読書から遠ざかっている。老眼の進行に加速度がかかっていてとても億劫なんです。それでも月に数度は書店をブラブラ物色しているんだけれど、読まなきゃいけない物は多くても、今、読みたい物がなかなか見つからない。
と言うことでまたまたアンソロジー物に行きました。
手にとってページを開くと、嬉しい事に活字級数が大きめ。
若い頃は文庫本で大き目な活字に出くわすと損した気持ちになったり、読んでいて落ち着かななかったりしたもんだが、今や感覚は180度転換。
やはり、この手の時代のかかったアンゾロジーはターゲットが老眼層って事なんでしょうね。
新潮文庫100年記念出版
「日本文学100年の名作 第1巻(1914-1923)」
池内紀・川本三郎・松田哲夫=編
荒畑寒村「父親」1915年
反戦・社会主義者・労働運動家である荒畑寒村の文章に初めて触れる。こんな小説も書いたんですね。ド田舎の吉祥寺。写真やフィルムでも見てみたい。
森鴎外「寒山拾得」1916年
これは中学か高校の時読んでるはず。中国漢字が多く読みづらいと思ったくらい。盲目的な尊敬を批判したものというが、そんな事より何ともユーモラスな所が好き。痴れた僧、寒山・拾得。寒山拾得というお笑いコンビがあってもおかしくない。添えた縁起が粋で本編にさらなる魅力を与える。
佐藤春夫「指紋」1918年
春夫ちゃんは相変わらず妙な英語を差し挟んでくる所がウザいのだけど、時代だからしょうがない。しかし、この探偵小説ばりの幻想中編は読みごたえあり面白い。狂人の戯言と思われる推理がだんだん真相となっていく展開は下手な謎解きよりも数倍エンターテイメントじゃん。
谷崎潤一郎「小さな王国」1918年
凄い、こんなの絶対谷崎先生じゃなきゃ書けない。小学生による独裁政治の恐怖。沼倉さん!
宮地嘉六「ある職工の手記」1919年
プロレタリア文学に位置付けされるんでしょうか。継母との折り合い悪く不遇な貧困少年が海軍工廠で職工として成長していく。気持ち良い物語。
芥川龍之介「妙な話」1921年
古さでもって輝く作品。ましてや芥川ですから。幻想文学、赤帽の存在が時代を象徴していて堪らない魅力。ドッペルゲンゲル。
内田百「件」1921年
内田百はもっと読まなあかんと思ってる。これは読んだことあるかもしれない。くだん、牛人間の悲哀とそこはかとないユーモア。
・・・ん、そっか門構えに月は表示できんようだ。可哀想なひゃっけんさん。
長谷川如是閑「象やの粂さん」1921年
江戸の風が吹くような文体。象使いという題材が実に新鮮。酔って饒舌になる粂さんの貴族批判が面白い。娘の身のふり方が気になる。面白かった。
宇野浩二「夢見る部屋」1922年
妄想が妄想を呼ぶ、拘りから抜けきれない。当然こういうの大好き。博覧会で街の風景が変わっていく様の切り取り方がブンガク。
稲垣足穂「黄漠奇聞」1923年
少年愛の稲垣足穂の小説初めて読む。勝手な想像であったが、その想像ははずれていなかった・・・、苦手です。これ1編だけでは解りませんが・・・
ここで読書ペース急降下。神話で遊んでみました的な。
江戸川乱歩「二銭銅貨」1923年
あれ?これ読んでなかったかしら。有名な一編なんですけど・・・。読み進めても記憶が蘇らないからきっと初めて。「いくらなんでもそんなおもちゃ贋札で取り締まられるだろう。」突っ込みを入れるなかれ。探偵小説黎明期の豊穣さを楽しめば良い。選者の池内紀も申しております。
全10巻だというのだから、当分、このシリーズで読書は賄っていけそうです。
TOP画像 寒山拾得図/曽我蕭白
