「映画史上の名作 13」
「静かなる男」1952年 米 監督:ジョン・フォード
The Quiet Man
アイルランドの村に帰郷したアメリカ人元ボクサーのショーンと勝ち気なメアリーが結ばれるまでの紆余曲折を、ユーモアと愛情を持って描いたジョン・フォードの傑作。恋とケンカと歌と酒、そしてお祭り騒ぎの大団円。ジョン・フォードの故国アイルランドへの愛が溢れだす!
何を隠そう、ジョン・フォード=ジョン・ウェイン作品も、これまた初体験。ジョン・フォードは「荒野の決闘」しか観てない。
本作に至ってはタイトルや存在する知らなかったモノ。2本立てだから観たようなもんで・・・
・・・これだから「映画史上の名作」は探訪しておかなくっちゃいけない。
映画の愉しみとは本来、こういうモノであるんじゃなかろか。
作品の山場は中盤の海岸沿いでの村競馬、そして後半クライマックス、ショーン(ジョン・ウェイン)とダナハー兄(ヴィクター・マクラグレン)の壮絶な殴り合い祭り・・・
ではあるけれど、それ以外にも名シーンの連続。
色が良いのです。アイルランドのシンボル・カラーが何故グリーンなのかが良く解ります。
初端なからグリーンのSL列車でキャッスルタウンに到着するショーン、グリーンの駅名看板、駅員やら村人が寄ってたかって釣り等のお国自慢話をご親切に・・・
イニスフリーの家のドアをグリーンに塗るアメリカ人のセンス。
「汽車に乗ってアイルランドのような田舎に行きた」なんて歌があったけど、アイルランドの自然のグリーン。
羊を追うメアリー・ケイト(モーリン・オハラ)の登場シーン、ブルーのシャツとスカートの赤。
ショーンが赤毛のメアリーに一目惚れするシーンだけれど、こっちはメアリー衣装の色彩に惚れる。
気の強いメアリーに対し、優しく、しかし時に強引に対応するショーンとのラブ・シーンの数々も優秀。
部屋の掃除に来ていたメアリーと強風の晩での、現実離れした芝居気たっぷりのラブ・シーン。
嵐の中での抱擁というベタさ。雨に濡れるショーンのスケシャツ。ここはメアリーに透けて欲しかったところですけど。
嫁入り道具や持参金に拘るアイルランド気質とアメリカ帰りのショーンとの文化の違いとか、事情あってダナハーと戦わないショーンが臆病者とレッテル貼られたり、延々と続く殴り合いとか、「大いなる西部」をちょっと思い出した。
あっちは東部と西部の違いだったけれど、アイルランドとアメリカの違いの方が面白いやね。
ついに持参金を取り戻そうと立ち上がり、ショーンが8キロの道のりをメアリーを引きずりながら向かう、コメディ演出。音楽もバッチリ嵌ってる。
脇役のキャラがまた、皆良いんですよね。特にミカリン(バリー・フィッツジェラルド)ですね。そしてパブで陽気に歌う男たち。
馬車でミカリンたちがメアリーの家財道具を運んでくるシーンが大好き。まるでディズニーのパレードみたい。
とにかく、ファンタジックで人間愛、アイルランド愛に溢れた作品。
拳を交わして、互いを理解しあうなんて子供みたいに単純な男の魅力なんてのは、こういう演出による夢のような映画の世界でぐらいしか、グッとくる事は無いだろうね。
ジョン・フォード=ジョン・ウェイン作品、これよりも評判の良い作品も数あるっていうんだから恐ろしい。
ジョン・ウェインの好々爺みたいな笑顔はあまり好きになれませんでしたけど。
ところで観賞後に、本作はまさにアイルランドの歴史・政治を暗喩していて、メアリーが兄の元を離れることが英国からの独立、競馬での策略で嫁入り道具を奪還するも、持参金は返してもらっていない。この持参金が北部アイルランドを象徴していると言う事を教えてもらいました。
なるほど、お祭り騒ぎの熱狂は北アイルランド奪回の武装闘争か。楽しい映画の中に隠された意味。そういう解説は聞かなければ解らない。映画の愉しみが増しますね。
シネマヴェーラ渋谷
「静かなる男」1952年 米 監督:ジョン・フォード
The Quiet Man
アイルランドの村に帰郷したアメリカ人元ボクサーのショーンと勝ち気なメアリーが結ばれるまでの紆余曲折を、ユーモアと愛情を持って描いたジョン・フォードの傑作。恋とケンカと歌と酒、そしてお祭り騒ぎの大団円。ジョン・フォードの故国アイルランドへの愛が溢れだす!
