「東北映画紀行」
「モダン道中 その恋待ったなし」1958年 松竹 監督:野村芳太郎
銀行員鶴川松夫は3万円の金が思いがけず手に入り、東北・北海道の回遊旅行に。車中で亀野竹彦という自動車修理工と知り合い、同行、2人は旅行中に素晴しい花嫁を探すことに。その後、スリの梅吉と逮捕に執念を燃やす時化田刑事も加わっての珍道中、松島で松夫が見染めた海老原ゆりという富豪の令嬢と妹トシ子。北海道ではゆりを巡って牧場主の息子というライバル宝田が出現・・・。
当時、楽屋落ちの連発というナレーションがふざけ過ぎと松竹からお目玉を食らったという野村芳太郎のラブ・コメ。
楽屋落ちというのは一歩間違えると嫌みになったり、白けたりするものだが、なかなかどうして、本作のセンスのバランスが絶妙で楽しめる。
そう、暴投のテロップに出るように、まさに「明るく楽しい松竹映画」
PR効果も抜群といえるのに叱責するとは、時代が早すぎたことを考慮に入れても、お偉方が野暮なだけと思うほど。
当時の、今、見るとレトロな感覚と相まって、まさにモダンという言葉がピッタリの洒落た作品で、とても面白かった。
いきなり、キャストタイトルバックで
「このようなタイトルバックは退屈なものです。ここで2人の性格を・・・」と登場人物の紹介ナレーションへ。
そのタイトルバック、花菱アチャコの名が「アチャコ」だけになってたりもします。
「ここまではロケーションでございます」
「ここからはセットです」
というやりすぎとも思えるナレーションに思わず劇場から、和やかな笑いが・・・
東北旅行で出会った青年、鶴川松夫、亀野竹彦(佐田啓二、高橋貞二)が、それぞれ素敵な花嫁を捜す旅という他愛の無いラブ・コメ。
擦りの小金治と追う老刑事もからんでの東北・北海道珍道中。
「東北映画紀行」の名にふさわしく、当時の東北、ディスカバー・ジャパンな風景もよろしい。
憎き恋敵の永井達郎の登場もメロドラマの常道。
ラブ・コメってちょっと守備範囲外なんだけど、こういう物なら楽しめる。
そして、1958年頃の岡田茉莉子の美しさが、やはり感動的。
お嬢様のふりをしたデパートガールという設定。
お嬢様としても、裕福な暮らしにあこがれる庶民としても、演技とかそういうものを超越している美しさに見惚れちゃう。
引き立て役の妹、トンちゃん(宇野賀代子)が不憫に思える姉妹だな。
佐田啓二との遊園地でのデートシーンがとても良く、うっとり。
おふざけコメディを忘れそうになるけれど、
さんざん、ふざけていたナレーションが実は、「私、岡田茉莉子でした」と録音ブースに立っていて・・・
いや、気づきませんでした。声で解らねえかな、情けない。一本取られた感にまた満足。
津軽民謡を歌ってくれる桑名みゆきの田舎娘・鈴子も可愛く、この鈴子と亀野の仲を粋に取り持つ花菱アチャコのエピソードも嬉しい。
なかなか、こう幸福な気分にさせてくれる映画というものをあまり見てないからなんだろうな。イチコロですよ。
それもこれも偏に岡田茉莉子の美しさのお蔭なんではないかと…
神保町シアターの次回は岡田茉莉子特集。1958年前後の作品を沢山見たいけど、そうそう予定がつきそうにない。
神保町シアター
「モダン道中 その恋待ったなし」1958年 松竹 監督:野村芳太郎
銀行員鶴川松夫は3万円の金が思いがけず手に入り、東北・北海道の回遊旅行に。車中で亀野竹彦という自動車修理工と知り合い、同行、2人は旅行中に素晴しい花嫁を探すことに。その後、スリの梅吉と逮捕に執念を燃やす時化田刑事も加わっての珍道中、松島で松夫が見染めた海老原ゆりという富豪の令嬢と妹トシ子。北海道ではゆりを巡って牧場主の息子というライバル宝田が出現・・・。
当時、楽屋落ちの連発というナレーションがふざけ過ぎと松竹からお目玉を食らったという野村芳太郎のラブ・コメ。
楽屋落ちというのは一歩間違えると嫌みになったり、白けたりするものだが、なかなかどうして、本作のセンスのバランスが絶妙で楽しめる。
そう、暴投のテロップに出るように、まさに「明るく楽しい松竹映画」
PR効果も抜群といえるのに叱責するとは、時代が早すぎたことを考慮に入れても、お偉方が野暮なだけと思うほど。
当時の、今、見るとレトロな感覚と相まって、まさにモダンという言葉がピッタリの洒落た作品で、とても面白かった。
いきなり、キャストタイトルバックで
「このようなタイトルバックは退屈なものです。ここで2人の性格を・・・」と登場人物の紹介ナレーションへ。
そのタイトルバック、花菱アチャコの名が「アチャコ」だけになってたりもします。
「ここまではロケーションでございます」
「ここからはセットです」
というやりすぎとも思えるナレーションに思わず劇場から、和やかな笑いが・・・
東北旅行で出会った青年、鶴川松夫、亀野竹彦(佐田啓二、高橋貞二)が、それぞれ素敵な花嫁を捜す旅という他愛の無いラブ・コメ。
擦りの小金治と追う老刑事もからんでの東北・北海道珍道中。
「東北映画紀行」の名にふさわしく、当時の東北、ディスカバー・ジャパンな風景もよろしい。
憎き恋敵の永井達郎の登場もメロドラマの常道。
ラブ・コメってちょっと守備範囲外なんだけど、こういう物なら楽しめる。
そして、1958年頃の岡田茉莉子の美しさが、やはり感動的。
お嬢様のふりをしたデパートガールという設定。
お嬢様としても、裕福な暮らしにあこがれる庶民としても、演技とかそういうものを超越している美しさに見惚れちゃう。
引き立て役の妹、トンちゃん(宇野賀代子)が不憫に思える姉妹だな。
佐田啓二との遊園地でのデートシーンがとても良く、うっとり。
おふざけコメディを忘れそうになるけれど、
さんざん、ふざけていたナレーションが実は、「私、岡田茉莉子でした」と録音ブースに立っていて・・・
いや、気づきませんでした。声で解らねえかな、情けない。一本取られた感にまた満足。
津軽民謡を歌ってくれる桑名みゆきの田舎娘・鈴子も可愛く、この鈴子と亀野の仲を粋に取り持つ花菱アチャコのエピソードも嬉しい。
なかなか、こう幸福な気分にさせてくれる映画というものをあまり見てないからなんだろうな。イチコロですよ。
それもこれも偏に岡田茉莉子の美しさのお蔭なんではないかと…
神保町シアターの次回は岡田茉莉子特集。1958年前後の作品を沢山見たいけど、そうそう予定がつきそうにない。
神保町シアター