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Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
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「簪」

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「没後五十年メモリアル 孤高の天才・清水宏」

「簪」1941年 松竹 監督:清水宏

夏の温泉場。東京からやってきた女が風呂場に落とした簪を踏んで、帰還兵が足を負傷し・・・。簪をきっかけに起こる滞在客の人間模様を綴った珠玉の一篇。訳ありの女に扮した田中絹代の美しさと儚さが忘れがたい。



山の温泉場へ向かう蓮華講の一団のロケ撮影から宿に移って、お得意の横移動からはじまる本作は古いながらも、否、古いからこその独特のユーモアを放つ喜劇。
学者先生(斎藤達雄)の気難しさと、しかられてばかりいる若夫婦の亭主、広安(日守新一)に老人(河原侃二) 
日守新一の「失礼しました」にクスクス笑ってしまう。



簪の落とし主である蓮華講の女・恵美を演じる名女優田中絹代の気品。若い頃の映像をまともに観た事がなかったが、なるほどと思えた。
結った髪を下ろした時のボリュームにたじろぐ。

老人の孫(爆弾小僧、大塚正義)の何でも応援してしまう「頑張れ!、頑張れ!」もいいね。鼾合戦まで応援。

帰還兵・納村役で若き日の笠置衆の姿が見れるのもとても貴重。老人役で独特の口調でお馴染だが、口調や声は若い頃からあまり変わらないんだ。
傷痍軍人らしいが、歩行訓練は情緒的とまで言った簪による怪我のための訓練?
大げさな歩行訓練演技は苦笑ものだが、本作のゆるい雰囲気の中では微笑ましい。

納村と恵美のロマンスへ発展しそうで、そうでもなく終わるのも良い。
終盤、お仲間が次々と温泉宿から東京に帰ってしまう件を子供の日記で現すあたりも面白いし、一夏の思い出に浸りながら日傘で歩く田中絹代の遠景のラストがなんとも美しい。



清水宏監督。昭和初期、日本の古い映画ならこの人だ。(実をいうと清水宏ぐらいしか観てないのが本当の所だけれど)この古さが愛おしいのでもっと観たいんだが・・・

シネマヴェーラ渋谷

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