「日本文学100年の名作第2巻 1924-1933 幸福の持参者」池内紀・川本三郎・松田哲夫・編
1924「島守」中 甚助
1925「利根の渡し」岡本綺堂
1926「Kの昇天」梶井基次郎
1926「食堂」島崎藤村
1928「渦巻ける烏の群」黒島伝治
1928「幸福の持参者」加能作次郎
1928「瓶詰地獄」夢野久作
1930「遺産」水上瀧太郎
1930「機関車に巣食う」龍胆寺 雄
1931「風琴と魚のま町」林 芙美子
1932「地下室アントンの一夜」尾崎 翠
1932「薔薇盗人」上林 暁
1932「麦藁帽子」堀 辰雄
1933「詩人」大佛次郎
1933「訓練されたる人情」広津和郎
昨年の今頃、読み始めたものの頓挫したままでした。今年再開しまして無事読了。
やはりこのアンソロジー、古い時代のものは良いね。第何巻まで読みますかね。
1924-1933という事で大正12年(1923)の関東大震災が重要なポイントとしてちょいちょい出て来ます。
巻頭の中甚助はちょっと読み辛く巻頭としては勢いが付かなかったけれど・・・
時代物はほとんど読まないので、こういうアンソロジーでないと出会う機会が無い岡本綺堂ではありますが、読むたびに面白い名人芸を感じます。結末はありがちですが、そこまでの経緯が読ませるので。
梶井基次郎のは昔、読んだことがあると思うけれど、ほとんど憶えていませんでしたし・・・
島崎藤村は学生時代、課題として「夜明け前」を苦労して読んで良い印象がなかったけれど、これは軽くて良い。軽いながらも震災からの復興と時代の移り変わりが鮮明に描かれる。
黒島伝治は珍しいシベリア出兵の話。厳しい中にもほっとするロシア人との交流と悲劇。戦争文学の隠れた名品です。
タイトルにもなっている「幸福の持参者」、つげ義春「チーコ」のこおろぎ版。こおろぎの短い命のためだけに歓迎から憎悪への転回が早急なにが哀しい。当時の若い夫婦の関係性、嫁の自立してない感じもとても憧れるものがあります。
「瓶詰地獄」をアンソロジーで読むとは思わなかった。そして、タイトルから想像していた内容とはぜんぜん違うものでした。「孤島の鬼」の手紙を想起。
水上瀧太郎も震災ネタ。震災後に町内の嫌われ者で人付合いをしない高利貸しの隣人と交流を始める主人公だが・・・
龍胆寺雄はタイトルそのまま、東京に出てきた少年と少女が放置された機関車に巣食うお話。千住のお化け煙突。
林芙美子もまず読まない作家。でも流石に面白い。貧しい旅芸人、自伝的要素もあるとか。風琴は手風琴の事でしょう。
尾崎翠は知りませんでした。最初は文学的な表現の面白さだけのものかと思いましたが、読み進めるうちにワクワクしてきます。なんとも新感覚。アントンはチェーホフの名から来てます。女流と知ってなおびっくり。ま、確かに女流的でしたが。早速尾崎翠を調べましたが、やはり当時は時代が速すぎて評価されていなかったらしい。ちょっと前にブームがあった模様。ピンク映画でたまに女性映画を撮る浜野佐知監督が作品を映画化している。興味深々。
上林暁の極貧もの。でも明るい少年小説。読後感の温かさ・・・
食わず嫌いの堀辰雄は思春期恋情もの。映画「風立ちぬ」を観て、ちょっと読んでみようかという気になったけど、やはり語り口が苦手。面白かったですけど。
ついに大佛次郎を読みました。先日観た映画「橋」(未投稿)の原作が大佛次郎。個人的にちょっと忘れ難い映画になりそうです。原作の良さを感じましたがこの「詩人」も凄い。ロシアのテロリストが題材。日本人によるロシア文学かよ。短編とは思えない充足感。長編となったらどんなに凄いか。大作家ですね。
広津和郎は中野・新井薬師の花街を舞台にした芸者もの。能天気で人気芸者だがすぐ孕んでしまうのが玉に瑕の玉千代半生。これも短編とは思えぬ豊穣さ。当時、映画化の話は無かったのでしょうか。今ならありそう。朋輩の君香の存在が重要。若い頃の中北千枝子で観たい(無理だよ)。
腹貸し女的に扱われた老パトロンとの間の男児にみせる初めての母性。せつないラスト。意味深なタイトルの付け方も秀逸で好きです。
水上瀧太郎
尾崎翠TOP画像
広津和郎
これ、少なくとも第5巻(~1963)くらいまでは読みたいですね。
日本文学100年の名作第2巻1924-1933 幸福の持参者 (新潮文庫)著者 : 新潮社発売日 : 2014-09-27ブクログでレビューを見る?
