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Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
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「NO ノー」

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「NO ノー」2012年 智・米・墨 監督:パブロ・ラライン

長らく軍事独裁を強いてきたアウグスト・ピノチェト政権の信任継続延長を問う国民投票が迫る、1988年のチリ。広告マンのレネ・サアベドラ(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、反独裁政権を掲げる信任継続反対派の中心人物である友人ウルティア(ルイス・ニェッコ)から仕事を依頼される。それは、政権支持派と反対派双方に許されている、1日15分のテレビ放送を用いたPRに関して協力してほしいというものだった。レネの作るCMは徐々に国民の心をつかんでいくが、強大な力を持つ賛成派陣営の妨害に悩まされる。

政治的な映画ってほとんど観ないと思うんですけど、事、それが中南米の事となると話は別でんがな。
曲がりなりにも中南米を研究する会なんかに所属していたので詳しくはないけど、チリ現代史の予備知識はすこーしはある。あくまですこーしね。
あまり馴染みの無い方はWikipediaで良いのでさらっておきましょう。

ピノチェト政権が崩れる歴史的瞬間・・・
といってもこれはCM製作者による政治映画というよりむしろビジネス映画。プロ魂。
これが、想像していた以上に面白い。
当時の本物のCM自体。それを見ているだけでも面白い。現代の日本から見れば、それはあまりに古臭かったりもするのだけれど、時代と当時のチリの状況を考え少し大目に見てあげる必要もあるでしょう。
そういえば世界面白CM特集なんていう番組が好きだったもんね。

最近、チリのCMといえばワールドカップのCMがYOU TUBEで話題になったりして、あれは良かったですしね。

なんと、当時のCFと画質を合わせるために古いビデオカメラと四分三テープを探してきて撮ってるという凝りよう。しぶさんテープって懐かしい響きですね。久しぶりに聞いた。
今ならCG画像処理で画質を落とす事も可能なような気もするけれど、そういう手を選ばない拘りが好感持てる。

それに加えてお話としての展開が面白い。
与えられた15分の時間をいかにして使うか。負けを承知の出来レースの中にあって啓蒙ができれば充分と思っていたNo派。
しかし、レネのマーケティングに裏打ちされた、「こんなんじゃ勝てない、もっと楽しくしなくちゃ」
出来レースと思っていてもやるからには勝たなければ意味がない。
ピノチェトからひどい目に合ってきた左派の人たちはコーラのCMみたいなものを受け入れる事ができない。
ところが、レネの制作するCMは確実に民衆の心を掴んでいく。
勝利を確信していた政権側(Si側)も徐々に焦りが出て、妨害工作、パロディによる中傷CMをぶつけてくる。しかもそれってCM会社の上司だし。
子供の生命まで脅かされそうになり次第に孤立していくレネ。
それでもNo派勝利に向けて信念を貫く。

広告マンが有事、いざという時にどのような態度で臨むのか。
観ていてハラハラスリリング。
Si派のパロディCM。楽しいCMにテロリストを登場させていたり、かなり怖い。

最高なのは夫婦のベッドでのSi=No合戦。
「ねぇ、いいじゃないの、いいじゃないの」
「ダメよ!ダメダメ!」「No!」
これがレネの方のCM。面白いよね。

でも、対抗するSi派の方が当然happyに見える。

CM合戦という意味ではどちらが上かというと微妙な感じ。中傷CMに利は無いかもしれないが。
やはりNo派がピノチェト政権への復讐心の表現から未来志向にを目指したレネの戦略により先行逃げ切ったって感じなんでしょうか。

上辺だけでも十分面白いんだけれど、これがけっこう奥深いテーマをはらんでいて、現在の日本のマスコミの事まで思いを広げる事にも・・・
チリの政情でいえば、No派は勝利を手にして歓喜するのですが、喜ぶのはまだちょっと早いんよね。

レネのガエル・ガルシア・ベルナルがとってもカッコ良く、チャーミング。
良く意味が解らないんですが、スケボーでチリの街を走るシーンが良かったな。

これってラライン監督のチリ3部作の最終らしいです。前の2編も上映してほしいです。つまらないのかしら?

上映館が少ないせいもあってか、けっこうお客さんは入ってました。観たい人は来るよね。
多くの人に見てもらいたい作品。地味〜な感じは否めないけど興味があるなら見て損は無いですね。



ヒューマントラストシネマ有楽町

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