〈ピンク映画50周年記念特集〉
PINK FILM CHRONICLE 1962-2012番外編
日活ロマンポルノセレクション
「花と蛇」1974年 日活 監督:小沼勝
SM趣味のある社長が自分に冷たい妻を部下のサディスト青年に調教させる。団鬼六の同名小説の映画化で、ロマンポルノ初の本格的なSMもの。谷ナオミの豊満な肉体が様々なプレイによって恥辱の限りを尽くさせる。谷は本作以降”SMの嬢王”として多数の作品で観客を魅了した。
これは何年ぶりの鑑賞になるのだろうかと観ていたら、あれ?
明らかに本作は観ていない。初めて観る映画だ。記憶力が薄くたってそれくらいの事は解る。
では「花と蛇」と誤認していた谷ナオミ作品は何なんだろう?
とにかく沢山SM映画に出ているからな。そして誤認していた方がまだ原作のテイストを保っていたような・・・
そう、本作は「花と蛇」のタイトルが使われているが、団鬼六の原作とは大きく乖離している。そのせいで、当の団先生もかなり激怒したとか・・・。
小沼勝監督がやってくれちゃった訳だが、その後「花と蛇」が原作から自由に遊離した作品が送られ続けているのは小沼監督の功績?
若い頃には谷ナオミのど派手なメイクに品を感じず、好きじゃなく、日活のSM特集にも食指が動かなかったものだが、今なら大丈夫。この妖艶なエロは、あの当時では無理だった。今はかなり好きかも。
ストーリーはまったく別物。恋人との中を引き裂かれ買われるように遠山家に嫁いだ静子。遠山隆義がずっと自分を避け続ける静子を部下の石津康彦に調教依頼をするという物。この康彦が、子供の頃に体験した事件(黒人と母親の淫らな情事を目撃して黒人を射殺してしまう)が元でSの素質を持ちながらマザコン、インポ状態。ポルノショップを経営する母親は息子離れができていないという設定。実はこの母子関係、静子に傾倒していく息子を取り戻そうとする母親の行動は別の意味でなかなかの見所だったりするんだけど・・・。
社長から静子夫人の調教を依頼されてダッチワイフで緊縛の練習をするあたりから、あれ?あれ?あれ?
本格SMというより、ところどころに現れるコメディ要素に脱力する事しきり。
急に「結婚行進曲」が流れたり、
母親、藤ひろ子おばちゃんのドアップに「母さんがよなべをして〜」の曲がかかる。
何じゃ、こりゃ、小沼監督、やってくれちゃいますね。
どうもこのあたりの不思議なコメディ感覚というのは、まだ本格SM映画が定着していない時期、スタッフサイドが禁断の地に足を踏み入れる躊躇いの現れという説があるようです。・・・なるほどね。
谷ナオミの被虐の美しさや、苛められていたはずの静子が結局、周囲の男を支配しているというSM物には欠かせない逆転の結末などは、ちゃんと描かれている。
制作側の衒いの中にあって1人、SM女王としての凛とした美しさを魅せ奮闘する谷ナオミを堪能するには充分。
それでも今、見ると、これはどうにもへんてこりんな作品で、逆にその点にこそSM映画史の中の価値ある作品のようにも思える。
銀座シネパトス
PINK FILM CHRONICLE 1962-2012番外編
日活ロマンポルノセレクション
「花と蛇」1974年 日活 監督:小沼勝
SM趣味のある社長が自分に冷たい妻を部下のサディスト青年に調教させる。団鬼六の同名小説の映画化で、ロマンポルノ初の本格的なSMもの。谷ナオミの豊満な肉体が様々なプレイによって恥辱の限りを尽くさせる。谷は本作以降”SMの嬢王”として多数の作品で観客を魅了した。
これは何年ぶりの鑑賞になるのだろうかと観ていたら、あれ?
明らかに本作は観ていない。初めて観る映画だ。記憶力が薄くたってそれくらいの事は解る。
では「花と蛇」と誤認していた谷ナオミ作品は何なんだろう?
とにかく沢山SM映画に出ているからな。そして誤認していた方がまだ原作のテイストを保っていたような・・・
そう、本作は「花と蛇」のタイトルが使われているが、団鬼六の原作とは大きく乖離している。そのせいで、当の団先生もかなり激怒したとか・・・。
小沼勝監督がやってくれちゃった訳だが、その後「花と蛇」が原作から自由に遊離した作品が送られ続けているのは小沼監督の功績?
若い頃には谷ナオミのど派手なメイクに品を感じず、好きじゃなく、日活のSM特集にも食指が動かなかったものだが、今なら大丈夫。この妖艶なエロは、あの当時では無理だった。今はかなり好きかも。
ストーリーはまったく別物。恋人との中を引き裂かれ買われるように遠山家に嫁いだ静子。遠山隆義がずっと自分を避け続ける静子を部下の石津康彦に調教依頼をするという物。この康彦が、子供の頃に体験した事件(黒人と母親の淫らな情事を目撃して黒人を射殺してしまう)が元でSの素質を持ちながらマザコン、インポ状態。ポルノショップを経営する母親は息子離れができていないという設定。実はこの母子関係、静子に傾倒していく息子を取り戻そうとする母親の行動は別の意味でなかなかの見所だったりするんだけど・・・。
社長から静子夫人の調教を依頼されてダッチワイフで緊縛の練習をするあたりから、あれ?あれ?あれ?
本格SMというより、ところどころに現れるコメディ要素に脱力する事しきり。
急に「結婚行進曲」が流れたり、
母親、藤ひろ子おばちゃんのドアップに「母さんがよなべをして〜」の曲がかかる。
何じゃ、こりゃ、小沼監督、やってくれちゃいますね。
どうもこのあたりの不思議なコメディ感覚というのは、まだ本格SM映画が定着していない時期、スタッフサイドが禁断の地に足を踏み入れる躊躇いの現れという説があるようです。・・・なるほどね。
谷ナオミの被虐の美しさや、苛められていたはずの静子が結局、周囲の男を支配しているというSM物には欠かせない逆転の結末などは、ちゃんと描かれている。
制作側の衒いの中にあって1人、SM女王としての凛とした美しさを魅せ奮闘する谷ナオミを堪能するには充分。
それでも今、見ると、これはどうにもへんてこりんな作品で、逆にその点にこそSM映画史の中の価値ある作品のようにも思える。
銀座シネパトス