きりゅう映画祭2021ファイナル
「ただ夏の日の話」2021年 監督:松岡芳佳
川中陽月、東京で働く27歳。まだ昨日のお酒が抜け切っていない重い身体をゆっくりと起こした。今いる場所が自分の部屋ではないことだけは理解したが、二つばかり違和感を感じた。一つ目は、まどの外に見える景色が東京ではないこと。二つ目は部屋の中に見知らぬ男性が寝ていること。さらに言うと「おじさん」な気がすること。酒に呑まれて記憶をなくし、陽月はなぜか「桐生」に来てしまっていた。ついでにどこのだれかも知らないおじさんと。そんな知らない場所で知らない人と過ごした、ただ夏の日の話。
素敵な短編で今後、多くの映画祭への出展望む。若い女性監督目線で波乱の幕開き。オジサン目線だとこんなラッキーな奇跡は無いんだけどね。陽月の深川麻衣が良い感じで、この方はなんとか坂の人らしい。憶えておこう。(覚えられないって)
古舘寛治が良くも悪くも限りなく下心ゼロに徹している。湖のほとりに行くとき「先、帰ってていいですよ」それも陽月は心細いので付いてくるラッキー。「ボート乗りましょう」に「乗りませんよ」と言いつつ10分だけの約束で付き合ってくれるラッキー。おじさんは桐生が気に入ったようでもう1日残ることにして、駅で別れる。この別れは下心があるとかなり寂しいのだけれど飄々と見送る。
数日後、おじさんと陽月との間には不思議な繋がりがある事が解って、ただの夏の日が終わる。
物事の見方をちょっと変えるだけで、なにもない日常(脇役なんて居ない、みんなが主役)もキラキラ輝きだす、カネコアヤノの曲みたいな短編。
「Dis_me Land」2021年 監督:カツヲ
都内の大学で民俗学を学ぶ桐子。幼馴染の遥に誘われ、ギャラ呑みに参加するも、みんなのテンションについていけず、居心地が悪い。それでも大学生活を楽しみたい、遥に認めてもらいたい桐子は、自宅でメイクの練習をする。しかし慣れないメイクと気持ちの焦りから思うようにいかず、唯一心配してくれる母にも虚勢を張る始末。ある時、ギャラ呑みのメンバーと共に、桐生市へと車でキャンプに出掛けることに。ようやくキャンパスライフを満喫できると思った桐子だったが、休憩所に立ち寄った際に存在を忘れられ、置いていかれてしまう。慌てた桐子は脚を滑らし滑落し、遭難してしまう。どうしようもない惨めな気分に悔しく、涙する。不安な中、山の夜道を彷徨い続ける桐子。ようやく見つけたキャンプに数名の人影を見つけ、希望を見出す。しかしそこにいたのは奇怪な恰好をした変人の集まり。盲目の老婆に小人、熊の毛を被った大男達。悪い夢に誘われるように、彼らと一夜を過ごすことになってしまった桐子は・・・。
素材の良い女子に地味で暗い眼鏡っ子やらせる手口。ダークファンタジー部分は長編にも拡がりそう。祷キララのラスト笑いが
お気楽大学生ってホント楽しいんだけどね。コロナ禍の学生さんの失ってる物を上回る何かがあるといいね。
「母の反抗期」2021年 監督:近江浩之
結婚の報告をしに地元・桐生に帰省する吉村にか(30)。数年前に祖母が他界して以来、実家は父と母二人きり。仕事を退職してどこか魂が抜けている父と、もうすぐ還暦の今になって、自分の人生に自信がなくなってしまっている母。少しでも明るい話題を届けたいと思うにかと、にかの幸せを願う父と母。思っていることは同じはずなのに、ちょっとずつすれ違ってしまう。そんな中、母・吉子がいなくなってしまい・・・。どこにでもあるような地方都市の、どこにでもあるようなたったひとつの家族の話。
母が居なくなるといってもすぐ見つかるし、反抗期というか、ちょっと拗ねてる感じ。定年退職の亭主に一日家に居られるとね。赤間麻里子が良い。
桐生市街を一望できる公園のベンチ、母と娘の距離。後方から見下ろす感じのカメラ。二人の会話が味わいがある。
結局のところは、なんとも幸せな桐生実家映画。婚約者来る前の家族写真、しかももう一枚。
劇中ワクチン接種の会話あり。
上映後、柳英里紗が東京の実家から水屋箪笥をバックにオンライン登壇。「実父母と鑑賞してました」にもほっこり。美味しそうなもの飲んでたなあw
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11年続いてきた桐生映画祭は一定の成果を見たという事で今回が最後。
地方都市の映画祭って行った事ないけどコロナ禍で配信になる事で体験できる。残念ですね、配信きっかけで次回は現地に行って観ようという人も居るでしょうに。東京から桐生は距離的にも手頃である。
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