「わいせつステージ　何度もつっこんで」

「わいせつステージ　何度もつっこんで」2005年　新東宝　監督：後藤大輔
シナリオタイトル：｢言い出しかねて｣

チビな腹話術師・大助のもとに、ファンだという盲目の少女・ヒカリが訪ねてくる。彼女は大助の声を聴いて彼に花束を手渡したが、受け取ったのはそこに居合わせた大助の弟子・洋一だった。長身な洋一を大助だと勘違いしたまま、のぼせ上がるヒカリを前に、大助と洋一はふたり一緒に彼女とデートをすることを決心。声は大助、身体は洋一と担当を振り分けたまま逢瀬を重ねるが…。

後藤大輔監督の傑作ピンク。

所謂、女性でも安心して観れるピンクで一般上映されても問題無い純愛・悲恋もの。実際に当時一般上映されたのかもしれない。
相変わらずワケの解らんピンクタイトルと違って元のシナリオタイトルがとっても物語に合っていて良い。
「言い出しかねて」
そう･･･I Can't Get Started
ですもの。

流行らない寄席小屋と時代に取り残された腹話術。喧嘩ばかりしている漫才の師匠。
腹話術師大助の弟子洋一は席亭未亡人と出来ていていつの間にか師である大助を使う側に、とかなり好ましいユーモアの中で描かれるピュアな愛が、とてえも切ない物語。

腹話術の設定そのままに3人デートで洋一の代わりに声だけ担当する大助。通常の腹話術とは逆に大柄な洋一を使っての芸。ある時は洋一の膝の上に乗っかり声を担当というのも上手い。

だが、とうとうホテルにまで行ってしまって、良い思いをするのは肉体担当の洋一ばかり。
女に手の早い洋一と、芸人仲間から疎まれていたり孤独で彼女も居ないバツイチ大助の対比も良い。
抱き合う洋一とヒカリの横で同じように一人腰を使う大助はあまりにもせつないでしょう。

盲目のヒカリは体験3人目と言っていたがこれは障害者の強がりで本当は初めてだったんですね。
それを知った大助の心情もとても巧みな演出で描かれるんで、ここらはかなりキュンと来ます。

実際のところ、盲目となって他の感覚が鋭くなっているヒカリなのでいくら何でも相手が2人なのは解るでしょう。という物語上の嘘があって、どうなのかなと疑問符で眺めていましたが、そんな嘘を帳消しにしてしまうほど良いのがヒカリ役・向夏の自然でピュアな演技なのです。

ビアガーデンで洋一に手を握られ「優しくされると弱い人」とかヘンテコな言葉使いで過去を語るのもとっても良い。
また、盲目の風俗嬢なのかなと思わせておいてイメクラの向いの鍼灸院に勤めているという演出もヒカリのキャラ設定に効果的。

コンプレックスが元で言い出しかねて
その心情を解ってあげられなくて･･･
目出度く2人の愛は結ばれるのですが、大助には過酷なシナリオが待っています。しかしながら悲痛さはありません。
まるでラストはハッピーエンドのようでした。