1924「島守」中 甚助
1925「利根の渡し」岡本綺堂
1926「Kの昇天」梶井基次郎
1926「食堂」島崎藤村
1928「渦巻ける烏の群」黒島伝治
1928「幸福の持参者」加能作次郎
1928「瓶詰地獄」夢野久作
1930「遺産」水上瀧太郎
1930「機関車に巣食う」龍胆寺 雄
1931「風琴と魚のま町」林 芙美子
1932「地下室アントンの一夜」尾崎 翠
1932「薔薇盗人」上林 暁
1932「麦藁帽子」堀 辰雄
1933「詩人」大佛次郎
1933「訓練されたる人情」広津和郎
昨年の今頃、読み始めたものの頓挫したままでした。今年再開しまして無事読了。
やはりこのアンソロジー、古い時代のものは良いね。第何巻まで読みますかね。
1924-1933という事で大正12年(1923)の関東大震災が重要なポイントとしてちょいちょい出て来ます。
巻頭の中甚助はちょっと読み辛く巻頭としては勢いが付かなかったけれど・・・
時代物はほとんど読まないので、こういうアンソロジーでないと出会う機会が無い岡本綺堂ではありますが、読むたびに面白い名人芸を感じます。結末はありがちですが、そこまでの経緯が読ませるので。
梶井基次郎のは昔、読んだことがあると思うけれど、ほとんど憶えていませんでしたし・・・
島崎藤村は学生時代、課題として「夜明け前」を苦労して読んで良い印象がなかったけれど、これは軽くて良い。軽いながらも震災からの復興と時代の移り変わりが鮮明に描かれる。
黒島伝治は珍しいシベリア出兵の話。厳しい中にもほっとするロシア人との交流と悲劇。戦争文学の隠れた名品です。
タイトルにもなっている「幸福の持参者」、つげ義春「チーコ」のこおろぎ版。こおろぎの短い命のためだけに歓迎から憎悪への転回が早急なにが哀しい。当時の若い夫婦の関係性、嫁の自立してない感じもとても憧れるものがあります。
「瓶詰地獄」をアンソロジーで読むとは思わなかった。そして、タイトルから想像していた内容とはぜんぜん違うものでした。「孤島の鬼」の手紙を想起。
水上瀧太郎も震災ネタ。震災後に町内の嫌われ者で人付合いをしない高利貸しの隣人と交流を始める主人公だが・・・
龍胆寺雄はタイトルそのまま、東京に出てきた少年と少女が放置された機関車に巣食うお話。千住のお化け煙突。
林芙美子もまず読まない作家。でも流石に面白い。貧しい旅芸人、自伝的要素もあるとか。風琴は手風琴の事でしょう。
尾崎翠は知りませんでした。最初は文学的な表現の面白さだけのものかと思いましたが、読み進めるうちにワクワクしてきます。なんとも新感覚。アントンはチェーホフの名から来てます。女流と知ってなおびっくり。ま、確かに女流的でしたが。早速尾崎翠を調べましたが、やはり当時は時代が速すぎて評価されていなかったらしい。ちょっと前にブームがあった模様。ピンク映画でたまに女性映画を撮る浜野佐知監督が作品を映画化している。興味深々。
上林暁の極貧もの。でも明るい少年小説。読後感の温かさ・・・
食わず嫌いの堀辰雄は思春期恋情もの。映画「風立ちぬ」を観て、ちょっと読んでみようかという気になったけど、やはり語り口が苦手。面白かったですけど。
ついに大佛次郎を読みました。先日観た映画「橋」(未投稿)の原作が大佛次郎。個人的にちょっと忘れ難い映画になりそうです。原作の良さを感じましたがこの「詩人」も凄い。ロシアのテロリストが題材。日本人によるロシア文学かよ。短編とは思えない充足感。長編となったらどんなに凄いか。大作家ですね。
広津和郎は中野・新井薬師の花街を舞台にした芸者もの。能天気で人気芸者だがすぐ孕んでしまうのが玉に瑕の玉千代半生。これも短編とは思えぬ豊穣さ。当時、映画化の話は無かったのでしょうか。今ならありそう。朋輩の君香の存在が重要。若い頃の中北千枝子で観たい(無理だよ)。
腹貸し女的に扱われた老パトロンとの間の男児にみせる初めての母性。せつないラスト。意味深なタイトルの付け方も秀逸で好きです。
水上瀧太郎
尾崎翠TOP画像
広津和郎
これ、少なくとも第5巻(~1963)くらいまでは読みたいですね。
日本文学100年の名作第2巻1924-1933 幸福の持参者 (新潮文庫)著者 : 新潮社発売日 : 2014-09-27ブクログでレビューを見る?