「日本映画の至宝 加東大介 The Great Actor」
「鬼火」1956年 東宝 監督:千葉泰樹
ガスの集金人である忠七は優秀だが女性にもてず、いつも通り過ぎる女性をじろじろと見ていた。忠七は同僚から集金が難しいと言われた焼け跡の一軒家を訪れる。出てきたのは若妻のひろ子で、寝たきりの夫に薬を飲ますことができなくなるので、ガスを止めないでほしいと懇願された。よれよれの着物に身を包んだひろ子に欲情した忠七は、ガスを止めない代わりに体を差し出せと要求するが・・・
加東大介という俳優も子供の頃テレビで見て、あのやたら大きくて丸い顔に対する恐怖感があり、いくら気のいいおじさんの役であっても苦手でした。そんなトラウマももうすっかり拭い去られてるはずだけれど、やっぱり今まであんまり観る機会が無かったんですね。
時代劇が多いというのもあるけれど。本作はそんな加東大介の初主演作だとの事。
吉屋信子の原作は怪談だそうで、それを千葉泰樹が映画化したもの。なんと上映時間45分と短い中篇。
当時はSPとか言ってこのような短編が多く作られ2本立てで上映していたんだそうな。
阿佐ヶ谷でも以前SP映画特集をやっていて、結局当時は観にこれなかったけれど、そろそろ再企画でやってくれないかしら。
45分たった1本でもラピュタ通常価格(会員で800円)でもまったく問題無しの大傑作。
尤もこの45分1本で1800円取られたら、そりゃあ愚痴りたくもなるだろうけれど・・・
ガス集金人の加東大介の仕事ぶりを見せる前半部のいくつかのエピソードで、このキャラクターの背景が見事に浮き上がる。
真面目に地道に働いてはいるが安月給で嫁ももらえない。ぐずぐずしていると頭が禿げてくると心配しているモテない男。童貞かどうかは兎も角、素人童貞の可能性は高い。
中村伸郎と女中の情事をついつい出来心で覗いてしまったのが発覚してとっちめられたり、同僚がうまい事やってご婦人を食べちゃった話を聞かされ、逆上せてきたところで津島恵子の若妻ひろ子に出会う。
よく考えれば貧乏に付け込んで、随分阿漕な事をしているんだが、本人は相当浮かれていて、悪気がまったくないどころか貧困を救ってやる善行くらいに思っているところが良くって、これはそれまでの加藤大介のキャラと演技に拠る所大でしょう。
銭湯でほとんど「延陽伯」と「湯屋番」を合わせたような場面も愉快。
鑑賞中はまったく気づかなかったのだけれど、この空想シーン(このシーンが無ければ美人女優津島恵子はあまりにも悲しい)での彼女の着物のあわせが左前になっていたらしい。そんな事もあり、あの若妻は会ったときから既に幽霊だったのではという怪談解釈も可能だけれど、そこまでは考えないでもよろしかろう。患った宮口精二と津島恵子。貧乏夫婦の悲しい会話によって物語の説得力もグンと上がっている事なんだし。
怪談要素としてはぶら下がった津島恵子の脇のガスコンロの炎(鬼火)だけで充分ですもの。
当時の見事なまでにな~んにも無い東京の川沿い風景。土手でのアイスクリン売りなども興味深い。
ラピュタ阿佐ヶ谷
「鬼火」1956年 東宝 監督:千葉泰樹
ガスの集金人である忠七は優秀だが女性にもてず、いつも通り過ぎる女性をじろじろと見ていた。忠七は同僚から集金が難しいと言われた焼け跡の一軒家を訪れる。出てきたのは若妻のひろ子で、寝たきりの夫に薬を飲ますことができなくなるので、ガスを止めないでほしいと懇願された。よれよれの着物に身を包んだひろ子に欲情した忠七は、ガスを止めない代わりに体を差し出せと要求するが・・・
加東大介という俳優も子供の頃テレビで見て、あのやたら大きくて丸い顔に対する恐怖感があり、いくら気のいいおじさんの役であっても苦手でした。そんなトラウマももうすっかり拭い去られてるはずだけれど、やっぱり今まであんまり観る機会が無かったんですね。
時代劇が多いというのもあるけれど。本作はそんな加東大介の初主演作だとの事。
吉屋信子の原作は怪談だそうで、それを千葉泰樹が映画化したもの。なんと上映時間45分と短い中篇。
当時はSPとか言ってこのような短編が多く作られ2本立てで上映していたんだそうな。
阿佐ヶ谷でも以前SP映画特集をやっていて、結局当時は観にこれなかったけれど、そろそろ再企画でやってくれないかしら。
45分たった1本でもラピュタ通常価格(会員で800円)でもまったく問題無しの大傑作。
尤もこの45分1本で1800円取られたら、そりゃあ愚痴りたくもなるだろうけれど・・・
ガス集金人の加東大介の仕事ぶりを見せる前半部のいくつかのエピソードで、このキャラクターの背景が見事に浮き上がる。
真面目に地道に働いてはいるが安月給で嫁ももらえない。ぐずぐずしていると頭が禿げてくると心配しているモテない男。童貞かどうかは兎も角、素人童貞の可能性は高い。
中村伸郎と女中の情事をついつい出来心で覗いてしまったのが発覚してとっちめられたり、同僚がうまい事やってご婦人を食べちゃった話を聞かされ、逆上せてきたところで津島恵子の若妻ひろ子に出会う。
よく考えれば貧乏に付け込んで、随分阿漕な事をしているんだが、本人は相当浮かれていて、悪気がまったくないどころか貧困を救ってやる善行くらいに思っているところが良くって、これはそれまでの加藤大介のキャラと演技に拠る所大でしょう。
銭湯でほとんど「延陽伯」と「湯屋番」を合わせたような場面も愉快。
鑑賞中はまったく気づかなかったのだけれど、この空想シーン(このシーンが無ければ美人女優津島恵子はあまりにも悲しい)での彼女の着物のあわせが左前になっていたらしい。そんな事もあり、あの若妻は会ったときから既に幽霊だったのではという怪談解釈も可能だけれど、そこまでは考えないでもよろしかろう。患った宮口精二と津島恵子。貧乏夫婦の悲しい会話によって物語の説得力もグンと上がっている事なんだし。
怪談要素としてはぶら下がった津島恵子の脇のガスコンロの炎(鬼火)だけで充分ですもの。
当時の見事なまでにな~んにも無い東京の川沿い風景。土手でのアイスクリン売りなども興味深い。
ラピュタ阿佐ヶ谷