「福田村事件」

「福田村事件」2023年　太秦　監督：森達也　脚本：佐伯俊道 井上淳一 荒井晴彦

1923年、澤田智一は教師をしていた日本統治下の京城（現・ソウル）を離れ、妻の静子とともに故郷の千葉県福田村に帰ってくる。澤田は日本軍が朝鮮で犯した虐殺事件の目撃者であったが、静子にもその事実を隠していた。その年の9月1日、関東地方を大地震が襲う。多くの人びとが大混乱となり、流言飛語が飛び交う9月6日、香川から関東へやってきた沼部新助率いる行商団15名は次の地に向かうために利根川の渡し場に向かう。沼部と渡し守の小さな口論に端を発した行き違いにより、興奮した村民の集団心理に火がつき、後に歴史に葬られる大虐殺が起こってしまう。





つい最近まで埋もれていた事件を100年の時を経てドキュメント映画の森達也監督が初の劇映画として製作。



情報の少ない時代の怖さ、情報が溢れる時代の怖さ。つまり情報の過多に関係なく人間とはそういう事をしてしまう。だからこそ受け入れる。無き事にしようとしてはいけない。たったの100年。今、公開する意義は大きい。

台詞的には薬行商の大将の瑛太が放つ一言だが、他にもデマを信じてしまう背景にそれまで日本人が朝鮮人に対して行ってきたてた事からいつか復讐されると言う恐怖心があった事(酷い話だ)は容易に想像できて、ちゃんとその描写もあったし、血気に走る自警団に「いつまで戦争ごっこやってんだ」と言い放つ女も印象的であった。



確かに内容はどんよりするので作品のメッセージ性とは違った部分を少し。俳優陣がとても良くキャスティングの妙。田中麗奈を舟に乗せるのが良い。デビュー作観てないんだよな。観たい。舟での事の後に見せるエロティシズム。水道橋博士はなかなかご本人と気づけなかった。松浦祐也のハマリ役度合いが凄い。木竜麻生は女相撲の人か？処刑されるカトウシンスケ。飴売り朝鮮少女も良かった。





讃岐の薬売り一行の方言が普通に聞き取りやすい。ここはキツく標準語字幕が必要なぐらいにはならなかったろうか。キツい讃岐弁て知らないけど。大島渚の「飼育」くらいやって欲しかった。あれはあれで字幕が無いので何言ってんだか解らず難儀したが。





池袋シネマロサ
2023年9月