Quantcast
Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4203

「闇を横切れ」

$
0
0
「日本のオジサマ 山村聰の世界」

「闇を横切れ」1959年 大映 監督:増村保造

美人ストリッパーの絞殺死体の傍らに倒れていた革新党候補者。政界のスキャンダルに報道機関は色めき立つが、西部新聞の石塚だけは上司の高沢の支持で独自の調査を始め・・・。敏腕編集局長高沢を演じた山村聰のカッコよさに痺れる。音楽を一切使わず、最初と最後に山村が口笛で「ラ・マルセイエーズ」を吹く趣向が印象的な、サスペンスの佳作。

まさに日本のオジサマ。そのようなイメージが強烈にある山村聰に関して、自分の中では下手すると宇津井健と同様に苦手の部類に封印されていたかもしれない。
それを克服するきっかけとなったのは「瘋癲老人日記」での怪演。あの映画は谷崎の原作と比すとかなり見劣りするけれど、山村聰の爺さんは最高に良かったと記憶する。
今回の特集に何故ラインアップされていないのだと憤った。ラインアップされたからといって再鑑賞に足を運んだかと言えばそうでもないんだけどね。

今回の山村聰特集は3本鑑賞することができたわけだが、これはある種、目からうろこの体験。オジサマだけでは留まらない役者山村聰の懐の深さを堪能。わずか3本だけだけれどね・・・。

本作では東京から九州に赴任して西部新聞を立て直した出来る男、高沢局長。なんですかこのカッコ良さは、只者ではありません。
対比として若き熱血正義漢の記者、川口浩の若さまっしぐらがあり、その川口浩は局長に憧れていて、局長は彼に自分の若かった頃を投影している。吸いも甘いも噛み分けた大人の男のカッコ良さ、たんに正義だけでは世の中成功しない。社のためには時には悪の力を利用して・・・
劇中ちょっと川口浩同様に幻滅しそうになるのだけれど、最後の決着、落とし前の付け方がもう本当に痺れちゃう。
この時代に「上司にしたい芸能人」なんてのがあれば迷わず一票でしょう。私はやだけど。

これって驚くのは増村保造初期作品なんですよね。女のドロドロをねっちっと描く事にかけちゃ右に出るものが居ないんじゃないかって感じだけれど、この社会派サスペンスドラマをまったく飽きさせずに見せちゃう力量。
もちろん増村らしさを覗かせる面もちゃんとあって、それが川口浩と叶順子の純愛。
叶順子は「鍵」などで代表されるように、どこか不細工さが魅力となる個性的な美人女優だけれど、ここでは不細工さあまり前面に出ていない。当初、取材に応じる不貞腐れた感じはあるものの、川口浩に魅かれるようになってからは、もう可愛い人になってる。
影のある女の孤独感とか良く出た好演でした。
格子模様のスプリングコートも素敵なストリッパー役でステージでのダンスシーンもあるけれど、そこは1959年、露出度を期待しても無理であるのがチト残念ですが・・・

「ラ・マルセイエーズ」の口笛もカッコ良い山村聰だけれど、ラストに関しては汚職の悪人組織、高沢を暗殺しても何の解決にもならんじゃないの・・・。これでは単に私怨による殺し屋派遣。
最後にツッコミ入れたくなるのはご愛嬌。

浜村純の市長が合ってんだか合ってないんだか、多分合ってないんだけども味はあります。蝶ネクタイ。

シネマヴェーラ渋谷

にほんブログ村 映画ブログへ blogram投票ボタン


Viewing all articles
Browse latest Browse all 4203

Trending Articles