
この中公文庫シリーズ、コンプリートする気は無いのだが、やはり谷崎潤一郎の短編を読み進めるとまだまだ未読の面白いものが沢山ありそう。今後の読書ネタには困らなそうだが、一気に読むのはもったいない。時間を隔てて少しづつ・・・
「病蓐の幻想」

歯痛の錯乱を述べ立てる前半部が最高です。

こういうの、こういうの、こういうのが読みたかったのよ。と嬉しくなる。
後半錯乱が地震への恐怖へ変じてしまって、ちょっと残念(歯痛だけで通してほしい)に思ったけれど、落ちの関係上やむを得なかったのね。

「白晝鬼語」

ミステリー仕立ての本作、節穴から覗く妖艶な芸者風女の艶めかしくもエロい事。

「人間が猿になった話」

薄気味悪くて良いですね。語り部の爺さんは話術に優れ、下手な落語を聞くより面白いと評判だとか。おい、誰かこの話を落語に脚色して高座にかけてみろや。

「魚の李太白」

今度はお伽噺風。婚礼祝いでもらった緋ぢりめんの鯛を解いて着物の裏にするという昔の人の発想が、なんだかとっても良いです。

「美食倶楽部」

食への果てしない欲望が・・・当然の如くエロティシズムと結びついていくんですね。

目隠しをされたまま女の指で口中を弄ばれる白菜料理なんて読んでいるだけで涎が垂れそうになる。圧巻!


