暗渠の宿 (新潮文庫)西村 賢太新潮社発売日:2010-01-28ブクログでレビューを見る»
2011年、いろんな発見がある中で、ダントツ、ピカイチが西村賢太という芥川賞作家さんでした。
これは、その一発目、春先に読んだもの。
このあと、兎に角、文庫になっているものから全部読もう、という追っかけ体制に入り、エッセイを残して読み終わりました。
あまりにも素晴らしすぎて、投稿しそびれちゃってまして・・・
そもそも、芥川賞「苦役列車」は何気に気にはなっていたものの、何を今更、私小説なんじゃろと。
ところが賞を取るとたちまち文庫本が平積みになる。文庫本というのは裏カバーにあらすじ紹介が載ってるじゃないですか。それを読んでしまっては賺さず購入しないわけには行かないワクワク感。
日頃、山田風太郎、谷崎潤一郎、江戸川乱歩などなど、古い作品ばかり読んでいるけれど、現代の作家さんで面白い方が居るんであれば、それは、もう読んで行きたいと思っておりましたが、なかなかこちらの読書心を擽る新人作家さんに巡り合えず・・・。
若い頃なら勢い付いて一気に読破となるところ、そこはそれ、曲がりなりにも老練。冷静さを失わず、山田さん、江戸川さん、谷崎さん等と交互に読んで行きました。それは何時も同じ題材で飽きてしまう事を懸念したうえだったわけです。いやいや、飽きるなんてとんでもない事でした。
「けがれなき酒のへど」
いきなり、もてない男が風俗嬢に貢いで騙される話ですが。このシチュエーションがただものではないです。同一の体験は無いはずなのに、何故こんなに共感を呼び、身につまされるのでしょう。
西村さんの魅力は女に騙される事はもとより、その話題で自虐的に笑い話にしようと酒に誘った友人にどん引きされ、挙句、そいつを殴っちゃう所の面白さ。
「・・・おめえはすぐに暴力だしな」と恨み言を言われちゃう西村さんです。
「暗渠の宿」
久しぶりにありついた恋人との新居探し。
性格の破綻さが、すがすがしいほど勢いがある。これまた共感を覚えずにはいられません。
何度も声出して笑いそうになった。電車内で読む時は気をつけなくては。
嫉妬深いところをぐだぐだ述べ立てた直後に起きるインスタントラーメン事件。
ダメ男のなかでも暴力を振るう男というのは解りやすく、痛快です。ある意味、性質(たち)が悪くないのかも。
その言い分の身勝手さにも、とてもとても共感。
章区切りで発せられる文。
「私は、この女はもっと私に従順であるべきだと思う」
しかも、2回も繰り返される。
痛快極まりないです。もっとやって、もっとやって!
そして古臭い言い回しを使う文体によって、彼の口から出る啖呵の見事さ。
記念すべき西村賢太、ド嵌りの1冊でございました。
2011年、いろんな発見がある中で、ダントツ、ピカイチが西村賢太という芥川賞作家さんでした。
これは、その一発目、春先に読んだもの。
このあと、兎に角、文庫になっているものから全部読もう、という追っかけ体制に入り、エッセイを残して読み終わりました。
あまりにも素晴らしすぎて、投稿しそびれちゃってまして・・・
そもそも、芥川賞「苦役列車」は何気に気にはなっていたものの、何を今更、私小説なんじゃろと。
ところが賞を取るとたちまち文庫本が平積みになる。文庫本というのは裏カバーにあらすじ紹介が載ってるじゃないですか。それを読んでしまっては賺さず購入しないわけには行かないワクワク感。
日頃、山田風太郎、谷崎潤一郎、江戸川乱歩などなど、古い作品ばかり読んでいるけれど、現代の作家さんで面白い方が居るんであれば、それは、もう読んで行きたいと思っておりましたが、なかなかこちらの読書心を擽る新人作家さんに巡り合えず・・・。
若い頃なら勢い付いて一気に読破となるところ、そこはそれ、曲がりなりにも老練。冷静さを失わず、山田さん、江戸川さん、谷崎さん等と交互に読んで行きました。それは何時も同じ題材で飽きてしまう事を懸念したうえだったわけです。いやいや、飽きるなんてとんでもない事でした。
「けがれなき酒のへど」
いきなり、もてない男が風俗嬢に貢いで騙される話ですが。このシチュエーションがただものではないです。同一の体験は無いはずなのに、何故こんなに共感を呼び、身につまされるのでしょう。
西村さんの魅力は女に騙される事はもとより、その話題で自虐的に笑い話にしようと酒に誘った友人にどん引きされ、挙句、そいつを殴っちゃう所の面白さ。
「・・・おめえはすぐに暴力だしな」と恨み言を言われちゃう西村さんです。
「暗渠の宿」
久しぶりにありついた恋人との新居探し。
性格の破綻さが、すがすがしいほど勢いがある。これまた共感を覚えずにはいられません。
何度も声出して笑いそうになった。電車内で読む時は気をつけなくては。
嫉妬深いところをぐだぐだ述べ立てた直後に起きるインスタントラーメン事件。
ダメ男のなかでも暴力を振るう男というのは解りやすく、痛快です。ある意味、性質(たち)が悪くないのかも。
その言い分の身勝手さにも、とてもとても共感。
章区切りで発せられる文。
「私は、この女はもっと私に従順であるべきだと思う」
しかも、2回も繰り返される。
痛快極まりないです。もっとやって、もっとやって!
そして古臭い言い回しを使う文体によって、彼の口から出る啖呵の見事さ。
記念すべき西村賢太、ド嵌りの1冊でございました。