「ナミビアの砂漠」2024年 ハピネット・ファントム・スタジオ 監督・脚本:山中瑤子
21歳のカナにとって将来について考えるのはあまりにも退屈で、自分が人生に何を求めているのかさえわからない。何に対しても情熱を持てず、恋愛ですらただの暇つぶしに過ぎなかった。同棲している恋人ホンダは家賃を払ったり料理を作ったりして彼女を喜ばせようとするが、カナは自信家のクリエイター、ハヤシとの関係を深めていくうちに、ホンダの存在を重荷に感じるようになる。
河合由実主演作ではあるけれど、これはスルーかなと思ってたけど結局観たら、とても良かった。
説明しない主義を徹底している。俳優を後ろや斜め後方からカメラで狙うのが好きな監督さんなのか?チラシメインビジュアルは河合由実の正面から狙っているが、カメラ目線では無い。他のポスタービジュアルは後ろ向きの河合由実なのも象徴的。
カナの入れたTATOOのデザインがどんなのか気になるけれど、そんな些末な事は関係ないのよと言わんばかり。鼻ピアスだって明確にアップで捕えたりしない。
???と思いながら鑑賞しているとおぼろげに登場人物の関係性やキャラクターが見えてくるので、目が離せなくなる。
それは例えば外出の準備に手間取っているカナと待ってる新しい彼氏のハヤシ。あぁ、これはハヤシの両親に挨拶に行くのだな、と思い見ていると挨拶は挨拶でも親戚の集まるバーベキューパーティの場だったりするのも意表。紹介される親戚もはっきり素性をわかるように表現はしない。なんとなくあぁ、そういう事ね。と・・・そんな事の連続。
脱毛サロンで働いているカナ。事務的な「冷たくなりまーす」がツボに嵌る。
脱毛サロンをクビになった理由だけは台詞で詳しく説明。
カナは確かに面倒臭い女である。しかし、その面倒臭さに対して彼氏さんたちの優しさが半端なくて感心する。そりゃあブチ切れたくなる時もあれば喧嘩にもなるよ。それでも基本的に無償で優しいのだ。
支配する者と支配される者というテーマは大好物であり、本作もまさに。モラハラものも大好きで本作は女性側のモラハラなんだよね。
後半になるに連れブチ切れるのはカナの方で、カナの方が次第に精神を病んで行く展開も意表を突かれた。
終盤、映画の雰囲気が二転三転するのも面白い。
カウンセラーの女性のしゃべり方がとても安心できる気持ち良さ。
「実社会ではタブーで言っては不味い事も想像するのは自由で誰にもあなたの想像領域に立ち入る事はできない」というカウンセラーの話に「ロリコンとかですか」って例えるカナ、解かり味が強くて好き。
劇伴もほとんど使っていなかった中でエンドロールで映画のタイトル由来が解り流れ始める音楽。
ちょっと違うかもしれないけれど、個人的にはライナー・ヴェルナー・ファスビンダーを思い出したりしながら観てた。
監督の山中瑤子さんはとても若い女性の才人?
これは19才で撮ったという「あみこ」も見ておきたくなった。
シネマカリテ新宿
2024年9月