「新文芸坐シネマテーク 〜アブデラティフ・ケシシュ〜」
「クスクス粒の秘密」2007年 仏 監督:アブデラティフ・ケシシュ
LA GRAINE ET LE MULET
港町セートで暮らす60代のチュニジア移民スリマーヌは港湾労働者として働いてきたが、押し寄せるリストラの波に逆らえず退職を決意。古い船を買い取って船上レストランをはじめようとするが、開店パーティ当日、予定していたクスクスが届かず……。チュニジア系フランス人家族がレストラン開店に向けて奔走する。
いやぁ、アブデラティフ・ケシシュ初体験にしてKOされました。
開巻早々、船上での情事で熟尻スパンキングが出てきて「え、そういう作品なの?」と個人的にはとても良い方向に予想が外れて行くわけですが、このどんどんズレて行く感覚が面白い。
チュニジア系のアラブ人という物珍しさ、それだけでエスニックな魅力に溢れた絵なんだけど、寄りすぎのカメラが捉えるアラブの男女。みなさん濃ゆ〜い顔は、ある意味お下劣。
大家族の団欒。幼い頃から近場に親戚が居ない環境で育った自分は、ただでさえこういうのが苦手。それに加えて登場人物のインパクト半端ないわけで、特に勝気な女性陣、なかなかビビらせてくれます。対してヘタれな男性陣。
あちらの習慣でクスクスはスプーンも使うが時には手掴み。口内に食べ物を見せながら下品にしゃべりまくる。それをドアップで捉えるんですから・・・
主人公であるとっつぁまスリマーヌ(アビブ・ブファーレ)はあくまで寡黙。周囲の会話で彼の人生を浮かび上がらせる。
ドキュメンタリー風の見せ方で決して美しくない、性格の悪さや人間の醜さをバーンと打ち出してくるんだけど、何故か嫌な気持ちにはならない。逆に美しささえ感じる。人物の描き方が半端なく上手いからなのだと思う。
離婚した父スリマーヌの新しい愛人と連れ子。本当の息子娘との間の静かな軋轢。
何といっても連れ子のリム(アフシア・エルジ)が良いのです。
どうしたってラストのポッコリおなかのベリー・ダンスが作品のハイライトで目が行きますが、懸命に義父の開業を助ける健気な姿。船上パーティーに意地を張って出ないという母親を説得する際の実娘への対抗心からくる涙とか。綺麗です。
ポッコリおなかのベリーダンスでの汗、上気した表情、官能的な眼差し。出腹がこんなにも魅力的と思えるのも珍しい。
銀行に融資をお願いしに行く際のパンツルックからタイトスカートへの早変わりも良いです。
実娘の方も末娘の リム母娘に対するあけすけな嫌悪とか・・・。
それに女癖の悪い長男とヒステリー嫁との修羅場。おとなしそうな嫁の兄が、ぽそっと妹を焚きつけるのを「やめてくれ」と諭すスリマーヌ。
この不条理感を伴うユーモアも捨てがたくって大好き。
次男の無責任ぶりな態度とかも絶妙。これってアラブ人の顔からくる印象と相まってる。
クスクスが行方不明になって大ピンチ。
スリマーヌは悪ガキにバイク盗まれ、もてあそばれてる。その最中も官能的ベリー・ダンスでつないでるリム。
いつ果てることも無いイスラム音楽の生バンド。
はてさて、どうなる事か。娘の献身的ダンスに意地を張っていた母親の行動がまた笑える。この人の悪評高いクスクスが出てきたらどうなるんだよ。というハラハラ感。
ラストはそういった予想を一切裏切る終わり方なんだけど、これが絶妙な切れ場なんだよね。
エンドロールで鳴り続ける生バンド演奏が余韻を残し・・・・。
あと、小便たれの2歳女児がめちゃくちゃ可愛かった。
新文芸坐の新企画「文芸坐シネマテーク」は上映の後、講義がある。講義というのに嫌な予感はあったんだけれど、やはり、これは余計でした。
参考になる部分が無いわけじゃないけど、映画を研究したりするよりも単純に楽しみたい方なので、特に今回のように良い作品に出合えた後では逆効果。何か専門用語でアンチ・なんたらかんたら言っててなるほどと思ったけど、覚える気もないのでもう忘れてる。先生の話ぶりも流暢だけれど芸になってないのが辛い。
次回、この企画に来る事があったら、終映後の講義はサボってとっとと帰ろう。そもそも講義だとか授業というのはサボるもんでしょ。
3時間のレズ物に戦いて敬遠していたけど「アデル、ブルー」も見たくなってきた。新文芸坐の上映はもう終わっちゃうので観れん。残念!
