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Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
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「レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー」

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「トーキョー ノーザンライツ フェスティバル 2011」

「レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー」2009年 アイスランド 監督:ジュリアス・ケンプ

ホエール・ウォッチングのため、世界中から観光客が集まるアイスランドの首都レイキャヴィク。いつものように出航した観光船が予期せぬ事故に遭い、そこを通りがかった捕鯨船が取り残された観光客たちに救いの手を差し伸べる。しかし、その捕鯨船に乗っていたのは、捕鯨を禁じられて失業し、観光船を逆恨みする狂人一家だった…。

上映前のトークショーで得た情報。
アイスランドは日本、ノルウェーに次ぐ捕鯨第3位の国だった。捕鯨に対しての国民の意見は半々。観光資源としてホエール・ウォッチングが盛んになっていて、一時捕鯨復活を試みる事もあったようだが、ホエール・ウォッチングの眼前で鯨を殺戮するのは何かとまずいという事で断念。そりゃ、両立はせんわな。

さて、この映画B級スプラッターとしてあまり期待せずに観たのだが、これがなかなか自分的に好ましい作品でした。
「ザ・コーブ」が話題になっているので、この方面の映画出現は大変よろしいと思うのと、スラッシャー、スプラッターではあっても、かなり緩々なところも好ましい。殺人鬼一家があまりに弱く、「もうっちょっと何とかせいや!」というフラストレーションは感じるものの、それを補って余りある牧歌的雰囲気の塩梅がナイス。

捕鯨国として、ちゃんと日本人も配役。観光客夫婦(カタコト日本語の日本人)とツアコンのエンドウ(裕木奈江)の3人。

日本文化と西洋文化の違いを笑いのネタにするシーンも散りばめられているのが良い。(反レディー・ファーストやら、愚妻というへりくだった呼び方に対する反応)

パニック映画として、窮地に追いやられた時の傲慢な人間心理も当然描かれるわけだけれど、凄いのは、皆が皆、傲慢、自己中であり、そこには献身的なヒーロー像は存在しないのだ。
唯一、ヒーロー的な側面を見せる黒人にしても、思わぬカミングアウトで大爆笑を誘う。
そんな被害者の中で最も極悪で強靭な女がエンドウの裕木奈江。日本人の魂には真珠湾奇襲攻撃もしっかり刻まれている。

素晴らしいキャラクターを演じる裕木奈江が誠によろしい。なまじの国際的活躍でないところを見せる。
化粧っけのない眼鏡女性の姿はいかにも異国でツアコンをやっていそうなキャリア女性。
殺人鬼に対してひと泡吹かせた時のうすら笑いが痺れます。
しれっと脱出しても残った被害者に救助を呼ぶわけでもなく、ちゃっかり機上人。今度はお世辞にも上手いといえないどぎついメイクだ。
あの、垂れた目の草臥れ気味の表情がとても良い味になってました。

制作者はホラー映画マニアでないらしく、そこの所が好転して成功しているようです。何でもプロデューサーは元銀行ギャングで獄中記が売れたためそれを元手に本作を製作したんだとか。
ホラー素人の私はとっても気に入っちゃいました・・・

渋谷 ユーロスペース

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