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Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
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「独裁者と小さな孫」

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「独裁者と小さな孫」2014年 具・仏・英・独 監督:モフセン・マフマルバフ
THE PRESIDENT

年老いた独裁者による支配が続いていた国で、大規模なクーデターが勃発。幼い孫と一緒に逃亡した独裁者だったが、政権維持を理由に無実の人々を手に掛けてきたことから激しく憎まれており、変装することを余儀なくされる。孫にも自分が誰であるかを決して口に出さぬよう厳しく注意し、追手などを警戒しながら海を目指す。さまざまな人間と出来事に出会う中、彼らは思いも寄らぬ光景を見ることになる。

こういう地味目な作品で、ましてやタイトルや画像からおじいちゃんと孫のお話で、孫の子役が可愛いって奴ねくらいでスルーしてしまって当然の類。
信頼筋の絶賛とかがないとまず観ないよね。昨年末公開のもので、これはもう2番館3番館待ちかなと思っていましたが、ふと時間が空いたので観てみました。

なるほど!傑作です。久し振りに良い映画を観たという充足感。
実話をベースにしているわけではなく、大統領のお爺さんが逃亡先の馬小屋で話すように昔あるところに、といった寓話の形式。
それでいて一夜にしてのクーデターの町の様子、四面楚歌な状況が妙にリアルで、鑑賞中、寓話である事を忘れてしまうほど。実録と勘違いしそう。
ロードムービーとして次から次への展開エピソードが珠玉すぎます。

身分を隠してる事で自身に降りかかる誹謗がストレートに聞こえてくる。
そんな中、可愛い孫と必死の逃亡。新妻のレイプ、拷問された政治犯の足、息子夫婦の暗殺犯を背負う。服役中の妻の結婚を知った男。
目にする度に語らなくとも微妙な表情のニュアンス。語りこそしないが何かしらの変化の予感・・・
運命やいかに・・・





好きなエピソードは殿下のマリアじゃなくて大統領のマリアが娼婦だったって所。
で、この娼婦に身分を隠して会いに行き、大統領にかかった賞金の事を尋ね、見つけたらどうするかと問う。
この痩せぎすな娼婦の言い草が痺れます。「そんな事で稼ぐ了見があったら娼婦なんかしていない。」
そりゃ、マリア様に縋るわな。
大統領も知らされていない事実があり・・・。

大統領は意外とサバイバル力に長けており、ギターも上手い。曲がりなりにも一国を治めてきただけの事はある。

殿下のキュートさも魅力の一つ。軍服での敬礼、旅芸人娘姿でのハラハラ敬礼。そしてうんちやおしっこのシーンがなんとも言えぬ。





「尻は自分で洗うもの」とかラストの砂の宮殿とかメッセージ性のある事柄が多く使われているにも関わらず、説明的にならずに不思議と不自然さを感じないのも好感触。

過酷な状況を孫にゲームだと言いくるめるあたりは、やはり偶然出会った傑作、ロベルト・ベニーニの「ライフ・イズ・ビューティフル」を思い出しますね。もう19年前か・・・。

独裁と民衆主義、復讐の負の連鎖、円環。
監督はイランを亡命した人なんですと。

終盤からラストに至る推進力。
このエンディングは見事としか言いようがない。
DANCING・・・・




1月に観た不利はあるけれど、これは本年鑑賞上位間違い無し。
これだけの傑作、少ない上映館での上映も終わってしまったようですが、良心的な2番館でもかかるでしょう。
見逃した方はじっくり待ちましょう。必見作です。


新宿武蔵野館

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