「集金旅行」

「蘇る中村登」

「集金旅行」1957年　松竹　監督：中村登

おんぼろアパートに住む良平と千代が借金と慰謝料取立ての旅に出て･･･。
東京から中国地方、そして徳島へと続く二人の珍道中を描く。取り立てられ役を演じるベテラン俳優のノリノリ演技と岡田茉莉子のコメディエンヌぶり。そして地方の美しい風景と祭りが楽しめるロードムービーにして傑作コメディ。

今回の中村登特集では、未見の1950年代作品で岡田茉莉子の美貌を拝ませていただこうという魂胆。
これ、見たかったんよ。やっと念願叶いました。

1957年という美の絶頂期だけれども本作での岡田茉莉子さんは美貌よりも、その役のキャラとしての魅力で一杯。
謎の女、悪女のようでいてその実は･･･。上品な台詞を語尾がクイッと上がる甘えた口調で。佐田啓二との会話を聞いてるだけで、見てるほうはデレデレだ。



取り立てられ役、伊藤雄之助の山口弁は一歩間違えれば、日本エレキテル連合の細貝氏みたで良いね。
ズーズーしい産婦人科医、トニー谷。岡田茉莉子の本当に嫌そうな素振りが面白い。
名優、西村晃は狂気と人情の二面を見せてくれる。

途中、ヤキモキするのはラブコメの常。蚊帳のシーンで誘ってくる岡田茉莉子さん、たまりません。
佐田啓二の良平は二枚目の紳士なんだけど、「意気地無し」まで言われてます。
何をやってもうまくいかないダメ男。背中のチャック上げも壊してしまうダメっぷりなんだけど、佐田啓二がやるとちっともカッコ悪くない。これはズルい。
いがみ合ってた2人が最後にはくっつきハッピーエンドとたかを括っていたら、驚きのラスト。謎の女、千代は押しの強い男が好きなんよね。エロシーンこそありませんが憎い相手の押しに負けちゃう岡田茉莉子。エロシーンを想像するとウヒヒヒヒって、アホか！

徳島の親分、アチャコに、まんまと持ってかれて、最後に発する佐田啓二の決め台詞。
それまでクスクス笑いがここで爆笑。
振られてもカッコ良いのはズルい。

岡田茉莉子のコスプレも楽しめる本作。
キリスト教の旦那に取り立てる際の年増の着物コスプレ。
派手なワンピで葬儀に出席。お焼香時のお背中露出。

極めつけは徳島での岡田茉莉子ちゃんの阿波踊りの可憐さ。これは必見ですぞ。




冒頭に丘の上の競輪場が出てきます。花月園でしょうか。

シネマヴェーラ渋谷