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Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
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「箱男」

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「箱男」2024年 ハピネットファントム・スタジオ 監督:石井岳龍 脚本:いながききよたか、石井岳龍 原作:安部公房

ダンボールを頭からすっぽりと被った姿で都市をさまよい、覗き窓から世界を覗いて妄想をノートに記述する「箱男」。それは人間が望む最終形態であり、すべてから完全に解き放たれた存在だった。カメラマンの“わたし”は街で見かけた箱男に心を奪われ、自らもダンボールを被って箱男として生きることに。そんな彼に、数々の試練と危険が襲いかかる。



映画鑑賞前に本棚の奥から新潮文庫「箱男」を引っ張り出してきて久々の再読。しかも続けざまに2回(2回目は多少飛ばしたが)再読して臨んだ。

安部公房原作の映画化第一人者は勅使河原宏で石井岳龍どうなのかと不安もあったが、見事に払拭して突き抜けてくれた。
原作でも一番盛り上がるエロティックな場面を中心にアクション、バイオレンスから問答、観念へと縦横無尽だ。
サウンドもかなり良くサントラ盤で音楽のみで聴いたらどうだろう。音楽は勝本道哲。



冒頭の箱男逃走アクションでは、お馴染みの映画泥棒カメラ男と重なり笑ってしまうが、以降作品世界にのめり込めた。
のめり込んでも滑稽がつきまとうのもこの作品ならでは。



とりわけ看護婦葉子の白本彩奈。
佇まいだけでなく彼女の声質がとても好ましく、トンネルの出口の光であり菩薩であった。愚行に熱中する男たちの事は理解できず、それでいて優しく包み込む言動と声には母性もあり、安部公房描く所の女性を象徴している感じも受けた。

作品製作過程を聞くと同男性陣キャストで四半世紀前に企画されていたと言う。永瀬正敏、浅野忠信、佐藤浩市が既に中年から初老の域に達しているのも作品に味わいを加えていると思う。川瀬陽太は贅沢使いすぎる。








現代にも通じるテーマを持ちながら、ツールや環境などを現代に置き換える事なく70年代のままとしているのも功を奏していそう。



エンディングではマーラー5番をピアノソロで奏でるなんて憎い事この上無い。









TOHOシネマズシャンテ
2024年9月

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