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Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
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西村賢太・編 「藤澤清造短編集」

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昨年読んだ本だす。あれ、いや、もっと前だったかな。
面白かったんだけど、既に内容をほとんど思い出せなくなっていたのと、何か新しい本で読みたいものが見つからないものだから再読してみた。

藤澤清造短篇集 (新潮文庫)藤澤清造新潮社発売日:2012-02-27ブクログでレビューを見る»

読み返すうちにだんだん記憶が甦って来た。
自ら歿後弟子を名乗る西村賢太氏の小説が売れなければ、我々などなかなか知る事さえなかったであろう大正の幻の私小説作家、藤澤清造。
西村氏の目標はあくまで全集の出版という事なのだろうが、こうして文庫本で短編集が出版される。弟子が芥川賞など取って人気作家になったがために、全集出版以上の功績となったわけで、それに触れる事ができたというのは西村氏に感謝せねばならんね。
確かに古臭いのだけれど、そこが良いのだ。個人的には新進の若手作家の作品を読んでいるよりよっぽど楽しい。

貧困文学。
西村氏に大きく影響を与えたであろう事がすぐ解る執念深く借金の算段に明け暮れる「刈入れ時」が圧倒的に面白い。
貧困故に病気の母親をも足手まといとして、その死を強く願という「母を殺す」もお気に入りだ。
西村賢太がどのようにして出来あがってきたのか、西村賢太の原点を見る思いで、面白い。

そして巻末に添えられた戯曲2篇の面白い事ったらない。
弟子による解説でも触れているように藤澤清造の戯曲は、回りくどさがあり上場に不向きなのかもしれない。
また高座にかけるにしても中途半端に古めかしくて、かなり脚色に工夫と技量が問われるだろう。
しかし、活字で読むとこんなにも面白いのだ。

元来、戯曲というのは苦手で、このように短編集の中にあったりすると、その分だけ読み飛ばしてしまう事も少なくないのだけれど、戯曲を読む楽しみというのを実感した。こんなの若い頃に読んだチェーホフ以来かもしれない。

歿後弟子による解説も、勝手にしてくれろと呆れるほど愛情に溢れていて微笑ましい。

一夜
ウィスキーの味
刈入れ時
女地獄
母を殺す
犬の出産
殖える癌腫
ペンキの塗立
豚の悲鳴
槍とピストル
敵の取れるまで
(戯曲)恥
(戯曲)嘘

トップ画像は本短編集収録の清造戯曲「恥」の上演舞台写真。

さてこうなると次は代表作の長編「根津権現裏」という事になるが、今や既に書店では入手が難しくなっちゃってる。また、マーケットプレイス頼みだな。

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