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Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
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「紙屋悦子の青春」

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「デビュー35周年記念 原田知世映画祭 映画と私」

「紙屋悦子の青春」2006年 パル企画 監督:黒木和雄

敗戦の色濃い昭和二十年・春。紙屋悦子は、鹿児島の田舎町で兄・安忠、その妻・ふさと暮らしていた。そんな彼女は密かに兄の後輩、明石少尉に想いを寄せていた。ところがある日、兄は別の男性との見合いを悦子に勧めてきた。相手は明石の親友・永与少尉で、明石自身も縁談成立を望んでいるらしい。

日本の夏は戦争映画を見る夏です。
公開時から気になりながら見逃していた1本。
原田知世、芸能生活35年を記念しての特集上映にて。




昨年の傑作「この世界の片隅に」と同様に戦中の市井生活を綴った作品であり良質な反戦映画といえる。
結ばれた相手が本命とは違っていても身をまかせていく点や食事を作ったり食べたりするシーンもイメージは重なる。
すずさんと悦子さんの大きな違いは趣味・特技の有り無し。

配給、高菜の漬けもの
一昨日の芋
静岡の美味しいお茶
義姉と作る貴重な小豆のおはぎ
爆弾の当たらないまじないとしての赤飯とらっきょ
パイ缶の餞別。

また元は戯曲という事で、なるほど登場人物も舞台もシンプルで物語は実に静かに進んでく。
敗色濃厚の戦時下のお見合い話ってだけである。

ところがこれは背景にある戦争の影が見え隠れする演出が絶妙なだけで、涙を誘わずにはいられない。
劇場でこれだけ涙したのは・・・今年の「日本敗れず」以来。やっぱり戦争ものだったか。

落涙ポイントは大きく3つ。

永与少尉が弁当箱持って戻ってきて不器用に求婚するシーン。これまで求婚シーンで涙した経験は無かったと思う。



安忠が熊本の工場から束の間の休暇で戻ってきたものの、すぐ明日に発つと知り拗ねるふさとの夫婦喧嘩。



戦場に向かう明石少尉を見送った後のふさと安忠のやりとり。悦子の号泣手前。



残念なのは冒頭とラスト。無理のある老けメイクの原田知世と永瀬正敏の病院屋上での鹿児島弁のやりとり。
最初、始まった時、これは糞映画掴まされたかと思ったくらい。
長い夫婦生活の始まり部分を切り取った物語ではあるけれど、あの冒頭とラストは無くても充分成立できると思うのだが・・・

芳山和子以来、こちらの好みに合わない作品への出演が多いと感じていた原田知世さんだが、この辺り以降からは役者としても歌手としてもなかなかよろしいと思う者であります。

女学校の同級生であり義姉ふさ(本上まなみ)。戦時下でも休暇で夫が戻る日のグリーンのワンピがとても素敵。
やはり小林薫は絶妙であった。



ヒューマントラストシネマ渋谷



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