「リアリティのダンス」EO18版 2013年 智・仏 監督:アレハンドロ・ホドロフスキー
LA DANZA DE LA REALIDAD
ウクライナからチリの田舎町トコピージャに移住してきたある一家。威圧的な雰囲気の父、歌うように話す母と子を中心に、彼らが織りなす暮らしを描きだす。
予告通りUPLINKにてEO18版鑑賞。
「リアリティのダンス」R15+版
やはりこの作品は「ホドロフスキーのDUNE」を観た後だからか、監督の人となりに触れた後だからこそか、傑作と呼ぶに吝かでない心持ちになるのです。
監督自身「ホドロフスキーのDUNE」が刺激になっての久々の映画制作ですからね。
例えば一本の作品としてまとまりに難があったりもするんだけれど、そういう事を度外視してグイグイ物語に引き込まれる不思議な力。
「ホドロフスキーのDUNE」で熱弁をふるっていたお金についての視点で始まるオープニングがその後全体にどのうような関わりがあるのか?
前半部を観れば明らかにホドロフスキー自身である少年の物語のように思えるのに、いつの間にか作品の主はお父ちゃんハイメ(ブロンティス・ホドロフスキー)になっているし・・・
サーカスを舞台にかたわ者の取り扱い方とかホドロフスキー節が健在な前半部。
音楽の使い方とか、まるでフェリーニの作品の作品を観てるような気分にもなる。見ながら寡作のホドロフスキーを制覇する前にフェリーニの未見作を観るべきだろうなんて思ったりして。
それにしても山へ向かう黒死病集団の絵、トコビージャの風景。迫りくる物がありますな。
色使いも本作の魅力。金髪巻き毛に水色の服、赤い靴。ラストの紫の船。
両親の言動から、ホドロフスキーの宗教感、哲学の一片に触れる事ができるのも興味深い。
さて、母親サラ役のオペラ歌手パメラ・フローレスである。
一人オペラで劇中歌い続ける彼女は、最初のうちはちょっと寒いギャグだなと冷ややかに見ていたんだが、これが実に効果的で次第次第に魅入ってしまうのです。
ホドロフスキーの少年時代の作品であり父の大統領暗殺の行く末の物語であり、家族の再生の物語である本作の成功はこのパメラ・フローレスのキャスティングとオペラであると思います。
巨乳、豊満なる肉体、聖なる声。
聖水シーンこそは最もEO18で観たかったところ。
まったく猥褻ではありません。
ペイントイットブラックで闇に溶ける母。
愛する夫の旅立ちを見送った後の断髪シーン。
ユダヤ系で迫害された息子に透明になれば良いと諭し、自ら全裸で酒場を徘徊する後姿。
指が麻痺した夫を回復させるため、スターリンとイバニェス大統領とハイメ自身の肖像を撃たせるシーン。
ホドロフスキーはじめ男は皆、マザコンなのよ。母性への回帰。
家族の再生。終盤に息づく癒し、赦し、に圧倒的な感動を憶えてしまう。まんまとホドロフスキーマジックに引っ掛かってるな。
もう一つ見せ場を追加しておくと、これは手紙を読むことだけで実際の描写はないのだけれど、女乞食が 記憶を失った を拾ってからの幸福な時間。昼の施しと夜の性を享楽した女乞食がせつない。
少年の背後に現れる現在のホドロフスキー翁。そのナレーションの優しい語り口も愛おしい。
音楽としては「ダイナマイトは優しく無い」と手足吹っ飛ばされた人たちが歌う曲が実に良いです。
「サンタサングレ」に続くストーリー性のある作品であるけど、「サンタサングレ」が難解でないための不満を残した事に対して本作はそのような消化不良は起こさなかった。あきらかにホドロフスキーの傑作であると思う・・・
しかし、本作をホドロフスキーの最高傑作とは言いたくない。
それは「ホドロフスキーのDUNE」を観ているから。
彼は、きっとこの程度で満足し、天国に行ったりはしない。もっと凄い作品を作らなければ天に召される事は無いと思っている事でしょう。
なにせ、その挑戦のため300歳まで生きたいと言ってるおっさんなんですから。
あ、それと、やっぱり彼の監督する「DUNE」は実現しなかった事に価値があると思えたし、実現するわけねーよな、とも思った。
両方観る必要は無いです。観るならEO18版です。ボカシを入れる愚かさが良く解ります。
1週間に2回観たけど3回目を観ても良いのではと思わせる物がある・・・、行かないけどね。
渋谷 UPLINK
LA DANZA DE LA REALIDAD
ウクライナからチリの田舎町トコピージャに移住してきたある一家。威圧的な雰囲気の父、歌うように話す母と子を中心に、彼らが織りなす暮らしを描きだす。
予告通りUPLINKにてEO18版鑑賞。
「リアリティのダンス」R15+版
やはりこの作品は「ホドロフスキーのDUNE」を観た後だからか、監督の人となりに触れた後だからこそか、傑作と呼ぶに吝かでない心持ちになるのです。
監督自身「ホドロフスキーのDUNE」が刺激になっての久々の映画制作ですからね。
例えば一本の作品としてまとまりに難があったりもするんだけれど、そういう事を度外視してグイグイ物語に引き込まれる不思議な力。
「ホドロフスキーのDUNE」で熱弁をふるっていたお金についての視点で始まるオープニングがその後全体にどのうような関わりがあるのか?
