「由宇子の天秤」2020年 ビターズ・エンド 監督:春本雄二郎
3年前に起きた女子高生いじめ自殺事件の真相を追う由宇子は、ドキュメンタリーディレクターとして、世に問うべき問題に光を当てることに信念を持ち、製作サイドと衝突することもいとわずに活動をしている。その一方で、父が経営する学習塾を手伝い、父親の政志と二人三脚で幸せに生きてきた。しかし、政志の思いもかけない行動により、由宇子は信念を揺るがす究極の選択を迫られる。情報化社会の抱える問題や矛盾を真正面からあぶり出していくドラマ。
こりゃスゲーや。
劇伴無しの152分カメラの追い方。引き込まれっぱなし。新たな映画体験。新たなると言っても「サウルの息子」あたりも同様なアプローチだったし、観てないけど町山氏が言ってたダルデンヌ兄弟の作品あたりもこんな感じなんだろうか。
それでもとにかく「新たなる」と冠したくなる魅力に溢れてる。
女優の瀧内公美は初めて知ったが魅力いっぱいで、演じる由宇子のキャラもすごく良いのだ。まず女優・瀧内公美は彼女が出演しているという事だけで「二月の勝者」というTVドラマを見始めちゃったくらいの入れ込み(TVドラマは長らく見ない主義だったのに)
由宇子のドキュメント作家としてのキャラ。人間としての魅力がまた凄くて、その姿勢から公私共に周囲の人へ厚い信頼を築きドキュメントを撮って行ったり、問題を抱える塾生の女子の力になっていく。
しかし、信頼を獲得できる崇高なキャラだけに、裏切られたと思わせた時のダメージは果てしなく大きい。崇高なる人の問題点や悩みと行ったところか。凡人には経験する事のない苦しみ。こちとら安寧な生活を貪れるってわけだ。
カメラは終始、由宇子を追い。観客に第三といえる神目線を与えないため由宇子と同時に物事にぶち当たっていくわけで、共感感情が半端ないことになっていく。
そんな崇高なるドキュメント作家も立場が変われば、やはり行動も変わる。当たり前だよ。他人事はどんなに寄り添っても他人事である事に変わりはないし、自分事は誰にも解りやしない。崇高なる人間性を持った由宇子(と言っても単に崇高でなく、ちょいヤバい女である演出もある)でさえもだ。
由宇子が身内にインタビューする箇所が数回ある。カメラをスマートフォンに変え尋問する由宇子の本気度が良い。
結末の超長回しの凄まじさったら無かった。
女優でもう一人。めい役の河合優実は山口美也子の唇を持つ魅力的な女子で今後の活躍を大いに期待しちゃう。城定監督の次回「愛なのに」に出演があるじゃないの。
他にも、川瀬陽太、松浦祐也、和田光沙とピンクの世界でお馴染みの面々がいい味出してるのも嬉しい。
監督は演出によるBGMの使用は邪道とのお考えのよう。私のように時々、映画を見に行ってるんだか、OSTを聴きにいってるんだか解らなくなる奴からすれば、その意見には賛同しかねるものの、そんな監督が一人くらい居たっていっこうに構わないし面白いよ。
渋谷 ユーロスペース
2021年9月
3年前に起きた女子高生いじめ自殺事件の真相を追う由宇子は、ドキュメンタリーディレクターとして、世に問うべき問題に光を当てることに信念を持ち、製作サイドと衝突することもいとわずに活動をしている。その一方で、父が経営する学習塾を手伝い、父親の政志と二人三脚で幸せに生きてきた。しかし、政志の思いもかけない行動により、由宇子は信念を揺るがす究極の選択を迫られる。情報化社会の抱える問題や矛盾を真正面からあぶり出していくドラマ。
こりゃスゲーや。
劇伴無しの152分カメラの追い方。引き込まれっぱなし。新たな映画体験。新たなると言っても「サウルの息子」あたりも同様なアプローチだったし、観てないけど町山氏が言ってたダルデンヌ兄弟の作品あたりもこんな感じなんだろうか。
それでもとにかく「新たなる」と冠したくなる魅力に溢れてる。
女優の瀧内公美は初めて知ったが魅力いっぱいで、演じる由宇子のキャラもすごく良いのだ。まず女優・瀧内公美は彼女が出演しているという事だけで「二月の勝者」というTVドラマを見始めちゃったくらいの入れ込み(TVドラマは長らく見ない主義だったのに)
由宇子のドキュメント作家としてのキャラ。人間としての魅力がまた凄くて、その姿勢から公私共に周囲の人へ厚い信頼を築きドキュメントを撮って行ったり、問題を抱える塾生の女子の力になっていく。
しかし、信頼を獲得できる崇高なキャラだけに、裏切られたと思わせた時のダメージは果てしなく大きい。崇高なる人の問題点や悩みと行ったところか。凡人には経験する事のない苦しみ。こちとら安寧な生活を貪れるってわけだ。
カメラは終始、由宇子を追い。観客に第三といえる神目線を与えないため由宇子と同時に物事にぶち当たっていくわけで、共感感情が半端ないことになっていく。
そんな崇高なるドキュメント作家も立場が変われば、やはり行動も変わる。当たり前だよ。他人事はどんなに寄り添っても他人事である事に変わりはないし、自分事は誰にも解りやしない。崇高なる人間性を持った由宇子(と言っても単に崇高でなく、ちょいヤバい女である演出もある)でさえもだ。
由宇子が身内にインタビューする箇所が数回ある。カメラをスマートフォンに変え尋問する由宇子の本気度が良い。
結末の超長回しの凄まじさったら無かった。
女優でもう一人。めい役の河合優実は山口美也子の唇を持つ魅力的な女子で今後の活躍を大いに期待しちゃう。城定監督の次回「愛なのに」に出演があるじゃないの。
他にも、川瀬陽太、松浦祐也、和田光沙とピンクの世界でお馴染みの面々がいい味出してるのも嬉しい。
監督は演出によるBGMの使用は邪道とのお考えのよう。私のように時々、映画を見に行ってるんだか、OSTを聴きにいってるんだか解らなくなる奴からすれば、その意見には賛同しかねるものの、そんな監督が一人くらい居たっていっこうに構わないし面白いよ。
渋谷 ユーロスペース
2021年9月