壊れかた指南 (文春文庫)筒井康隆文藝春秋発売日:2012-04-10ブクログでレビューを見る»
70歳を越えた筒井康隆せんせの到達点とは・・・。
昔のように躍起になって追いまわす事は無くなった筒井せんせ。
それでもファンは読めば満足。
流行作家として多くの作品を生み出してきた老大家。読み始めると、あたかも手抜きをしているんじゃないかと思うほど。名人が寄席に上がった時にルーチンで流すような・・・。
中折れ小説群?
でも「壊れかた指南」なんです。
そこには緻密な計算があるのかもしれません。
当然、殺し合いや、大いなるドタバタ展開になるべきはずのところが、そうはならない。
ところどころ筒井節の片鱗が覗く。そこは、読み手の方も年をとって疲れてきているせいか、返って、白々とした気持ちにもなる。多分、いつも通りそのまま進んだら、それなりに面白いだろうけど、何か古臭さを感じてしまったかもしれない。
実際のプロセスが手抜きであろうと、緻密な計算であろうと、手練れたベテランにしか描くことのできない境地。
放っぽり出されて宙ぶらりんでも、「稲荷の紋三郎」「迷走録」のプロットは堪らない。
いつもながら助走から大きく展開されるドタバタを想像していると、肩透かし。読んでいる方が壊れてきそう。
「大人になれない」のパロッタ君と美人で親切な理解者明子さん。確かに、いつも通りではあるのだけれど・・・。
ウルトラゾーンの治療院を想起してしまったショートショートの「虎の肩凝り」の可愛らしさ。
そして、幾分、食い足りなさを感じたショートショートの後に持ってきた4篇が最高に不気味で恐ろしい。
中でも「耽美者の家」で海外名作を只管読み続ける男女3人。誰もが題名だけは知っている作品。題名さえ知らない作品・・・。実際は読んでいない作品ばかりなので、少しばかり嫉妬を憶える。
思わせぶりなディケンズの「荒涼館」なんて、絶対読みたくなる。
「店じまい」の寂寥
「逃げ道」の解放
まだまだ僕たちには筒井せんせが居るんだ。と嬉しい気持ちになれました。
耄碌する事なく、長生きしてほしいと切に思いました。
70歳を越えた筒井康隆せんせの到達点とは・・・。
昔のように躍起になって追いまわす事は無くなった筒井せんせ。
それでもファンは読めば満足。
流行作家として多くの作品を生み出してきた老大家。読み始めると、あたかも手抜きをしているんじゃないかと思うほど。名人が寄席に上がった時にルーチンで流すような・・・。
中折れ小説群?
でも「壊れかた指南」なんです。
そこには緻密な計算があるのかもしれません。
当然、殺し合いや、大いなるドタバタ展開になるべきはずのところが、そうはならない。
ところどころ筒井節の片鱗が覗く。そこは、読み手の方も年をとって疲れてきているせいか、返って、白々とした気持ちにもなる。多分、いつも通りそのまま進んだら、それなりに面白いだろうけど、何か古臭さを感じてしまったかもしれない。
実際のプロセスが手抜きであろうと、緻密な計算であろうと、手練れたベテランにしか描くことのできない境地。
放っぽり出されて宙ぶらりんでも、「稲荷の紋三郎」「迷走録」のプロットは堪らない。
いつもながら助走から大きく展開されるドタバタを想像していると、肩透かし。読んでいる方が壊れてきそう。
「大人になれない」のパロッタ君と美人で親切な理解者明子さん。確かに、いつも通りではあるのだけれど・・・。
ウルトラゾーンの治療院を想起してしまったショートショートの「虎の肩凝り」の可愛らしさ。
そして、幾分、食い足りなさを感じたショートショートの後に持ってきた4篇が最高に不気味で恐ろしい。
中でも「耽美者の家」で海外名作を只管読み続ける男女3人。誰もが題名だけは知っている作品。題名さえ知らない作品・・・。実際は読んでいない作品ばかりなので、少しばかり嫉妬を憶える。
思わせぶりなディケンズの「荒涼館」なんて、絶対読みたくなる。
「店じまい」の寂寥
「逃げ道」の解放
まだまだ僕たちには筒井せんせが居るんだ。と嬉しい気持ちになれました。
耄碌する事なく、長生きしてほしいと切に思いました。