「没後10年 女優・淡島千景」
「珍品堂主人」1960年 東京映画 監督:豊田四郎
骨董の目利きで美食家の通称・珍品堂(森繁)は、実業家の後ろ盾と蘭々女史(淡島)の手助けを得て、器や料理にこだわった高級料亭を開業することになったが…。井伏鱒二原作小説・善意と奸計が織りなす人間模様の妙。得体の知れぬ不気味さを漂わせる才女を淡島が怪演。
控え目に言っても淡島千景は相当贔屓にしてるつもりだが、出演作が僅かに当方嗜好と齟齬あり特集やってても片っ端から観る事はなく少しづつ。今回は井伏鱒二原作の「珍品堂主人」
「骨董は、女と一緒だ」とのたまう珍品堂。男が何かに執着して凝った場合。ある意味それは全て女に例えられるという考えで間違いなかろう。
森繁の珍品堂、抑制が効いていながらも見せる好色っぷりがカッコいいな。
実業家の久谷氏(柳永二郎)は骨董のことは解らないので全て全幅の信頼を置く珍品堂の眼鏡を信じ切るという御仁。スポンサーとしては申し分ないのだけれど、結局は珍品堂も蘭々女さんもこの久谷氏の小料理屋三蔵・女主人(淡路恵子)への好色による手管にやられてしまうのだ。金持ちは強ええよ。
久谷氏曰く「金には汚い蘭々女さんは女としては見てはいけない」何かと思ったら同性愛者でないの。
淡島千景の入浴シーン、可愛がってる利根(峯京子)に足裏を洗わせる女王様ぶり。利根と珍品堂のよろめき関係を知り無言の平手往復ビンタ。
最後には共に図られた仲、珍品堂によろめくが袖にされる。
淡島千景様鑑賞としては中々見どころのある作品だった。
家庭を顧みなかった関白亭主の珍品堂。その妻お浜(乙羽信子)おもむろに謡と能面のシーン。
蘭々女即身の於千代(千石規子)馬上のキザ男(山茶花究)偽物で平気に商売する有島一郎、各脇キャラもいい味。
多くは描かれないが女中・市原悦子にも何やら物語が見え隠れ。
基本、映画を先に見たあと原作を読むのは好きでないが、これは行けそうな気。そもそも読書離れが甚だしすぎるのだが。
神保町シアター
2022年1月
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「珍品堂主人」
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