「プレコード・ハリウッド」
「罪の島」1931年 米 監督:ウィリアム・A・ウェルマン
Safe in hell
娼婦のギルダは、かつて彼女をレイプした男を誤って殺す。彼女は恋人の船員の手引きでカリブ海の島に逃げ込むが・・・。二転三転する物語もさることながら、島に滞在する逃亡犯たちや凶悪な警察署長の不気味さが強烈。物語もシーンも当時としてはきわどく、ヒロインのキャラも決して”改心した娼婦”ではない。当初はバーバラ・スタンウィックがギルダ役だったが配役変更となった。
ギルダのドロシー・マッケイルがポイントで煙草を吸うシーンがあるが、マッチの擦り方、煙草の吸い方が一々カッコ良い。映画内で女性のカッコいい喫煙ナンバー・ワン(適当な事言ってら)
今回、シネマヴェーラ特集はヘイズ・コード自主規制条項(1934-1968)以前のハリウッド作品を集めている。本作も自主規制があったら出来ない表現が多々あるのだと思うが、現代の喫煙環境の中で見た時、最も規制されるべきはドロシー・マッケイルの喫煙では無かろうか。
ドロシー・マッケイのギルダは娼婦として冒頭電話に出るのだが、この時、脚線美をこれ見よがしに見せてくる。呼ばれたホテルの部屋に行ってみると、説明文では、「かつて彼女をレイプした」となっているけど、そんなに単純な事ではなく、かなり酷い目にあわされていて、ギルダが娼婦に落ちたのもこの男のせいであるようだ。徹底的に拒絶するギルダは男を殺してしまう。逃げる時にベル・ボーイに顔を見られる。部屋は煙草の火がカーテンに燃え移り火災全焼。ホテルから逃亡シーンのスピード感。
恋人の手引きで密航、カリブ海の島に向かう。船の中の木箱に隠れ紫炎をくゆらす。木箱の隙間からスマイルの歯と接吻。
島に着くと逃亡犯たちの好奇な目。ギルダの部屋の前で一列に並ぶ様子が怪しい。犬が居る。
そこへ死んだと思ったレイプ男がやってくる。生き延びていた彼は死亡したふりで保険金を騙し取り逃げてきた。再びギルダに襲い掛かるが、護身用に渡されていた拳銃で男を二度殺す。
島の裁判(かなりいい加減そう)では証拠不十分で無実となる流れであったが、罪はもう一つあると警察署長・死刑執行人。「拳銃不法所持で終身刑さ、俺の元に」と強引な求婚。
ギルダは来ない手紙を待つ恋人への愛を全うするため、裁判官に、「殺しは私がやりました」と自白。自ら死刑の道を選んだ。
恋しい恋人が島に寄ったが、悲しい別れを告げ、恋人はまた船上の人。
「執行が終わったら恋人へ電報を打ってください。おそらく海の上でしょう」
島の夕日の中、刑場に向かうギルダで完。
シネマヴェーラ渋谷
2024年9月