「ラストタンゴ・イン・パリ」1972年 伊 監督:ベルナルド・ベルトルッチ
パリのアパルトマンの空室でうらぶれた中年男(マーロン・ブランド)とブルジョア系の若い娘ジャンヌ(マリア・シュナイダー)は単に部屋を探していた身であったが、間違って掛かってきた電話の男に刺激され、男はジャンヌを犯す。ジャンヌにはれっきとしたTVディレクターのトム(ジャン=ピエール・レオー)という恋人が居たものの、アパートで会う時は互いにただのオス・メスとして行為に更ける。やがて男には暗い過去が明らかになり、実は男には自殺した妻が居たという。男はジャンヌを牝の肉玩と見なしていたが、次第に2人の立場が逆転していき男が中年の醜い姿を晒した時、二人の間の肉欲の関係は終わりを告げる……。
公開当時センセーションを巻き起こした本作。勿論その頃はまだそんな映画を見に行ける年齢に達しておらず、好奇心満々で指を咥えていたもんです。
いつかは見たいと思っていたのに、機会を逃して時ばかり経ちました。今更見るのも何だなという心境でありましたが、先日主演女優さんの訃報を目にして、その女優としては不遇に終わった生涯に興味をそそられました。
追悼の意味を込めてレンタル、深夜鑑賞。
「ラストタンゴ・イン・パリ」仏女優マリア・シュナイダーさん58歳で死去
記事抜粋
「ラストタンゴ・イン・パリ」の主演女優マリア・シュナイダーが、がんのため58年の生涯に幕を閉じた。
同作でマーロン・ブランド(当時48歳)の相手役に選ばれた時のマリアは19歳。後年、マリアは同作のベルナルド・ベルトルッチ監督に「利用された」と主張し、“ギャング、またはヒモ”のような監督に大胆なシーンの撮影を強要されたことが精神的トラウマになったとして、「中年のおじさんが『これはアートだ』という時には、 絶対に信じて服を脱いだりしてはいけないという教訓を学んだ」と英ガーディアン紙のインタビューで語ったことがあった。
「ラストタンゴ・イン・パリ」はマリアをスターにしたが、同時に、前途ある若き女優のキャリアを蝕んだ。以降もいくつかの映画に出演するが、ドラッグ依存症とメンタルヘルス上の問題でキャリアが先細り、結局は最後まで「ラストタンゴ・イン・パリ」の女優と呼ばれ続けた。
彼女の訃報を受け、イタリアからベルトルッチ監督が声明を発表した。「あの映画の、予想外の、そして残酷なまでの成功に耐えるには、彼女は若すぎた。自分の若き日を略奪されたとしてマリアが私を非難していたのも、全く根拠がなかったわけではないと今は思っている。少なくとも一度、彼女に謝罪をしておくべきだった」
そのマリア・シュナイダーさん、決して美人とはいえない狸顔をベルトリッチ監督は綺麗に見せるよう撮ってくれていると思う。ジーンズの似合う彼女はチャーミングでした。
ただ途中からチリチリに変えた髪形がよろしくない。中年男と出会った日の髪形、帽子、コートにミニスカートがキュートだったのに・・・
問題のセックス描写については予想通り、今見るといたって平凡。
唯一、最初に犯すマーロン・ブランドのほぼ即ハメのシーンのみが刺激的。
バターを使ったアナル・セックスにしても、映画史上初のAF描写という歴史的価値以上のものは無い。
それよりも中年のマーロン・ブランドがやっぱり凄い。妻に自殺されて呆然としていながらの不意をつく即ハメは反則だよ。
若い女の身体に溺れながらもふと、部屋の片隅で涙にくれる様も計算済みの如し。
女房の遺体に向き合って後、マリアとの再会以降の立場の逆転、情けないストーカー的な状況も面白い。
あのタンゴコンテストに乱入する酔いっぷり。
マーロン・ブランドも凄いが、撮った監督の年齢を聞くと2度ビックリ。
結局、猥褻かアートかと問われれば、明らかにアートでしょう。(現代で見るからでしょうか)
その証拠に数多いセックス・シーンよりもパリの景色の素晴らしさばかりが印象に残ります(プラットフォームの広告看板、工事現場の仮囲い、高架のビルアケム橋は特に印象的)し、2人が立てこもった古いアパート、そのアンティークなエレベーター。
そんな風景の中にマリア・シュナイダーのボリュームあるヘアがあしらわれているのでした。
マリア・シュナイダー(1952年3月27日 − 2011年2月3日)
