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Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
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「青べか物語」

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「稀代のエンターテイナー! フランキー太陽傳」

「青べか物語」1962年 東京映画 監督:川島雄三

千葉県浦安(劇中では浦粕)の漁村を舞台に、森繁扮する作家先生と人情味溢れる住人たちとの一風変わった交流が描かれる。山本周五郎の同名原作を映画化した、抒情味溢れる逸品。「印象派」を狙ったという岡崎宏三の撮影も秀逸。

この映画は20代後半頃に高田馬場の小さな劇場で観た。その時は同時上映の「幕末太陽伝」が目当てで、「幕末太陽伝」があまりにも素晴らしく感激してしまったせいか「青べか物語」の事はほとんど記憶されていない。
当時、森繁久弥を毛嫌いしていた事にも起因するのかもしれない。今回鑑賞してみたら、こちらの方も相当素晴らしいじゃないかと思った。

舞台はディズニーランドの浦安。冒頭の画像が悪いのか曇天なのか、見にくいけれど空撮が値打ちもの。
東京タワーからどんどん東へ、京葉工業地帯として埋め立てられていく浦安方面へ。
今の空撮とオーバラップさせて比較してみたい。

原作は勿論、山本周五郎。
山本周五郎作品はいよいよ読む本が無くなってきた時の切り札として取ってあるんだが、最近、目が悪く読書に気力が向かない。
同様な貧民街を取り扱った「太陽のない町」を黒沢明が「どですかでん」で映画化していて、大好きな作品なんだけど、あちらが文芸ファンタジーなら、こっちは人情喜劇的かつリアリティとまったく趣が違ってくる。
こっちの方も好きな作品になりました。

なにしろ登場人物の下卑た感じが堪らない。べか船を売りつける東野英治郎の怪演。人の煙草でも酒でも平気でくすねる。
ここでは他人の女房を寝とる事など当たり前だ。
下卑た連中の様子が実に楽しいのだが、輪をかけて女優陣が魅力的なのが良い。
床屋の桂小金治の女房役の市原悦子がすごく良い。賭博をしているところを見回りにきた若いおまわりを煙に巻く件が最高です。



先生(森繁久弥)に思いを寄せるごったく屋娼婦の左幸子の据え膳。
はきだめに鶴感が半端じゃない乙羽信子。もの静かでほとんどしゃべらない役だ。
群像劇的にエピソードが語られていく中、珠玉はみその洋品店の五郎(フランキー堺)に二番目の嫁がくる件
最初の嫁(中村メイコ)は初夜の思いさえ遂げぬまま逃げられて、「みそのの幟はおっ立たない」なんて言われていたが・・・
二番目の嫁、池内淳子が夜の支度をするシーンから、中略後、一夜明けてスクーター二人乗りの新婚さん。なんてエロティックなんでしょう。



今シリーズに多く見られるエロ表現。時代が移り変わって、現在に見るからなのか、たまらなく良いのです。
そしてとんかつ大将で「あれ?」と思った池内淳子に対するトラウマが本作で完全に払拭されたようです。池内淳子素晴らしいです。顔は好きじゃないけど。

大量なべか船の風景から浦安橋を渡るトラックの一群へ。
確実に変わりゆく時代と風景。よくぞ浦安の風景を残してくれました。
あと、風景だけじゃなく、宝酒造のTAKARAビールが登場するのもとても貴重な事ですね。

今でも浦安、堀江あたりに行くと僅かに面影が残っていてポタリングや散歩には面白い場所だ。だが、本作を見るとやはり、その変貌ぶりが凄まじい。
また出かけてみたくなった。



ラピュタ阿佐ヶ谷

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