江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男 (光文社文庫)江戸川 乱歩光文社発売日:2005-01-12ブクログでレビューを見る»
実は江戸川乱歩は短編をいくつか読んだくらいで、意外なことにあまり読んでいないのです。
有名な話や多く映画化、ドラマ化され、内容は熟知していても原作は読んでないものが多い。
そこで、このシリーズはコンプリートする気はないのだけれど少しづつ買って読むことにしている。
ボリュウムがあるという事は次に読む本を頻繁に買いに行く必要が無い。これも好都合。
反面、完読後だと、最初の方の作品に印象が薄れてしまうけど・・・。
江戸川乱歩自身の自作解説付というのも興味深い。
また、巻頭に初版本装丁の魅惑的な写真が載っており購買欲を起こさせる。
第5巻は休筆明けで、いよいよ売文業として探偵小説を本格的に書き始める頃(ご本人は本意でなかったよう)の作品4編。
「押絵と旅する男」「蟲」「蜘蛛男」「盲獣」
どの作品も映画化されていて、私も「蜘蛛男」以外は観ている。
「押絵と旅する男」は川島透監督で鷲尾いさ子も出ていた映画の方は実相寺昭雄の「屋根裏の散歩者」との2本立てで観た。
ほとんど忘却しているが、原作を読んだ今、もう一度見直してみたい。できれば劇場で・・・。
のぞきからくりのお七に恋の病にかかる純情な兄の話はロマンチックで、汽車の中で押絵と旅する男との出会いなど、幻想世界としても美しい。
その中にもしっかり明治期の浅草の描写が残っている名作。
浅草十二階、のぞきからくり、遠眼鏡。魚津の蜃気楼・・・。
これを読むと「くっしゃみ講釈」や「幾代餅」を聴きたくなる。
「蟲」は自作解説によると、「人間の死体を蝕む極微生物との闘争を書こうとしたが失敗作である。」とおっしゃる。
確かにその観点からするとご本人は満足行かないのかもしれないけど、読者はそんな事は知ったこっちゃない。
愛する木下芙蓉の死体との闘争のドタバタ度合は十二分に満足できる世界であり、オムニバス映画「乱歩地獄」では浅野忠信が好演している。
「乱歩地獄」の中でもカネコアツシのこの作品が抜きん出ていたことを改めて認識。
蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲
蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲
蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲
「蜘蛛男」は探偵小説中篇への橋渡し的な位置を占める作品だとか。
本人の意とは逆に娯楽性にかけての才が素晴らしく、怪奇趣味の味付けがありながらも幅広い層に受け入れられたのでは。
乱歩作品に明智以外の名探偵が登場すれば、それはそれは胡散臭い。
殺人を芸術として、自己顕示する蜘蛛男と明智の戦いは、明智に都合良く展開しすぎるものの痛快で一気読み。
「盲獣」は増村保造の映画が有名で、また緑魔子と船越英二の演技があまりにも鮮烈。
映画は蘭子(緑魔子)の身体が切り刻まれるところまでを描いていたが、その後日譚がこんなに長いとは知らなかった。映画はほんの序章だったのね。
しかし、増村映画の判断は大正解。
盲獣が次々に女たちを毒牙にかける部分は、それぞれに水準を満たして余りあるのは確かだけれどやはり饒舌気味。
かといって、原作のまま蘭子殺害で切ってしまうと呆気なさ過ぎる。
実際読んでいて、「え!?もう殺しちゃうんだ」と肩透かし気味。
これは増村保造・白坂依志夫の大正解で演出が際立っていることが解る。
しかし、映像を先に見たせいもあるかもしれないが、盲獣の奇怪な地下室の彫刻描写。これが映像以上に素晴らしいのです。
いづれにしてもこの時期の乱歩作品は名作揃いですね。
実は江戸川乱歩は短編をいくつか読んだくらいで、意外なことにあまり読んでいないのです。
有名な話や多く映画化、ドラマ化され、内容は熟知していても原作は読んでないものが多い。
そこで、このシリーズはコンプリートする気はないのだけれど少しづつ買って読むことにしている。
ボリュウムがあるという事は次に読む本を頻繁に買いに行く必要が無い。これも好都合。
反面、完読後だと、最初の方の作品に印象が薄れてしまうけど・・・。
江戸川乱歩自身の自作解説付というのも興味深い。
また、巻頭に初版本装丁の魅惑的な写真が載っており購買欲を起こさせる。
第5巻は休筆明けで、いよいよ売文業として探偵小説を本格的に書き始める頃(ご本人は本意でなかったよう)の作品4編。
「押絵と旅する男」「蟲」「蜘蛛男」「盲獣」
どの作品も映画化されていて、私も「蜘蛛男」以外は観ている。
「押絵と旅する男」は川島透監督で鷲尾いさ子も出ていた映画の方は実相寺昭雄の「屋根裏の散歩者」との2本立てで観た。
ほとんど忘却しているが、原作を読んだ今、もう一度見直してみたい。できれば劇場で・・・。
のぞきからくりのお七に恋の病にかかる純情な兄の話はロマンチックで、汽車の中で押絵と旅する男との出会いなど、幻想世界としても美しい。
その中にもしっかり明治期の浅草の描写が残っている名作。
浅草十二階、のぞきからくり、遠眼鏡。魚津の蜃気楼・・・。
これを読むと「くっしゃみ講釈」や「幾代餅」を聴きたくなる。
「蟲」は自作解説によると、「人間の死体を蝕む極微生物との闘争を書こうとしたが失敗作である。」とおっしゃる。
確かにその観点からするとご本人は満足行かないのかもしれないけど、読者はそんな事は知ったこっちゃない。
愛する木下芙蓉の死体との闘争のドタバタ度合は十二分に満足できる世界であり、オムニバス映画「乱歩地獄」では浅野忠信が好演している。
「乱歩地獄」の中でもカネコアツシのこの作品が抜きん出ていたことを改めて認識。
蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲
蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲
蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲
「蜘蛛男」は探偵小説中篇への橋渡し的な位置を占める作品だとか。
本人の意とは逆に娯楽性にかけての才が素晴らしく、怪奇趣味の味付けがありながらも幅広い層に受け入れられたのでは。
乱歩作品に明智以外の名探偵が登場すれば、それはそれは胡散臭い。
殺人を芸術として、自己顕示する蜘蛛男と明智の戦いは、明智に都合良く展開しすぎるものの痛快で一気読み。
「盲獣」は増村保造の映画が有名で、また緑魔子と船越英二の演技があまりにも鮮烈。
映画は蘭子(緑魔子)の身体が切り刻まれるところまでを描いていたが、その後日譚がこんなに長いとは知らなかった。映画はほんの序章だったのね。
しかし、増村映画の判断は大正解。
盲獣が次々に女たちを毒牙にかける部分は、それぞれに水準を満たして余りあるのは確かだけれどやはり饒舌気味。
かといって、原作のまま蘭子殺害で切ってしまうと呆気なさ過ぎる。
実際読んでいて、「え!?もう殺しちゃうんだ」と肩透かし気味。
これは増村保造・白坂依志夫の大正解で演出が際立っていることが解る。
しかし、映像を先に見たせいもあるかもしれないが、盲獣の奇怪な地下室の彫刻描写。これが映像以上に素晴らしいのです。
いづれにしてもこの時期の乱歩作品は名作揃いですね。