名短篇ほりだしもの (ちくま文庫)筑摩書房発売日:2011-01-08ブクログでレビューを見る»
どうやら本読みの達人らしき北村薫編のアンソロジー(編者に宮部みゆきも連名されているけど)の中の1冊。
「ほりだしもの」というだけあってまずは文庫で読める事のありそうにない珠玉短編。
第一部
だめに向かって 宮沢章夫
探さないでください 宮沢章夫
「吹いていく風のバラッド」より「12」「16」 片岡義男
第二部
日曜日のホテルの電話 中村正常
幸福な結婚 中村正常
三人のウルトラ・マダム 中村正常
「剃刀日記」より「序」「蝶」「炭」「薔薇」「指輪」 石川桂郎
少年 石川桂郎
第三部
カルメン 芥川龍之介
イヅク川 志賀直哉
亀鳴くや 内田百間
小坪の漁師 里見弓享
虎に化ける 久野豊彦
中村遊郭 尾崎士郎
穴の底 伊藤人譽
落ちてくる! 伊藤人譽
探し人 織田作之助
人情噺 織田作之助
天衣無縫 織田作之助
解説対談 北村薫・宮部みゆき
門構えに月とか弓偏に享とか表記されないのが情けない。
宮沢章夫以外は全て初読。
「よくわからないねじ」から2編だけ抜き出しても、面白味は伝わりにくい。
文豪の掘り出し物も去ることながら、ここはやっぱり新発見の中村正常、石川桂郎、伊藤人譽が大層、気に入ってしまった。
中村正常はユーモア小説というジャンルになるだろう。日本のユーモア小説と言ってしまうと、なかなか食指が動かない物だけど、この古臭いモダンさは捨てがたい。中村メイコのお父様だそうで、なあるほど。
床屋でありながら俳人で小説も書く石川桂郎の小説の美しさよ。
これも時代がよろしいわけで。
「下駄は、八幡黒の前鼻緒のつまった畳表ののめり、というものを履き、とうざんの着物を着たが、その仕立て方が普通人と違っていたのは七五三五分まわし、つまり後幅七寸五分、衽三寸五分という着物で少し大股に歩くと下帯ののぞく様な恰好であった。それに平絎の帯をしめ、冬は二子の半纏を着た。」
なんて、解らなくても、恍惚としてくるもんね。
伊藤人譽はホラーっぽく「穴の底」など、不条理の常道を行く傑作。
この対談解説に於いて、北村薫が「現代の作家が書くと、説明してしまいそうですね。なぜ、こんな穴があったのか。」って言ってるけど、現代作家って、そこまで野暮に出来上がってんのか?そりゃダメなはずだ。
「夫婦善哉」の織田作之助も初めて読む。
上方人情物なので、機会がないと敬遠したままになりかねない。
これが実に面白いじゃありませんか。
「探し人」の一代記が短編で治まっている胡散臭さ。
「天衣無縫」などは私のもっとも好むダメ男話で愉快。
上記4名の作品は他にも、もっともっと読みたくなります。
あくまで文庫派の自分にはなかなか叶わぬ願いでしょうが・・・
あと、「虎に化ける」のわけの解らないシュールさも好みでしたね。
しかし、この達人・北村薫の説明をガイドにしなければ、その良さを認識しにくい物もあった。
対談解説をガイドにして味わうと、俄然掌編が光を放って見えてくる。
このアンソロジーシリーズ、もうちょっと読んでみようか。
どうやら本読みの達人らしき北村薫編のアンソロジー(編者に宮部みゆきも連名されているけど)の中の1冊。
「ほりだしもの」というだけあってまずは文庫で読める事のありそうにない珠玉短編。
第一部
だめに向かって 宮沢章夫
探さないでください 宮沢章夫
「吹いていく風のバラッド」より「12」「16」 片岡義男
第二部
日曜日のホテルの電話 中村正常
幸福な結婚 中村正常
三人のウルトラ・マダム 中村正常
「剃刀日記」より「序」「蝶」「炭」「薔薇」「指輪」 石川桂郎
少年 石川桂郎
第三部
カルメン 芥川龍之介
イヅク川 志賀直哉
亀鳴くや 内田百間
小坪の漁師 里見弓享
虎に化ける 久野豊彦
中村遊郭 尾崎士郎
穴の底 伊藤人譽
落ちてくる! 伊藤人譽
探し人 織田作之助
人情噺 織田作之助
天衣無縫 織田作之助
解説対談 北村薫・宮部みゆき
門構えに月とか弓偏に享とか表記されないのが情けない。
宮沢章夫以外は全て初読。
「よくわからないねじ」から2編だけ抜き出しても、面白味は伝わりにくい。
文豪の掘り出し物も去ることながら、ここはやっぱり新発見の中村正常、石川桂郎、伊藤人譽が大層、気に入ってしまった。
中村正常はユーモア小説というジャンルになるだろう。日本のユーモア小説と言ってしまうと、なかなか食指が動かない物だけど、この古臭いモダンさは捨てがたい。中村メイコのお父様だそうで、なあるほど。
床屋でありながら俳人で小説も書く石川桂郎の小説の美しさよ。
これも時代がよろしいわけで。
「下駄は、八幡黒の前鼻緒のつまった畳表ののめり、というものを履き、とうざんの着物を着たが、その仕立て方が普通人と違っていたのは七五三五分まわし、つまり後幅七寸五分、衽三寸五分という着物で少し大股に歩くと下帯ののぞく様な恰好であった。それに平絎の帯をしめ、冬は二子の半纏を着た。」
なんて、解らなくても、恍惚としてくるもんね。
伊藤人譽はホラーっぽく「穴の底」など、不条理の常道を行く傑作。
この対談解説に於いて、北村薫が「現代の作家が書くと、説明してしまいそうですね。なぜ、こんな穴があったのか。」って言ってるけど、現代作家って、そこまで野暮に出来上がってんのか?そりゃダメなはずだ。
「夫婦善哉」の織田作之助も初めて読む。
上方人情物なので、機会がないと敬遠したままになりかねない。
これが実に面白いじゃありませんか。
「探し人」の一代記が短編で治まっている胡散臭さ。
「天衣無縫」などは私のもっとも好むダメ男話で愉快。
上記4名の作品は他にも、もっともっと読みたくなります。
あくまで文庫派の自分にはなかなか叶わぬ願いでしょうが・・・
あと、「虎に化ける」のわけの解らないシュールさも好みでしたね。
しかし、この達人・北村薫の説明をガイドにしなければ、その良さを認識しにくい物もあった。
対談解説をガイドにして味わうと、俄然掌編が光を放って見えてくる。
このアンソロジーシリーズ、もうちょっと読んでみようか。