「KIHACHI OKAMOTO RETROSPECTIVE 岡本喜八監督特集」
「英霊たちの応援歌 最後の早慶戦」1979年 東宝 監督:岡本喜八
昭和18年に行われた最後の早慶戦と、学徒出陣して特攻隊員となった選手たちのその後を描く、当時の写真やフィルム映像を折り込みながら淡々と描かれる彼らの姿が、心から野球を愛した若者たちの命を奪っていく戦争の惨さを浮かび上がらせる。
年末年始の野球映画観賞。結局、重松清のやつはロードショー公開時に行くことが無く、パス。代わりにこちら、岡本喜八作品に切替です。
28年前よりも72年前の方が興味の対象としては勝っていますからね。
これは野球映画というよりも最後の早慶戦後に特攻隊として戦死して行った学生運動部諸君の戦争映画。となると岡本喜八ですから、戦争映画ったて一介のお涙ちょうだい悲話になんていたしません。
「独立愚連隊」にてそれまで、メッセージ性の高かった戦後の戦争映画を純粋な娯楽作品に仕上げた(当時は相当賛否別れた事でしょう)喜八ちゃんですから。
実話を元にしているので、それなりのメッセージは感じることはできますが、あくまで娯楽性が勝っているのが良いです。
突撃命令の出た晩に特攻から直掩隊任務へ変更させられた早稲田・秋山捕手(早実のおぼっちゃん)を中心とした群像劇として良く出来た作品。
永島敏行のいかにもスポーツ馬鹿ぶりの明るさは適役。このキャラでもって逆に悲劇さが伝わってきたりもしますが。
六大学の登場人物に必ず出身中学のスーパーが出るところも大学野球として正しい在り方。
市岡中学の主将や米子中学、早稲田実。岐阜商の三羽烏とか。
特攻で消えていったのは野球部だけではありません、相撲、柔道、スキー・・・。専修からはラグビー部員が1名、散っておりましたし、なんと落研部員まで居る。山田隆夫が良い仕事してます。
プロの噺家さんは多く戦争に行き、誰一人戦死せずに帰ってきたという快挙がネタになっていますが、やはり学生落語研究会の料簡はチト違うようで、落研で予科練とは・・・(実際には居たんでしょうが)
戦局不利な軍隊の中にあって、きれいごとすぎるのかもしれないけれど、海軍でのちょっといい粋なはからいが随所に見えるのも素敵です。
重症を負った母親に一目あってこいと上陸を許可された三上投手の走れメロスな展開(時間に戻らなければ直掩隊であり親友の秋山が代わりに突っ込む事になってます)とか、まんじゅうこわいの落ちを待ってる秋山中尉とか。
岡本作品でお馴染みの名優が少しづつ出てきて良い仕事もしております。特に田中邦衛の笠間上飛曹の教官ぶりは見事。
女優陣も良いです。お嫁さんにしたい女優といえば当時の竹下景子。野球から芝居の世界へ移った法政の名一塁手本田(本田博太郎)との恋と彼の肺病病みで除隊になった本田の弟とのエピソード。
本田にそっと渡したスカーフが何気に法政カラーなところも良い。
そして秋山家の照ちゃん。女中から、最後は女郎になった大谷直子のせつなさ。
やはり、この時代の大谷直子は素晴らしく良いです。いや、大谷直子で一番良いかも、というぐらいです。
エンドロールに役所広司の名を見つけましたが、さすがに解りませんでした。
若者がそれぞれ、彼女や母親に魂を託して特攻に出る中、慶応コンビが黒板に描かれた銀座の街の店名を埋めることに躍起になって魂を燃やし尽す姿。こういう描き方ができる岡本喜八監督はやっぱり好きだなぁ。
冒頭の現代(当時の)六大学野球シーンが出ます、昭和54年、早稲田には岡田彰布(北陽)三谷志郎(今治西)慶応にはサイクル男の玉川寿(土佐)などが居た頃です。さすがに選手の姿は特定できないように映していますが、ひょっとして、なんて考えるのも楽しい。当時の神宮スタンドの学生風景が懐かしい。
実際に最後の早慶戦開催に尽力した人たちの物語として「ラストゲーム 最後の早慶戦」2008年という作品もあります。より野球に重点を置いたものであるはず。機会があればそちらも鑑賞したいですね。