ご冥福をお祈りいたします。
パリのアパルトマンの空室でうらぶれた中年男(マーロン・ブランド)とブルジョア系の若い娘ジャンヌ(マリア・シュナイダー)は単に部屋を探していた身であったが、間違って掛かってきた電話の男に刺激され、男はジャンヌを犯す。ジャンヌにはれっきとしたTVディレクターのトム(ジャン=ピエール・レオー)という恋人が居たものの、アパートで会う時は互いにただのオス・メスとして行為に更ける。やがて男には暗い過去が明らかになり、実は男には自殺した妻が居たという。男はジャンヌを牝の肉玩と見なしていたが、次第に2人の立場が逆転していき男が中年の醜い姿を晒した時、二人の間の肉欲の関係は終わりを告げる……。
公開当時センセーションを巻き起こした本作。勿論その頃はまだそんな映画を見に行ける年齢に達しておらず、好奇心満々で指を咥えていたもんです。
いつかは見たいと思っていたのに、機会を逃して時ばかり経ちました。今更見るのも何だなという心境でありましたが、先日主演女優さんの訃報を目にして、その女優としては不遇に終わった生涯に興味をそそられました。
追悼の意味を込めてレンタル、深夜鑑賞。
「ラストタンゴ・イン・パリ」仏女優マリア・シュナイダーさん58歳で死去
記事抜粋
「ラストタンゴ・イン・パリ」の主演女優マリア・シュナイダーが、がんのため58年の生涯に幕を閉じた。
同作でマーロン・ブランド(当時48歳)の相手役に選ばれた時のマリアは19歳。後年、マリアは同作のベルナルド・ベルトルッチ監督に「利用された」と主張し、“ギャング、またはヒモ”のような監督に大胆なシーンの撮影を強要されたことが精神的トラウマになったとして、「中年のおじさんが『これはアートだ』という時には、 絶対に信じて服を脱いだりしてはいけないという教訓を学んだ」と英ガーディアン紙のインタビューで語ったことがあった。
「ラストタンゴ・イン・パリ」はマリアをスターにしたが、同時に、前途ある若き女優のキャリアを蝕んだ。以降もいくつかの映画に出演するが、ドラッグ依存症とメンタルヘルス上の問題でキャリアが先細り、結局は最後まで「ラストタンゴ・イン・パリ」の女優と呼ばれ続けた。
彼女の訃報を受け、イタリアからベルトルッチ監督が声明を発表した。「あの映画の、予想外の、そして残酷なまでの成功に耐えるには、彼女は若すぎた。自分の若き日を略奪されたとしてマリアが私を非難していたのも、全く根拠がなかったわけではないと今は思っている。少なくとも一度、彼女に謝罪をしておくべきだった」
そのマリア・シュナイダーさん、決して美人とはいえない狸顔をベルトリッチ監督は綺麗に見せるよう撮ってくれていると思う。ジーンズの似合う彼女はチャーミングでした。
ただ途中からチリチリに変えた髪形がよろしくない。中年男と出会った日の髪形、帽子、コートにミニスカートがキュートだったのに・・・
問題のセックス描写については予想通り、今見るといたって平凡。
唯一、最初に犯すマーロン・ブランドのほぼ即ハメのシーンのみが刺激的。
バターを使ったアナル・セックスにしても、映画史上初のAF描写という歴史的価値以上のものは無い。
それよりも中年のマーロン・ブランドがやっぱり凄い。妻に自殺されて呆然としていながらの不意をつく即ハメは反則だよ。
若い女の身体に溺れながらもふと、部屋の片隅で涙にくれる様も計算済みの如し。
女房の遺体に向き合って後、マリアとの再会以降の立場の逆転、情けないストーカー的な状況も面白い。
あのタンゴコンテストに乱入する酔いっぷり。
マーロン・ブランドも凄いが、撮った監督の年齢を聞くと2度ビックリ。
結局、猥褻かアートかと問われれば、明らかにアートでしょう。(現代で見るからでしょうか)
その証拠に数多いセックス・シーンよりもパリの景色の素晴らしさばかりが印象に残ります(プラットフォームの広告看板、工事現場の仮囲い、高架のビルアケム橋は特に印象的)し、2人が立てこもった古いアパート、そのアンティークなエレベーター。
そんな風景の中にマリア・シュナイダーのボリュームあるヘアがあしらわれているのでした。
マリア・シュナイダー(1952年3月27日 − 2011年2月3日)
ご冥福をお祈りいたします。