと思います。
遅ればせながら劇場で観れたのは良かったです。
次はDVDで観てしまった市川昆作品を劇場で鑑賞する予定。あちらはあちらでまた違った良さがあります。
渋谷 UPLINK