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Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
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「燃えつきた地図」

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「昭和の銀幕に輝くヒロイン〔第57弾〕中村玉緒」

「燃えつきた地図」1968年 勝プロダクション 監督:勅使河原宏

興信所の調査員の男は、ある女から失踪した夫の行方動向の調査を依頼されたが、女は夫を探すのには熱心ではなく男に協力的でなかった。男はまず失踪者が残していった運転手募集広告、喫茶店「つばき」の電話番号を手掛りに調査を始めるが調査は、はかばかしくなく、何の結果も得られなかった。そんな時、男は女の弟と名乗るやくざ風の男に会った。弟は失踪者の日記を見せるといって・・・。

粟津潔の抽象画をバックに英語タイトルとローマ字のキャスト・スタッフ・スーパー。
奇異な編集、カット割を使いながら安部公房の世界を再現しようとする。
脚本は安部公房自身なので、ほぼ忠実。ただ小説技法のマジックと違って映像マジックでは限界があるのか、原作では不条理性ゆえに許容できた行き当たりばったり感が映画だととても気になる。

原作で重要な位置を占める坂道について、勅使河原監督が選んだロケ地は我等が地元団地。
確かにあの頃はモデル団地としてロケが多かった。
勝新太郎がスバルで駆け上がる坂道は、かなり以前から車両通行はできなっている。登りきったところにあった交番も当時は健在。スターハウスの側道の八重桜並木、くらげ公園、動物公園付近の棟屋を見ることができる。現在第2期まで完了した建替工事だが、今もなお残る地区が使われていて、燃えつきた(取り壊された)団地がうまく確認できないのは惜しい(遠景に21号棟が見えたような気もする)

原作では弟が死んでしまうまでの前半が良かったが、映画では後半、田代を演じる渥美清が光る。相手にしてない勝新太郎と堅物むっつりの虚言癖男の渥美のやりとりが愉快。
河原の暴動からスタコラ逃げ出したり、運転手たちにボコボコにされても無抵抗と、どうも勝新にしては弱腰の役柄でしたが、この田代をあしらう場面のニヒルさは面目。
「男はつらいよ」を見てない自分にとって渥美清は「泣いてたまるか」の人。寅さん以外の役での輝きを見るにつけ名優の認識を新たにしますな。

そして原作で、もっとも魅力的な場面として印象的だった、探偵が別居中の妻と会う場面。
映画では中村玉緒が煙草をふかしながら、実にどうも格好良い。

この一面だけでも原作の魅力を再現したとして評価できましょう。

ラストでは勝新太郎が道路でペシャンコになった猫の死骸に語りかけて終わる。
あぁ!勝新、やってもうた!という感じのエンディングに失笑。

ラピュタ阿佐ヶ谷

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