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Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
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「砂の上の植物群」

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「文豪と女優とエロスの風景」

「砂の上の植物群」1964年 日活 監督:中平康

化粧品セールスマンの伊木は、ある晩、横浜のマリンタワーの展望台で、真っ赤な口紅を塗った女子高生の明子と出会い、彼女に誘われて一夜を共にするが、意外にも相手はそれが初体験だった。後日再会した彼女は、親代わりに自分を厳しくしつけて育てた姉が、実は昼日中から男とホテルに入り浸っていて憎い、と伊木に打ち明け、彼女を誘惑して、ひどい目に遭わせて、と彼に頼みこむ。かくして伊木は、明子の姉の京子と出会うが……。

吉行淳之介は学生の頃に純文学に付け、エンターテイメントに付け、インテリ風エロ話が気に入って随分読みました。この原作も読んでいますけど、ほとんど憶えてません。

今読むととストーリーというかエロティシズムは最早、古めかしい感じがするかもしれない。ところがこの中平康の映画の手法に限って言うと古めかしくさを感じない魅力がある。モノクロにパウル・クレーの絵をパートカラーで扱ったり、バッハの曲に乗せ、アップを多用したモノクロの陰影で仲谷昇が厭らしく女に迫る。
女を誘う仲谷昇を見ていて、旧友の女誑しを思い出した。かつてはこの手が通用していたのね。

モノクロの女の肌は相変わらず息を飲む美しさを表出するが、京子(稲野和子)の縄目の跡がさらに効果的。

作家の花田(高橋昌也)と友人の井村(小池朝雄)の3人でしゃべるエロ話。アカシロのブルドッグの話なんてのは吉行淳之介らしくて良い。

バー「鉄の槌」の京子が伊木に手渡す、走り書きの手紙なんてのも吉行ブンガク的で堪らん。

明子役の当時新人・西尾三枝子もセーラー服で頑張っていますし、稲野和子の媚び媚びの演技も艶めかしい。しかし、実を言うとその上を行くのが、父との間を疑われている妻(島崎雪子)なんじゃないかと思う。濡れ場はないけど充分エロい。

女の食事場面もエロティックに描かれる。
小魚をむしゃむしゃ食べる女房(島崎雪子)
「こういうところは慣れてない」とレストランで食事をする京子(稲野和子)の口中。

このレストランシーン以降のシュールさがまた悪くない。
閑散としていたはずのレストランが急に盛況となって大勢の客の食器の音が充満。
混雑するホテルの廊下を人々の流れに逆らってエレベーターに向かう伊木と京子。
エレベーター内で意味深に見つめあう2人。扉が開く度に乗り込んだ階以外の閑散とした客室廊下の連続。

ところで父親の呪縛からの妄想か、京子との仲を近親相姦かと思い込む伊木だけれど、それはあまりにも思い込み過ぎでしょ。

神保町シアター

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