「映画史上の名作5」
「天国は待ってくれる」1943年 米 監督:エルンスト・ルビッチ
原題:Heaven Can Wait
生前の浮気癖故に地獄行きを覚悟したヘンリー。閻魔大王の前で、妻のマーサがいるにも関わらず、女性遍歴を繰り返した自分の生涯を回想するが…。男女の心理の機微を、洗練されたユーモアと心温まるストーリーで描き、観る者すべてを幸福にせずにはおかないルビッチ最晩年の傑作。テクニカラーの美しさを今こそ堪能されたい!
上流階級の甘ちゃん息子のドンファン、ヘンリー(ドン・アメチー)を主人公としたスクリューボール・コメディ。
「これまでの人生を振り返れば、自分は地獄行きで当然だ」というヘンリー。
「皆が、私の顔を覗き込んで、私の事を褒めていたから、ああ、自分は死んだのだなと悟った」というヘンリー。
いったいどのような極悪なプレイ・ボーイ、ダメ男ぶりなのかと人生を追っていくのだけれど、これがちっとも極悪じゃない。女に目がない、女ったらしという事だけで地獄に落ちなきゃいけないんだったら大変です。
優等生の従兄弟、アルバートから婚約者を略奪(しかも2度までも)したのだから親族から見れば問題児ですがね。
何しろ、このヘンリー君、浮気はするけど(その辺りの描写も敢て控えめにしてある)いつでも奥さんを愛している事は明確。
妻も愛想をつけて駆け落ちから10年、一度は逃げ出すけれど、「10年間は十分幸福で、否定される物でない」と見栄でもなんでもなく本心で言っているみたいです。
女に手は早いけれど、1人の女もまともに愛せないダメ男等に比べれば、立派なものであり、その人生は幸福であるという事です。
そんな簡単な事に気づかず「自分は地獄行きで当然だ」と思い込んでいる所がいかにもお坊ちゃんなんでしょうね。
ただ、10年後、家出した妻が、何とか取り成そうとする夫の手口を知り尽くしていて、なかなか許さない辺り。この辺がヘンリーのわがまま、ダメ坊やぶりを想像する事ができる唯一の場面として、ワクワクする。それでも地獄行きでは無いでしょう。
ヘンリー・ヴァン・クリーヴのドン・アメチーとマーサのジーン・ティアニーが青年から老齢にいたるまで、老けメイクで演じます。
両人の老け方がとても自然で見事。
特にジーン・ティアニーの若いころの美しさ、可愛らしさ。そして白髪の混じった、老けメイクになっても品が漂いとっても素敵な麗夫人。
脇役のキャラクターも優れ、親族の中で何故か気の会う祖父のヒューゴ(チャールズ・コバーン)とか
決して直接、口を利くことのないマーサの不仲な両親。(ユージン・バレットとマージョリー・メイン)
長いテーブルの両脇で使用人を介して新聞の取り合いをするギャグは秀逸。
勘当した娘の帰還では、娘版火事息子の如き人情も垣間見え、この仲が悪いまま暮らし続ける父、母の夫婦からでさえも、何故か人生の幸福感が漂うから不思議です。
アメリカが戦時中に作ったロマンチック・コメディ。テクニカラーの鮮やかな色合いの中、ファンタジーの世界へ誘われます。
シネマヴェーラ渋谷
「天国は待ってくれる」1943年 米 監督:エルンスト・ルビッチ
原題:Heaven Can Wait
生前の浮気癖故に地獄行きを覚悟したヘンリー。閻魔大王の前で、妻のマーサがいるにも関わらず、女性遍歴を繰り返した自分の生涯を回想するが…。男女の心理の機微を、洗練されたユーモアと心温まるストーリーで描き、観る者すべてを幸福にせずにはおかないルビッチ最晩年の傑作。テクニカラーの美しさを今こそ堪能されたい!
上流階級の甘ちゃん息子のドンファン、ヘンリー(ドン・アメチー)を主人公としたスクリューボール・コメディ。
「これまでの人生を振り返れば、自分は地獄行きで当然だ」というヘンリー。
「皆が、私の顔を覗き込んで、私の事を褒めていたから、ああ、自分は死んだのだなと悟った」というヘンリー。
いったいどのような極悪なプレイ・ボーイ、ダメ男ぶりなのかと人生を追っていくのだけれど、これがちっとも極悪じゃない。女に目がない、女ったらしという事だけで地獄に落ちなきゃいけないんだったら大変です。
優等生の従兄弟、アルバートから婚約者を略奪(しかも2度までも)したのだから親族から見れば問題児ですがね。
何しろ、このヘンリー君、浮気はするけど(その辺りの描写も敢て控えめにしてある)いつでも奥さんを愛している事は明確。
妻も愛想をつけて駆け落ちから10年、一度は逃げ出すけれど、「10年間は十分幸福で、否定される物でない」と見栄でもなんでもなく本心で言っているみたいです。
女に手は早いけれど、1人の女もまともに愛せないダメ男等に比べれば、立派なものであり、その人生は幸福であるという事です。
そんな簡単な事に気づかず「自分は地獄行きで当然だ」と思い込んでいる所がいかにもお坊ちゃんなんでしょうね。
ただ、10年後、家出した妻が、何とか取り成そうとする夫の手口を知り尽くしていて、なかなか許さない辺り。この辺がヘンリーのわがまま、ダメ坊やぶりを想像する事ができる唯一の場面として、ワクワクする。それでも地獄行きでは無いでしょう。
ヘンリー・ヴァン・クリーヴのドン・アメチーとマーサのジーン・ティアニーが青年から老齢にいたるまで、老けメイクで演じます。
両人の老け方がとても自然で見事。
特にジーン・ティアニーの若いころの美しさ、可愛らしさ。そして白髪の混じった、老けメイクになっても品が漂いとっても素敵な麗夫人。
脇役のキャラクターも優れ、親族の中で何故か気の会う祖父のヒューゴ(チャールズ・コバーン)とか
決して直接、口を利くことのないマーサの不仲な両親。(ユージン・バレットとマージョリー・メイン)
長いテーブルの両脇で使用人を介して新聞の取り合いをするギャグは秀逸。
勘当した娘の帰還では、娘版火事息子の如き人情も垣間見え、この仲が悪いまま暮らし続ける父、母の夫婦からでさえも、何故か人生の幸福感が漂うから不思議です。
アメリカが戦時中に作ったロマンチック・コメディ。テクニカラーの鮮やかな色合いの中、ファンタジーの世界へ誘われます。
シネマヴェーラ渋谷