新文芸坐
「クスクス粒の秘密」2007年 仏 監督:アブデラティフ・ケシシュ
LA GRAINE ET LE MULET
港町セートで暮らす60代のチュニジア移民スリマーヌは港湾労働者として働いてきたが、押し寄せるリストラの波に逆らえず退職を決意。古い船を買い取って船上レストランをはじめようとするが、開店パーティ当日、予定していたクスクスが届かず……。チュニジア系フランス人家族がレストラン開店に向けて奔走する。
いやぁ、アブデラティフ・ケシシュ初体験にしてKOされました。
開巻早々、船上での情事で熟尻スパンキングが出てきて「え、そういう作品なの?」と個人的にはとても良い方向に予想が外れて行くわけですが、このどんどんズレて行く感覚が面白い。
チュニジア系のアラブ人という物珍しさ、それだけでエスニックな魅力に溢れた絵なんだけど、寄りすぎのカメラが捉えるアラブの男女。みなさん濃ゆ〜い顔は、ある意味お下劣。
大家族の団欒。幼い頃から近場に親戚が居ない環境で育った自分は、ただでさえこういうのが苦手。それに加えて登場人物のインパクト半端ないわけで、特に勝気な女性陣、なかなかビビらせてくれます。対してヘタれな男性陣。
あちらの習慣でクスクスはスプーンも使うが時には手掴み。口内に食べ物を見せながら下品にしゃべりまくる。それをドアップで捉えるんですから・・・
主人公であるとっつぁまスリマーヌ(アビブ・ブファーレ)はあくまで寡黙。周囲の会話で彼の人生を浮かび上がらせる。
ドキュメンタリー風の見せ方で決して美しくない、性格の悪さや人間の醜さをバーンと打ち出してくるんだけど、何故か嫌な気持ちにはならない。逆に美しささえ感じる。人物の描き方が半端なく上手いからなのだと思う。
離婚した父スリマーヌの新しい愛人と連れ子。本当の息子娘との間の静かな軋轢。
何といっても連れ子のリム(アフシア・エルジ)が良いのです。
どうしたってラストのポッコリおなかのベリー・ダンスが作品のハイライトで目が行きますが、懸命に義父の開業を助ける健気な姿。船上パーティーに意地を張って出ないという母親を説得する際の実娘への対抗心からくる涙とか。綺麗です。
ポッコリおなかのベリーダンスでの汗、上気した表情、官能的な眼差し。出腹がこんなにも魅力的と思えるのも珍しい。
銀行に融資をお願いしに行く際のパンツルックからタイトスカートへの早変わりも良いです。
実娘の方も末娘の リム母娘に対するあけすけな嫌悪とか・・・。
それに女癖の悪い長男とヒステリー嫁との修羅場。おとなしそうな嫁の兄が、ぽそっと妹を焚きつけるのを「やめてくれ」と諭すスリマーヌ。
この不条理感を伴うユーモアも捨てがたくって大好き。
次男の無責任ぶりな態度とかも絶妙。これってアラブ人の顔からくる印象と相まってる。
クスクスが行方不明になって大ピンチ。
スリマーヌは悪ガキにバイク盗まれ、もてあそばれてる。その最中も官能的ベリー・ダンスでつないでるリム。
いつ果てることも無いイスラム音楽の生バンド。
はてさて、どうなる事か。娘の献身的ダンスに意地を張っていた母親の行動がまた笑える。この人の悪評高いクスクスが出てきたらどうなるんだよ。というハラハラ感。
ラストはそういった予想を一切裏切る終わり方なんだけど、これが絶妙な切れ場なんだよね。
エンドロールで鳴り続ける生バンド演奏が余韻を残し・・・・。
あと、小便たれの2歳女児がめちゃくちゃ可愛かった。
新文芸坐の新企画「文芸坐シネマテーク」は上映の後、講義がある。講義というのに嫌な予感はあったんだけれど、やはり、これは余計でした。
参考になる部分が無いわけじゃないけど、映画を研究したりするよりも単純に楽しみたい方なので、特に今回のように良い作品に出合えた後では逆効果。何か専門用語でアンチ・なんたらかんたら言っててなるほどと思ったけど、覚える気もないのでもう忘れてる。先生の話ぶりも流暢だけれど芸になってないのが辛い。
次回、この企画に来る事があったら、終映後の講義はサボってとっとと帰ろう。そもそも講義だとか授業というのはサボるもんでしょ。
3時間のレズ物に戦いて敬遠していたけど「アデル、ブルー」も見たくなってきた。新文芸坐の上映はもう終わっちゃうので観れん。残念!
新文芸坐