名画座サスペンス劇場 第2幕「松本清張特選映画集」
「張込み」1958年 松竹 監督:野村芳太郎
警視庁捜査第一課の下岡(宮口精二)と柚木(大木実)は、質屋殺しの共犯石井(田村高弘)を追って佐賀へ発った。主犯の自供によると、石井は兇行に使った拳銃を持っていて、三年前上京の時別れた女さだ子(高峰秀子)に会いたがっていたと言う。さだ子は今は佐賀の銀行員横川の後妻となっていた。石井の立寄った形跡はまだなく、両刑事はその家の前の木賃宿然とした旅館で張込みを開始した。さだ子はもの静かな女で、熱烈な恋愛の経験があるとは見えず、二十以上も年の違う夫を持ち、不幸そうだった。猛暑の中で昼夜の別なく張込みが続けられる…。
野村芳太郎の松本清張もの第一作であり、名作と言われるだけあって、見応え充分。
原作も読んでないし、何度となく映画やドラマになった物も見ていないので面白さを楽しめた。
リアルを追求した作品作り。
物語は昭和30年代で風景や鉄道の様子はレトロ感覚に溢れているし、女の幸福という面にも古めかしい所が残っているにも関わらず、作品として古さをあまり感じさせない。
柚木刑事と下岡刑事がお誂え向きの宿屋の2階から、石井の元恋人、さだ子を見張り続ける。
原作と違い、刑事を2人組にしたと言う。これは大正解(原作読んどらんが)でしょう。張込みの苦労や、今回がいくらかましな仕事(宿で寝てばかりいられる)であるか、等もさりげなくしゃべらせている。
カメラはほとんど刑事視線なので、両刑事とともに平凡な人妻、高峰秀子を覗き見、ストーカーする楽しみを味わえます。
この高峰秀子が、ホント素晴らしいんです。
後半にかけて、ほとんど遠景、俯瞰の中にいて淡々とした生活を不幸そうに送っている、女を演じる。
この遠目の演技が後半、石井との高原での再会シーンで柚木刑事が「これが自分が6日間、見張り続けてきた女だろうか」と呟かせる、積極的接吻・抱擁と情熱を交わす台詞などに生きてくる。
少女じゃない高峰秀子も凄いんだという事を認識させられました。
「この女は数時間の生命を燃やしたに過ぎない。明日からまた、あんな情熱が潜んでいようとは思えないようにミシンを踏んでいるだろう・・・」
さだ子を見続けた事により、女の幸福について考えさせられた柚木刑事の行動。自分の恋人にはっきり結婚の意志を打電するなども微笑ましい展開。
また、殺人犯、石井にしても大した役を担った訳でない。凶悪とは程遠い朴訥な青年。
再起を励ます柚木刑事の言葉に急行「西海」の東京までの停車駅を並べるアナウンスの入るラストも最高に決まってるし、爽快な気持ちにもなる。
行きの下り急行「薩摩」の三等車、20時間を掛けての車中の描写もお値打ち。
記者の目をくらまし、横浜から乗車。席を取れずに九州まで行く行程の大変さを丁寧に描いている。
もちろん冷房なんかないし、通路に座り込んだ柚木刑事がおもむろに煙草をふかしちゃったりする。
分煙にも慣れてしまった現代人からは想像を絶する長旅苦行ですよね。
銀座シネパトス
「張込み」1958年 松竹 監督:野村芳太郎
警視庁捜査第一課の下岡(宮口精二)と柚木(大木実)は、質屋殺しの共犯石井(田村高弘)を追って佐賀へ発った。主犯の自供によると、石井は兇行に使った拳銃を持っていて、三年前上京の時別れた女さだ子(高峰秀子)に会いたがっていたと言う。さだ子は今は佐賀の銀行員横川の後妻となっていた。石井の立寄った形跡はまだなく、両刑事はその家の前の木賃宿然とした旅館で張込みを開始した。さだ子はもの静かな女で、熱烈な恋愛の経験があるとは見えず、二十以上も年の違う夫を持ち、不幸そうだった。猛暑の中で昼夜の別なく張込みが続けられる…。
野村芳太郎の松本清張もの第一作であり、名作と言われるだけあって、見応え充分。
原作も読んでないし、何度となく映画やドラマになった物も見ていないので面白さを楽しめた。
リアルを追求した作品作り。
物語は昭和30年代で風景や鉄道の様子はレトロ感覚に溢れているし、女の幸福という面にも古めかしい所が残っているにも関わらず、作品として古さをあまり感じさせない。
柚木刑事と下岡刑事がお誂え向きの宿屋の2階から、石井の元恋人、さだ子を見張り続ける。
原作と違い、刑事を2人組にしたと言う。これは大正解(原作読んどらんが)でしょう。張込みの苦労や、今回がいくらかましな仕事(宿で寝てばかりいられる)であるか、等もさりげなくしゃべらせている。
カメラはほとんど刑事視線なので、両刑事とともに平凡な人妻、高峰秀子を覗き見、ストーカーする楽しみを味わえます。
この高峰秀子が、ホント素晴らしいんです。
後半にかけて、ほとんど遠景、俯瞰の中にいて淡々とした生活を不幸そうに送っている、女を演じる。
この遠目の演技が後半、石井との高原での再会シーンで柚木刑事が「これが自分が6日間、見張り続けてきた女だろうか」と呟かせる、積極的接吻・抱擁と情熱を交わす台詞などに生きてくる。
少女じゃない高峰秀子も凄いんだという事を認識させられました。
「この女は数時間の生命を燃やしたに過ぎない。明日からまた、あんな情熱が潜んでいようとは思えないようにミシンを踏んでいるだろう・・・」
さだ子を見続けた事により、女の幸福について考えさせられた柚木刑事の行動。自分の恋人にはっきり結婚の意志を打電するなども微笑ましい展開。
また、殺人犯、石井にしても大した役を担った訳でない。凶悪とは程遠い朴訥な青年。
再起を励ます柚木刑事の言葉に急行「西海」の東京までの停車駅を並べるアナウンスの入るラストも最高に決まってるし、爽快な気持ちにもなる。
行きの下り急行「薩摩」の三等車、20時間を掛けての車中の描写もお値打ち。
記者の目をくらまし、横浜から乗車。席を取れずに九州まで行く行程の大変さを丁寧に描いている。
もちろん冷房なんかないし、通路に座り込んだ柚木刑事がおもむろに煙草をふかしちゃったりする。
分煙にも慣れてしまった現代人からは想像を絶する長旅苦行ですよね。
銀座シネパトス