前半部を観れば明らかにホドロフスキー自身である少年の物語のように思えるのに、いつの間にか作品の主はお父ちゃんハイメ(ブロンティス・ホドロフスキー)になっているし・・・
サーカスを舞台にかたわ者の取り扱い方とかホドロフスキー節が健在な前半部。
音楽の使い方とか、まるでフェリーニの作品の作品を観てるような気分にもなる。見ながら寡作のホドロフスキーを制覇する前にフェリーニの未見作を観るべきだろうなんて思ったりして。
それにしても山へ向かう黒死病集団の絵、トコビージャの風景。迫りくる物がありますな。
色使いも本作の魅力。金髪巻き毛に水色の服、赤い靴。ラストの紫の船。
両親の言動から、ホドロフスキーの宗教感、哲学の一片に触れる事ができるのも興味深い。
さて、母親サラ役のオペラ歌手パメラ・フローレスである。
一人オペラで劇中歌い続ける彼女は、最初のうちはちょっと寒いギャグだなと冷ややかに見ていたんだが、これが実に効果的で次第次第に魅入ってしまうのです。
ホドロフスキーの少年時代の作品であり父の大統領暗殺の行く末の物語であり、家族の再生の物語である本作の成功はこのパメラ・フローレスのキャスティングとオペラであると思います。
巨乳、豊満なる肉体、聖なる声。
聖水シーンこそは最もEO18で観たかったところ。
まったく猥褻ではありません。
ペイントイットブラックで闇に溶ける母。
愛する夫の旅立ちを見送った後の断髪シーン。
ユダヤ系で迫害された息子に透明になれば良いと諭し、自ら全裸で酒場を徘徊する後姿。
指が麻痺した夫を回復させるため、スターリンとイバニェス大統領とハイメ自身の肖像を撃たせるシーン。
ホドロフスキーはじめ男は皆、マザコンなのよ。母性への回帰。
家族の再生。終盤に息づく癒し、赦し、に圧倒的な感動を憶えてしまう。まんまとホドロフスキーマジックに引っ掛かってるな。
もう一つ見せ場を追加しておくと、これは手紙を読むことだけで実際の描写はないのだけれど、女乞食が 記憶を失った を拾ってからの幸福な時間。昼の施しと夜の性を享楽した女乞食がせつない。
少年の背後に現れる現在のホドロフスキー翁。そのナレーションの優しい語り口も愛おしい。
音楽としては「ダイナマイトは優しく無い」と手足吹っ飛ばされた人たちが歌う曲が実に良いです。
「サンタサングレ」に続くストーリー性のある作品であるけど、「サンタサングレ」が難解でないための不満を残した事に対して本作はそのような消化不良は起こさなかった。あきらかにホドロフスキーの傑作であると思う・・・
しかし、本作をホドロフスキーの最高傑作とは言いたくない。
それは「ホドロフスキーのDUNE」を観ているから。
彼は、きっとこの程度で満足し、天国に行ったりはしない。もっと凄い作品を作らなければ天に召される事は無いと思っている事でしょう。
なにせ、その挑戦のため300歳まで生きたいと言ってるおっさんなんですから。
あ、それと、やっぱり彼の監督する「DUNE」は実現しなかった事に価値があると思えたし、実現するわけねーよな、とも思った。
両方観る必要は無いです。観るならEO18版です。ボカシを入れる愚かさが良く解ります。
1週間に2回観たけど3回目を観ても良いのではと思わせる物がある・・・、行かないけどね。
渋谷 UPLINK