「妄執、異形の人々 海外編」
「笑ふ男」1928年 米 監督:パウル・レニ
The Man Who Laughs
英国王によって父が処刑され、息子のグインブレインは口の両端を裂かれ常に笑ったような顔に変えられ、捨てられた。後にサーカスのピエロとして人気を得、盲目の少女デアへ思いを寄せる彼は・・・。容姿へのコンプレックスに苦しみ愛を告白できず、さらに悲劇的な運命を辿る笑い男。
おーっと!山田風太郎の「笑う肉仮面」の原点はここにあったのか。特集チラシの紹介からキャラクターが同様の異形者と言う事で興味を持ったが、吹雪の中で盲目の赤児を拾うところまで一緒。そう、このお話の原作はビクトル・ユゴーだったわけですから、面白くないわけが無いんですね。
してみると「笑う肉仮面」は黒岩涙香の「噫無情」のように翻案ものだったんですね。
実は山田風太郎傑作選・少年篇「笑う肉仮面」は未だ読んでおらず、私が事前に読んだのは補遺篇の中の「肉仮面」。少年篇も早く読みたくなってきました。それはさておき・・・・
この映画がまたまた、サイレント映画の傑作。鑑賞後もいたく興奮させられちゃいました。
「裁かるるジャンヌ」以来、何度、サイレントの表現力に圧倒されるのでしょうか。この調子で行くとまだまだ私の知らないサイレント傑作が埋もれているに違いありません。
子供誘拐団・コンプラチコによって攫われ、整形手術により常に笑ったような顔を持つグウィンプレイン。演じるのはコンラート・ファイト。
いつも歯をむき出しにした笑い顔を保つのは当時のメイク技量とか、どの程度関わっているんでしょうか。
一か所だけ、貴族に祭り上げられるもあまりの屈辱、悔しさから、その口元をゆがめるシーンがありました。演出なんでしょうが、あそこは笑い顔のまま通したって充分伝わるんじゃないかというほどのコンラート・ファイトの演技。
いや、その前にグウィンプレインの子供時代の子役の笑い顔がなんとも憐れで。
彷徨う砂漠、首つりが多くぶら下がる光景とか、もう世界感が痺れます。
グウィンプレインの父親の処刑を国王に唆し、その後も物語に暗躍する道化のいかがわしさとかもNice!
グウィンプレインと盲目の赤児デアは香具師ウルブスに拾われ、サーカスの人気者に。
グウィンプレインは盲目のデアと相思相愛だが、自分の顔に施された笑いを知られる事により恋人を失うのではないかという不安を持っている。
香具師ウルブスはメシの種として彼等を育てたに違いないんだが、顔に似合わず2人を見守る親のような心情が温かく描かれ、サーカス団の人々と最高に良いファミリーを形造っていて・・・
さて、圧巻のシーンは・・・
道化の策略でグウィンプレインが連れ去られ、サーカス興業ができなくなるのだが、デアに心配をさせまいとウルブス以下団員はその事を隠している。サーカスの開演時間となり、デアに促されて幕を開ける事に。人気者のグウィンプレインを待つ観客を装い、声援、拍手をするサーカス団の仲間。
サイレントも後期で効果音や短いヴォイスなども入ってはいるが、このシーンでは本当に音や色いを感じる事ができる。口上を涙ながらに述べるウルブス。いくらなんでも異変に気づき不安を募らせるデア・・・。
サイレントの世界に引きこまれながら、後半に入ると観客を充分に楽しませるサスペンス、アクションシーンでハラハラドキドキ。すっかり感情移入されてしまっている。
おまけに、最後に手柄を立てるヒーローはグウィンプレインとデアを幼い頃から行動を共にしてきたサーカス団の犬(クレジットでは狼)オモと来るところも憎い演出。
肉仮面、異形の者、サーカス団、王宮の道化と、「妄執、異形」には充分ないかがわしさを持ちながら、一級のエンターテイメントでもある。
ビクトル・ユゴー、パウル・レニ、恐るべし・・・。
「妄執、異形の人々」特有のB級モンド感覚の側面からは、グウィンプレインの存在を王宮に知らせるため、誘拐団医師から手紙を託されたサーカス団員の風体(ピンヘッド気味?)。王妃の入浴を覗いている間に道化に手紙を奪われちゃいます。
