「濡れたあいびき」

「豊かに実る　松竹文芸映画の秋」

「濡れた逢いびき」1967年　松竹　監督：前田陽一

秘密を守るため関係を結んだ男女。しかしたがいの存在が邪魔になり、バレないように相手を消そうとする---。ザ・スパイダースのリーダー田辺昭知と、妖精・加賀まりこの化かしあい。土屋隆夫『へんてこな葬列』をもとにしたドライなスリラー劇。

貞操観念の微妙な塩梅がまさに1967年ならではのコメディ・スリラー。

田辺昭知主演とは珍しいので衝動的に鑑賞。
さえない田舎青年に合う田辺社長だが
郵便局員のスリムなスラックスで走る姿にロッカーを見た。


「なんとなくなんとなく」を口ずさむ。

横浜デートの昭知・まりこのグラサンに公園で演奏するザ・テンプターズ「テル・ミー・モア」「忘れ得ぬ君」お値打ち。




互いに本命ではないところで秘密を共有してしまったための妥協愛。結局それぞれに条件の良い縁談話が持ち上がり相手への殺意へと変わっていく、軽いスリラーで原作は読んでいないけどさぞかし軽妙な掌編であろうことが想像できる。
しかし、毒殺計画が杜撰すぎてどちらも完全犯罪は無理そう。
であるからしてこれがベストなハッピーエンドだろう。最後の浮気性な叔父である郵便局長・谷幹一と明との関係を疑う女房・桜京美の小芝居ネタが象徴的。




田辺昭知の本命娘役は勝又道子という女優。清楚な感じは小悪魔加賀まりこより断然好ましい。またまた、そんな脇に目が行く。
調べたが、他にあまり出演作は無い模様･･･
あの娘も訳ありな感じの転身で、そこらの貞操観念も興味深い。

「へんてこな葬列」確かにへんてこな一本でした。



ラピュタ阿佐ヶ谷