何を隠そう、ジョン・フォード=ジョン・ウェイン作品も、これまた初体験。ジョン・フォードは「荒野の決闘」しか観てない。
本作に至ってはタイトルや存在する知らなかったモノ。2本立てだから観たようなもんで・・・
・・・これだから「映画史上の名作」は探訪しておかなくっちゃいけない。
映画の愉しみとは本来、こういうモノであるんじゃなかろか。
作品の山場は中盤の海岸沿いでの村競馬、そして後半クライマックス、ショーン(ジョン・ウェイン)とダナハー兄(ヴィクター・マクラグレン)の壮絶な殴り合い祭り・・・
ではあるけれど、それ以外にも名シーンの連続。
色が良いのです。アイルランドのシンボル・カラーが何故グリーンなのかが良く解ります。
初端なからグリーンのSL列車でキャッスルタウンに到着するショーン、グリーンの駅名看板、駅員やら村人が寄ってたかって釣り等のお国自慢話をご親切に・・・
イニスフリーの家のドアをグリーンに塗るアメリカ人のセンス。
「汽車に乗ってアイルランドのような田舎に行きた」なんて歌があったけど、アイルランドの自然のグリーン。
羊を追うメアリー・ケイト(モーリン・オハラ)の登場シーン、ブルーのシャツとスカートの赤。
ショーンが赤毛のメアリーに一目惚れするシーンだけれど、こっちはメアリー衣装の色彩に惚れる。
気の強いメアリーに対し、優しく、しかし時に強引に対応するショーンとのラブ・シーンの数々も優秀。
部屋の掃除に来ていたメアリーと強風の晩での、現実離れした芝居気たっぷりのラブ・シーン。
嵐の中での抱擁というベタさ。雨に濡れるショーンのスケシャツ。ここはメアリーに透けて欲しかったところですけど。
嫁入り道具や持参金に拘るアイルランド気質とアメリカ帰りのショーンとの文化の違いとか、事情あってダナハーと戦わないショーンが臆病者とレッテル貼られたり、延々と続く殴り合いとか、「大いなる西部」をちょっと思い出した。
あっちは東部と西部の違いだったけれど、アイルランドとアメリカの違いの方が面白いやね。
ついに持参金を取り戻そうと立ち上がり、ショーンが8キロの道のりをメアリーを引きずりながら向かう、コメディ演出。音楽もバッチリ嵌ってる。
脇役のキャラがまた、皆良いんですよね。特にミカリン(バリー・フィッツジェラルド)ですね。そしてパブで陽気に歌う男たち。
馬車でミカリンたちがメアリーの家財道具を運んでくるシーンが大好き。まるでディズニーのパレードみたい。
とにかく、ファンタジックで人間愛、アイルランド愛に溢れた作品。
拳を交わして、互いを理解しあうなんて子供みたいに単純な男の魅力なんてのは、こういう演出による夢のような映画の世界でぐらいしか、グッとくる事は無いだろうね。
ジョン・フォード=ジョン・ウェイン作品、これよりも評判の良い作品も数あるっていうんだから恐ろしい。
ジョン・ウェインの好々爺みたいな笑顔はあまり好きになれませんでしたけど。
ところで観賞後に、本作はまさにアイルランドの歴史・政治を暗喩していて、メアリーが兄の元を離れることが英国からの独立、競馬での策略で嫁入り道具を奪還するも、持参金は返してもらっていない。この持参金が北部アイルランドを象徴していると言う事を教えてもらいました。
なるほど、お祭り騒ぎの熱狂は北アイルランド奪回の武装闘争か。楽しい映画の中に隠された意味。そういう解説は聞かなければ解らない。映画の愉しみが増しますね。
シネマヴェーラ渋谷