シネマヴェーラ渋谷
「英霊たちの応援歌 最後の早慶戦」1979年 東宝 監督:岡本喜八
昭和18年に行われた最後の早慶戦と、学徒出陣して特攻隊員となった選手たちのその後を描く、当時の写真やフィルム映像を折り込みながら淡々と描かれる彼らの姿が、心から野球を愛した若者たちの命を奪っていく戦争の惨さを浮かび上がらせる。
年末年始の野球映画観賞。結局、重松清のやつはロードショー公開時に行くことが無く、パス。代わりにこちら、岡本喜八作品に切替です。
28年前よりも72年前の方が興味の対象としては勝っていますからね。
これは野球映画というよりも最後の早慶戦後に特攻隊として戦死して行った学生運動部諸君の戦争映画。となると岡本喜八ですから、戦争映画ったて一介のお涙ちょうだい悲話になんていたしません。
「独立愚連隊」にてそれまで、メッセージ性の高かった戦後の戦争映画を純粋な娯楽作品に仕上げた(当時は相当賛否別れた事でしょう)喜八ちゃんですから。
実話を元にしているので、それなりのメッセージは感じることはできますが、あくまで娯楽性が勝っているのが良いです。
突撃命令の出た晩に特攻から直掩隊任務へ変更させられた早稲田・秋山捕手(早実のおぼっちゃん)を中心とした群像劇として良く出来た作品。
永島敏行のいかにもスポーツ馬鹿ぶりの明るさは適役。このキャラでもって逆に悲劇さが伝わってきたりもしますが。
六大学の登場人物に必ず出身中学のスーパーが出るところも大学野球として正しい在り方。
市岡中学の主将や米子中学、早稲田実。岐阜商の三羽烏とか。
特攻で消えていったのは野球部だけではありません、相撲、柔道、スキー・・・。専修からはラグビー部員が1名、散っておりましたし、なんと落研部員まで居る。山田隆夫が良い仕事してます。
プロの噺家さんは多く戦争に行き、誰一人戦死せずに帰ってきたという快挙がネタになっていますが、やはり学生落語研究会の料簡はチト違うようで、落研で予科練とは・・・(実際には居たんでしょうが)
戦局不利な軍隊の中にあって、きれいごとすぎるのかもしれないけれど、海軍でのちょっといい粋なはからいが随所に見えるのも素敵です。
重症を負った母親に一目あってこいと上陸を許可された三上投手の走れメロスな展開(時間に戻らなければ直掩隊であり親友の秋山が代わりに突っ込む事になってます)とか、まんじゅうこわいの落ちを待ってる秋山中尉とか。
岡本作品でお馴染みの名優が少しづつ出てきて良い仕事もしております。特に田中邦衛の笠間上飛曹の教官ぶりは見事。
女優陣も良いです。お嫁さんにしたい女優といえば当時の竹下景子。野球から芝居の世界へ移った法政の名一塁手本田(本田博太郎)との恋と彼の肺病病みで除隊になった本田の弟とのエピソード。
本田にそっと渡したスカーフが何気に法政カラーなところも良い。
そして秋山家の照ちゃん。女中から、最後は女郎になった大谷直子のせつなさ。
やはり、この時代の大谷直子は素晴らしく良いです。いや、大谷直子で一番良いかも、というぐらいです。
エンドロールに役所広司の名を見つけましたが、さすがに解りませんでした。
若者がそれぞれ、彼女や母親に魂を託して特攻に出る中、慶応コンビが黒板に描かれた銀座の街の店名を埋めることに躍起になって魂を燃やし尽す姿。こういう描き方ができる岡本喜八監督はやっぱり好きだなぁ。
冒頭の現代(当時の)六大学野球シーンが出ます、昭和54年、早稲田には岡田彰布(北陽)三谷志郎(今治西)慶応にはサイクル男の玉川寿(土佐)などが居た頃です。さすがに選手の姿は特定できないように映していますが、ひょっとして、なんて考えるのも楽しい。当時の神宮スタンドの学生風景が懐かしい。
実際に最後の早慶戦開催に尽力した人たちの物語として「ラストゲーム 最後の早慶戦」2008年という作品もあります。より野球に重点を置いたものであるはず。機会があればそちらも鑑賞したいですね。
シネマヴェーラ渋谷