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Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
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「横須賀綺譚」

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「横須賀綺譚」2019年 MAP+Cinemago 監督:大塚信一

春樹と知華子は結婚を目前に控えた恋人同士だったが、知華子の父が要介護になったため別れることとなった。それは知華子との生活と東京での仕事を天秤にかけた春樹が、仕事のほうを選択した結果だった。東日本大震災が起こり、あれから9年の時間が過ぎた頃、春樹は被災により亡くなったと思われていた知華子が「生きているかもしれない」との怪情報を耳にする。そして春樹は半信半疑のまま、知華子がいるという横須賀へと向かう。



制作段階の情報からずっと観たかったやつ。いよいよ東京公開という矢先、新型コロナ感染拡大で映画館は閉まった。
非常事態宣言明け、仕切り直し上映。

「横須賀綺譚」現実にある不条理を撮りたかった大塚監督は本作でトリッキーな仕掛けを盛り込んでくる。パンフまでトリッキーw
だがもっともトリッキーな事には本作がこの世界的感染症の只中で上映されたこと。より本作のテーマが浮き彫りになる。創造主の導きか。

光るキャスト



ナチュラルな儚さの知華子・しじみ
また幽霊の役なのかなとも思ったが、ここは幽霊としてみるより生きるため記憶を封鎖してしまった女で良い。
結果、横須賀の介護施設での出来事がまるまる綺譚。



薄情と言われる春樹・小林竜樹
薄情は監督自身も言われるとの事。共感を覚えるのは薄情や能天気な事もまた生き辛い世を生きていくには楽であるかもしれない。



優しさが偏りすぎてる拓・川瀬陽太
薄情の真逆。基本いい奴、しかしその実態は・・・。川瀬陽太ならでは渾身の演技。
彼もまた記憶を封じ込めておきたい理由があった。



忘れてたまるかの認知症婦人・長内美那子
「あったことはなかったことにできない」
「みんな死にます」占い。
おそらく個人的に2020年邦画名台詞ベストに入ってくる。

トンネルの使い方が面白い。清順思い出した。
東北から横須賀へ。フェリー使うのはやりすぎw
「東電は潰れてなくて今月も請求が来る」痛烈で効いてる。

引っ越しで書籍を整理している隙間から始まるオープニング好き。
がらんどうになった壁一面の本棚が怖い。でも本が無いから倒れてきても被害は少ないかも。



東日本大震災直後、余震を気にしながらの映画鑑賞。今回、新型コロナの非常事態宣言明け、手探りの映画鑑賞。
無事ラストまでたどり着けるのかと思いながら観てる。そこにあのトリック。
劇場でしか味わえない感覚。

賛否あろうラスト。
しばし、がっかり感のあるあの手法も本作に限っては許せるんじゃないかな。



パンフにまぼろしのファースト&ラストシーンを編集した「もうひとつの横須賀綺譚」見られるQRコード付いてます。

果して1回だけの鑑賞で良いのか。
細々ながら公開が徐々に広がってる模様。年内に機会があればまた・・・。



新宿ケイズシネマ
2020年7月

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