日本文学100年の名作第1巻1914-1923 夢見る部屋 (新潮文庫)著者 : 新潮社発売日 : 2014-08-28ブクログでレビューを見る»
と言うことでまたまたアンソロジー物に行きました。
手にとってページを開くと、嬉しい事に活字級数が大きめ。
若い頃は文庫本で大き目な活字に出くわすと損した気持ちになったり、読んでいて落ち着かななかったりしたもんだが、今や感覚は180度転換。
やはり、この手の時代のかかったアンゾロジーはターゲットが老眼層って事なんでしょうね。
新潮文庫100年記念出版
「日本文学100年の名作 第1巻(1914-1923)」
池内紀・川本三郎・松田哲夫=編
荒畑寒村「父親」1915年
反戦・社会主義者・労働運動家である荒畑寒村の文章に初めて触れる。こんな小説も書いたんですね。ド田舎の吉祥寺。写真やフィルムでも見てみたい。
森鴎外「寒山拾得」1916年
これは中学か高校の時読んでるはず。中国漢字が多く読みづらいと思ったくらい。盲目的な尊敬を批判したものというが、そんな事より何ともユーモラスな所が好き。痴れた僧、寒山・拾得。寒山拾得というお笑いコンビがあってもおかしくない。添えた縁起が粋で本編にさらなる魅力を与える。
佐藤春夫「指紋」1918年
春夫ちゃんは相変わらず妙な英語を差し挟んでくる所がウザいのだけど、時代だからしょうがない。しかし、この探偵小説ばりの幻想中編は読みごたえあり面白い。狂人の戯言と思われる推理がだんだん真相となっていく展開は下手な謎解きよりも数倍エンターテイメントじゃん。
谷崎潤一郎「小さな王国」1918年
凄い、こんなの絶対谷崎先生じゃなきゃ書けない。小学生による独裁政治の恐怖。沼倉さん!
宮地嘉六「ある職工の手記」1919年
プロレタリア文学に位置付けされるんでしょうか。継母との折り合い悪く不遇な貧困少年が海軍工廠で職工として成長していく。気持ち良い物語。
芥川龍之介「妙な話」1921年
古さでもって輝く作品。ましてや芥川ですから。幻想文学、赤帽の存在が時代を象徴していて堪らない魅力。ドッペルゲンゲル。
内田百「件」1921年
内田百はもっと読まなあかんと思ってる。これは読んだことあるかもしれない。くだん、牛人間の悲哀とそこはかとないユーモア。
・・・ん、そっか門構えに月は表示できんようだ。可哀想なひゃっけんさん。
長谷川如是閑「象やの粂さん」1921年
江戸の風が吹くような文体。象使いという題材が実に新鮮。酔って饒舌になる粂さんの貴族批判が面白い。娘の身のふり方が気になる。面白かった。
宇野浩二「夢見る部屋」1922年
妄想が妄想を呼ぶ、拘りから抜けきれない。当然こういうの大好き。博覧会で街の風景が変わっていく様の切り取り方がブンガク。
稲垣足穂「黄漠奇聞」1923年
少年愛の稲垣足穂の小説初めて読む。勝手な想像であったが、その想像ははずれていなかった・・・、苦手です。これ1編だけでは解りませんが・・・
ここで読書ペース急降下。神話で遊んでみました的な。
江戸川乱歩「二銭銅貨」1923年
あれ?これ読んでなかったかしら。有名な一編なんですけど・・・。読み進めても記憶が蘇らないからきっと初めて。「いくらなんでもそんなおもちゃ贋札で取り締まられるだろう。」突っ込みを入れるなかれ。探偵小説黎明期の豊穣さを楽しめば良い。選者の池内紀も申しております。
全10巻だというのだから、当分、このシリーズで読書は賄っていけそうです。
TOP画像 寒山拾得図/曽我蕭白
日本文学100年の名作第1巻1914-1923 夢見る部屋 (新潮文庫)著者 : 新潮社発売日 : 2014-08-28ブクログでレビューを見る»