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Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
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「東京の恋人」

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「成瀬になれなかった男 映画作家・千葉泰樹」

「東京の恋人」1952年 東宝 監督:千葉泰樹

戦後の荒廃から立ち直りつつある銀座界隈を舞台に、若者達がニセ指輪を巡る事件に巻き込まれる大騒動を描く。お転婆な似顔絵描き役の原節子のキャピキャピ演技が弾ける楽しい一本。パチンコ玉屋の社長を巡る正妻と愛人の戦いの破壊力も凄まじい。

かなり明るい作風なので楽しめました。
先ごろ亡くなった原節子追悼の意味も込めて。
じつは原節子の大作りな顔面パーツが苦手。美人にゃ違わないけど。
ここではベレー帽などを被って、戦後の貧しい大道似顔絵描きのユキ役。
三銃士を気取る靴磨きの3人組の姉貴的存在。芝居の明るさと相変わらず美しい言葉使いが原節子への苦手意識を緩和してくれる。
それにしても顔パーツだけでなく、圧倒的にグラマーだな。
ブローカー黒川の三船敏郎もニセもの宝石作りを爽やかに演じる。喉の方も「荒城の月」を朗々と歌ってくれる大サービス。

途中、正義感の強いユキと黒川が口喧嘩になる。ユキはニセ物を作って生業にしている人間が許せないらしいが、ここは論理的に黒川の方が明らかに正しいでしょう。
喧嘩の後、友人の薄幸の娘(杉葉子)が病に倒れ、母親上京の折に嘘の一芝居をうってもらわなくちゃならない事情になってユキが黒川の元へ懇願に行くが、当然断わられる。
しかも黒川はやけになって酔っぱらってやがる。
いかにして、芝居を引き受けるのかと思っていたらそこはあっさり。まぁ、それで良いんでしょう。



戦後の風景と、開閉する勝鬨橋の風景がふんだんに見られお値打ち。
勝鬨橋と路面電車。
確かに交通的には不便極まりないシステムのようだが・・・

コメディとして森繁久弥の安定感。
正妻、清川虹子とのニセダイヤを巡るやりとりの可笑しみ。
愛人の小夏は藤間紫。彼女はここではまだちょっと若すぎる。もう少し年増になった方が魅力的だけれど、コメディエンヌとしては秀逸。パチンコ玉を撒き散らす、まさに破壊力。
小夏は飲み屋の女将でもあり、酔った黒川に「可哀そうみたいだから助けておやりなさいよ」と能天気に諭すキャラが好い。

小泉博を中心とする靴磨き三銃士のアクセントが実によろしいではないか。



シネマヴェーラ渋谷

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