シネマヴェーラ渋谷
「笑ふ男」1928年 米 監督:パウル・レニ
The Man Who Laughs
英国王によって父が処刑され、息子のグインブレインは口の両端を裂かれ常に笑ったような顔に変えられ、捨てられた。後にサーカスのピエロとして人気を得、盲目の少女デアへ思いを寄せる彼は・・・。容姿へのコンプレックスに苦しみ愛を告白できず、さらに悲劇的な運命を辿る笑い男。
おーっと!山田風太郎の「笑う肉仮面」の原点はここにあったのか。特集チラシの紹介からキャラクターが同様の異形者と言う事で興味を持ったが、吹雪の中で盲目の赤児を拾うところまで一緒。そう、このお話の原作はビクトル・ユゴーだったわけですから、面白くないわけが無いんですね。
してみると「笑う肉仮面」は黒岩涙香の「噫無情」のように翻案ものだったんですね。
実は山田風太郎傑作選・少年篇「笑う肉仮面」は未だ読んでおらず、私が事前に読んだのは補遺篇の中の「肉仮面」。少年篇も早く読みたくなってきました。それはさておき・・・・
この映画がまたまた、サイレント映画の傑作。鑑賞後もいたく興奮させられちゃいました。
「裁かるるジャンヌ」以来、何度、サイレントの表現力に圧倒されるのでしょうか。この調子で行くとまだまだ私の知らないサイレント傑作が埋もれているに違いありません。
子供誘拐団・コンプラチコによって攫われ、整形手術により常に笑ったような顔を持つグウィンプレイン。演じるのはコンラート・ファイト。
いつも歯をむき出しにした笑い顔を保つのは当時のメイク技量とか、どの程度関わっているんでしょうか。
一か所だけ、貴族に祭り上げられるもあまりの屈辱、悔しさから、その口元をゆがめるシーンがありました。演出なんでしょうが、あそこは笑い顔のまま通したって充分伝わるんじゃないかというほどのコンラート・ファイトの演技。
いや、その前にグウィンプレインの子供時代の子役の笑い顔がなんとも憐れで。
彷徨う砂漠、首つりが多くぶら下がる光景とか、もう世界感が痺れます。
グウィンプレインの父親の処刑を国王に唆し、その後も物語に暗躍する道化のいかがわしさとかもNice!
グウィンプレインと盲目の赤児デアは香具師ウルブスに拾われ、サーカスの人気者に。
グウィンプレインは盲目のデアと相思相愛だが、自分の顔に施された笑いを知られる事により恋人を失うのではないかという不安を持っている。
香具師ウルブスはメシの種として彼等を育てたに違いないんだが、顔に似合わず2人を見守る親のような心情が温かく描かれ、サーカス団の人々と最高に良いファミリーを形造っていて・・・
さて、圧巻のシーンは・・・
道化の策略でグウィンプレインが連れ去られ、サーカス興業ができなくなるのだが、デアに心配をさせまいとウルブス以下団員はその事を隠している。サーカスの開演時間となり、デアに促されて幕を開ける事に。人気者のグウィンプレインを待つ観客を装い、声援、拍手をするサーカス団の仲間。
サイレントも後期で効果音や短いヴォイスなども入ってはいるが、このシーンでは本当に音や色いを感じる事ができる。口上を涙ながらに述べるウルブス。いくらなんでも異変に気づき不安を募らせるデア・・・。
サイレントの世界に引きこまれながら、後半に入ると観客を充分に楽しませるサスペンス、アクションシーンでハラハラドキドキ。すっかり感情移入されてしまっている。
おまけに、最後に手柄を立てるヒーローはグウィンプレインとデアを幼い頃から行動を共にしてきたサーカス団の犬(クレジットでは狼)オモと来るところも憎い演出。
肉仮面、異形の者、サーカス団、王宮の道化と、「妄執、異形」には充分ないかがわしさを持ちながら、一級のエンターテイメントでもある。
ビクトル・ユゴー、パウル・レニ、恐るべし・・・。
「妄執、異形の人々」特有のB級モンド感覚の側面からは、グウィンプレインの存在を王宮に知らせるため、誘拐団医師から手紙を託されたサーカス団員の風体(ピンヘッド気味?)。王妃の入浴を覗いている間に道化に手紙を奪われちゃいます。
シネマヴェーラ渋谷