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Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
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「青春怪談」

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「昭和の銀幕に輝くヒロイン[第86弾]轟夕起子」

「青春怪談」1955年 日活 監督:市川昆

慎一(三橋達也)と千春(北原三枝)の若いカップルは、合理的に結婚を準備中。一人残る父・鉄也(山村聰)を心配する千春は、慎一の母で未亡人の蝶子と再婚させようとするが、渋る鉄也とは正反対に、蝶子は大乗り気になって・・・。丸々と太った轟が、童女のように山村を熱愛する演技は抱腹絶倒。轟がコメディエンヌの才能を最高に開花させた、市川昆監督の大傑作。

書店に寄ると今、獅子文六のブームなのかちくま文庫が良い仕事をしているようですね。
獅子文六原作、和田夏十の脚色によるラブコメ。
すっかり新東宝の上原謙・高峰三枝子ヴァージョンのリメイクかと思っていたがさにあらず、これは公開日まで同じにした競作だったのね。



登場する4名のキャラがそれぞれ楽しい。
細いウエストでバレエに命をかける男っぽい北原三枝がなんとも魅力的だが、キャラとしてその父・山村聰がまたしても良いキャラを演じ切ってる。
自称、内向的で自己中であるため結婚する資格が無く、なまじ女性を不幸にさせる権利は無いという奥村鉄也が蝶子を眺めながらのモノローグが一々笑える。
向島百花園でそのキャラを発揮する自己中デート、ちょこちょこ必死に付いてくる蝶子の轟夕起子も良い。



轟夕起子演ずる蝶子は少女がそのまま大人になったような何もできない女。眼鏡をかけて鏡台の前で顔をたたくうなじから背中にコメディエンヌの本領が。
三橋達也が美青年ていうのは抵抗あるんだけど見ると成るほど美青年っぽく撮れている。





市川昆のカットが冴えていてイカすのだけれど一番好きなシーンは・・・
浅草で4人が持ち合わせする場面。トロリーバス、路面電車行きかう当時の浅草風景の中、凛とした後ろ姿の北原三枝が吾妻橋側の三橋、轟親子をみつけてスッと手を挙げ降る。浅草の遠景。こういう場面は繰り返し観たいものだ。



アサヒビール工場をバックに、出掛け様にまめまめしく父親の身仕度を世話する娘に感心してしまった旨を三橋に耳打ちする山村聰。

百花園デートで戦前や震災前の風景をノスタルジックにしゃべるのが鉄也・山村聰のデートだが、こっちは百花園は馴染み薄なので生まれる前の浅草風景に見惚れる。あんな浅草でデートしてみたかったね。

若くて細いのは北原三枝だけじゃない。チョイ役で登場する高品格。顔のラインの細い事、それでもやっぱり刑事役。

劇場掲示の宣材に千春を演じるに当たっての北原三枝の文が載ってる。新東宝の安西郷子を明確にライバル視する勝気そうな文章、千春役には合ってる感じで面白い。これも競作という特異な試みならでは。

記憶が薄れる前に新東宝版も観たいのだけれど・・・春の神保町で両方見逃してるのが痛い。



ラピュタ阿佐ヶ谷

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