「追想から未来へ~水井真希さんが残したもの 」
「マリア狂騒曲」2013年 アートポート 監督:井土紀州
元恋人の双葉が忘れられない耕平の前に、ある日、双葉の幽霊が現れ、「助けて」と告げる。気になった耕平は双葉の部屋を訪れるが、今彼は彼女は世界一周旅行中と言って取り合ってくれない。隣室のマリアという女性から双葉が殺されたという話を聞く。復讐を決意する耕平に、マリアは一緒に敵討ちをしようと言い始め、耕平はマリアに振り回されながらも真実に迫っていくが……。
水井真希追悼連続上映の2本目。
和製クロエ・グレース・モレッツ、キックアスか!?水井真希の魅力全開。
藤色傘に赤鞘小刀、黒仮面。外連味たっぷりのアクションも行けるのね。
耕平(吉岡睦雄)が幽霊からの啓示を受け、元カノの今カレにあしらわれた後、隣室の女・マリア登場。登場するだけで空気を変えられる女優・水井真希。
双葉があの男に殺されたと告げる「だとしたら許せねぇ、ぶっ殺してやる」に「カッコいい!」復讐の助太刀を申し入れ、2人はコンビを組む事になるが、組んだ女がとんでもないサイコだった。
助太刀の動機として彼女も同じように大切な人(両親)を殺された過去を語りだす(なるほど)私の仇敵で予行演習をしようという事になり、殺人者の部屋に忍び込むが、何のことはない殺人者は母の再婚相手の義父だった。マリアは単なる家出娘だったのだ。家出の動機が「あんな男と再婚なんて許せない、もっとカッコいい人が良かった」って、やっぱりサイコ。
こういうリアルな路線を崩していく脚本があり得ないけど面白いし、役者の魅力で振り切るのが良いですね。
浴室で香辛料目つぶし水鉄砲の試し打ち。悲鳴を上げてシャワーまみれの2人、濡れたシャツに透ける微乳(自称B)の乳首に微乳ほどの微かな欲情?
一方、吉岡睦雄の方、俺たちは赤い糸で結ばれているんだ。双葉はあなたしか居ないと言ってくれた。振られた女にいつまでも未練がましい。初めての彼女で今も愛しているのだが、復讐計画の途中で第3の男が現れる。双葉が吉岡睦雄と付き合う前に付き合ってたハゲ男。双葉は同じ殺し文句で男を渡り歩いていた事を知り復讐心が急激に冷める。ここでもリアルのズラシが光る三枚起請かよ。
サイコマリコは冷められてはたまらないと双葉の形見ワンピースを着て耕平の復讐心を煽り立てようとする。どこまでもサイコだがキュート。二人は身体を合わせる。
身体で自信があるのは背中という水井真希。綺麗な背中が撮られている。
双葉殺しと死体遺棄の3人組といよいよ対決。双葉になりすましたマリアが傘を上げて顔を見せる双葉よりのメイク(井土監督、この見せ場は上手く行ってなかったと後悔されてた。水井真希の魅力に翳りが出てしまったという事だろう。)ポールダンス経験のある水井真希はロープウェイのポールを使ってのアクションを提案するが、そこは控え目に。
西村喜廣の所で現場スタッフ経験もある水野真希は血のりに拘り提案してくるけど、そんな予算無いし、違う映画になっちゃうから却下。
双葉を殺した男もまた双葉に、他の男が出来たと逃げられるところを離したくないあまり凶行に及んだ事を知り、号泣で「双葉、許してくれ!」「そこまで好きだったんだな。俺は殺したいと思っても殺せなかった」と男を赦す耕平。罪の償い方は自分たちで決めれば良い。双葉を弔ってやりたい。土中から死体を掘り出し川岸で火葬の遠景。吉岡睦雄の号泣から川で戯れれヤケクソにはしゃぐ耕平とマリア。
水井真希の魅力と吉岡睦雄の巧さが光る好篇。青春Hシリーズの一作。
監督がキャストに水井さんを提案するとプロデューサーは「水井さんねぇ」と困惑したと言う。
スタッフが用意した下着のブラがAカップだった事に「私はBよ、侮辱してる」とキレ拗ね、浴室立てこもり。
血のりやポールダンスの提案での突っ走り感。
朝が弱いうえに夜更かしタイプでなかなか覚醒しない。
切通理作の水井真希とのエピソードも毎回面白すぎ。
起伏の激しい精神構造は仕事相手としては面倒な人だろうけど、見てるだけの関りだから、はそんなエピソードにさらに魅力を感じてしまう。
2作品と監督、切通氏のトークによってどんどん水井真希に魅了される。切通氏が「同時代に生きれた喜び」言うてたけど自分は生前ちゃんとこの方を認識してなかったの愚か。遅くはない、映像は残る。遅ればせながら追いたい。
神保町ネオ書房@ワンダー店
2023年1月
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「マリア狂騒曲」
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