「よみがえる日本映画 --映画保存のための特別事業費による」
「8時間の恐怖」1957年 日活 監督:鈴木清太郎
水害で列車が立往生した山間の小駅、足止めを食った乗客がたむろし、色々な人がごった返す待合室の傍には一本の手錠でつながれた刑事と殺人犯の森がいた。宿屋のない土地とて一同はバスで次の駅へ出ることになる。しかし行手には山崩れの峠道と八時間の暗夜の行程が待っていた。その上、出発を目前に、二千万円を奪って逃げた二人組の銀行ギャングが、この方面に立回ったという情報が入った。乗客は動揺、バスの人数は半分に減った。残った十四人を乗せバスは不安と恐怖とともに進んだが・・・。
鈴木清順が鈴木清太郎の名で撮った本格サスペンスという触れ込みでしたが、これはとんでもない喜劇仕立てでありました。そこが面白かったので当方としては問題は無いのですが、当時、会社側は激怒したそうです。
やりますねぇ、清順さん。
極限状態における人間のエゴ、本性を描くサスペンス物。意外な人物がエゴばかりでなく次第に協力しあう展開。
元軍医の殺人犯役が金子信雄。暗い過去を持ったクールな凶悪犯も居合わせた乳飲み子の生命を助ける事に勤める。
首尾良く銀行ギャングの若僧をやっつけた元パン助の女(利根はる恵)に促されて語りだす殺人犯の過去。これが、だからどうしたの?という程、同情を買うお話になってない。
それでも感銘して若いツバメ、富夫(中原啓七)を嗾ける愛人(志摩桂子)本ばかり読んでいたけどヒューマニズムな行動に出ていた富夫が思い切った行動に出てしまうのも意外な展開。
良心の代表にような学生運動家(二谷英明)ではあるけれど、終始正義でありながら、実は何の役にも立っていない役どころがとてもよろしい。
車内で「黒い瞳」を合唱させるのは迷惑千万。
「赤の歌なんか歌うな」に
「これはれっきとしたロシアの民謡です!」
「じゃぁ、やっぱり赤じゃないか」
自殺を図った後家さん(村上時枝)を助けるためずぶ濡れになったため、コートの下は女学生に借りたシミーズ1枚。
勝手な行動ばかり取る下衆なサラリーマン(柳谷寛)はキャラクター通りの行動だったか。
狭いバス車内の演劇的描写も面白い。
殺人犯が自分の記事の載った新聞を拾い上げる瞬間の後部乗客たちの様子。
会社社長夫妻(深見泰三、三鈴恵似子)のホールド・アップ。
このご夫妻は揃ってエゴの固まりだったのだけれど、やがて社長の方はヒューマニズムの本性に目覚め協力的になる。
エゴを押し通す女房様に比べて、やっぱり男はだらしない。
サスペンスの中に潜むそこはかとなく漂う笑いの根源。鈴木清順、まったくもって嬉しい問題児。
京橋 フィルムセンター
「8時間の恐怖」1957年 日活 監督:鈴木清太郎
水害で列車が立往生した山間の小駅、足止めを食った乗客がたむろし、色々な人がごった返す待合室の傍には一本の手錠でつながれた刑事と殺人犯の森がいた。宿屋のない土地とて一同はバスで次の駅へ出ることになる。しかし行手には山崩れの峠道と八時間の暗夜の行程が待っていた。その上、出発を目前に、二千万円を奪って逃げた二人組の銀行ギャングが、この方面に立回ったという情報が入った。乗客は動揺、バスの人数は半分に減った。残った十四人を乗せバスは不安と恐怖とともに進んだが・・・。
鈴木清順が鈴木清太郎の名で撮った本格サスペンスという触れ込みでしたが、これはとんでもない喜劇仕立てでありました。そこが面白かったので当方としては問題は無いのですが、当時、会社側は激怒したそうです。
やりますねぇ、清順さん。
極限状態における人間のエゴ、本性を描くサスペンス物。意外な人物がエゴばかりでなく次第に協力しあう展開。
元軍医の殺人犯役が金子信雄。暗い過去を持ったクールな凶悪犯も居合わせた乳飲み子の生命を助ける事に勤める。
首尾良く銀行ギャングの若僧をやっつけた元パン助の女(利根はる恵)に促されて語りだす殺人犯の過去。これが、だからどうしたの?という程、同情を買うお話になってない。
それでも感銘して若いツバメ、富夫(中原啓七)を嗾ける愛人(志摩桂子)本ばかり読んでいたけどヒューマニズムな行動に出ていた富夫が思い切った行動に出てしまうのも意外な展開。
良心の代表にような学生運動家(二谷英明)ではあるけれど、終始正義でありながら、実は何の役にも立っていない役どころがとてもよろしい。
車内で「黒い瞳」を合唱させるのは迷惑千万。
「赤の歌なんか歌うな」に
「これはれっきとしたロシアの民謡です!」
「じゃぁ、やっぱり赤じゃないか」
自殺を図った後家さん(村上時枝)を助けるためずぶ濡れになったため、コートの下は女学生に借りたシミーズ1枚。
勝手な行動ばかり取る下衆なサラリーマン(柳谷寛)はキャラクター通りの行動だったか。
狭いバス車内の演劇的描写も面白い。
殺人犯が自分の記事の載った新聞を拾い上げる瞬間の後部乗客たちの様子。
会社社長夫妻(深見泰三、三鈴恵似子)のホールド・アップ。
このご夫妻は揃ってエゴの固まりだったのだけれど、やがて社長の方はヒューマニズムの本性に目覚め協力的になる。
エゴを押し通す女房様に比べて、やっぱり男はだらしない。
サスペンスの中に潜むそこはかとなく漂う笑いの根源。鈴木清順、まったくもって嬉しい問題児。
京橋 フィルムセンター